第225回(2007年8月10日) 残暑お見舞申し上げます。 アメリカのサブプライムローンについて、世界が大きく揺れています。私の方にも、アメリカの住宅信用について、やっぱり日本と同じじゃないかという質問が寄せられています。私はサブプライムローンこそ、住生活基本法時代の中心となる日本型MBSの問題をわかりやすく説明していると思います。 まず、サブプライムローンとは、住宅ローン支払い能力のない人に融資する金融で、最初の5年は安い金利で融資することにより、支払い能力のない人でもローン返済でき、住宅を購入できることになります。 日本ではバブル経済崩壊後、最初の5年間は元金の返済を猶予して、さらに金利の償還も始めは少なく、だんだん高くするという傾斜返還方式を導入し、政府はローン減税によって最初のローン返済負担を減らして住宅を買わせようとしました。つまり、アメリカのサブプライムローンより、もっと危険な住宅金融政策を日本はやってきたのです。 アメリカのサブプライムローンでは、例えば、カリフォルニア、アーバインのように、住宅不動産の資産価値(エクイティ)が年間30〜50%上昇すれば、金融機関としても、そのモーゲージ自体の信用が大きくなりますので、ローンリスクの低い金融プライムローンに切り替えることを行ってきました。 サブプライムローンを組んだ住宅の資産価値(エクイティ)が上昇せず、モーゲージの信用が低いままだと、サブプライムローンは6年目から一挙に12〜17%に上昇して、ローン借受人はたちまちローン返済不能事故を起こしてしまいます。 金融機関はローン返済が滞って負債総額が大きくなる前にモーゲージを実行しようとするため、高金利のローンを支払うか、さもなくば、モーゲージを実行しようとします。つまり、モーゲージの対象になっている住宅を差し押さえて処分することになります。 これは、日本の住宅金融公庫がやってきたやり方と基本的には同じです。金融公庫のローン返済が滞れば、金融公庫はその抵当権とローン債務を住宅金融保証協会に譲渡して、そこが代位弁済することになります。つまり、ローン借受人に代わって、金融公庫にローンを支払ってくれます。 本当のところは、金融公庫がローン債務を取りたてるための方便として、住宅金融保証協会にローンを支払わせ、住宅金融保証協会がローンを組んだ住宅購入者から、金融公庫に支払ったローン代金分を金利14.5%で取立てるという仕組みです。 金融公庫の4%程度のローン返済が滞っている人に、ローン返済ができないから、14.5%の高金利のお金を借りて住宅金融公庫に支払え、という仕組みが、日本の住宅政策として行われてきたのです。 このやり方は、アメリカのサブプライムローンよりも悪辣ではないかと言うこともできます。何故ならば、アメリカではそれでもローン返済ができなければ、ローンの対象となった住宅を差し押さえるというモーゲージの実行によって、ローン債務は相殺されます。 しかし、日本では、住宅に設定した第一番の抵当権を住宅金融公庫が押さえ、それを住宅金融保証協会に移転、つまり差し押さえても、それで債務は相殺されません。差し押さえされた住宅を競売しても回収できない債務は、生命保険で回収するとして、恐ろしい脅迫まがいのことがやられてきたのです。 サブプライムローン自体はリスクの高い金融ですが、それだけ金利自体が高いため、サブプライムローンは高い金利を約束できるモーゲージ債権ということになります。つまり、サブプライムローンの借金証書を持っている人には、高い貸金金利の元利を回収する権利があるわけです。 そのモーゲージを証券化したMBSを、ヨーロッパのヘッジファンドや日本の野村証券などが、高金利の金融商品(デリバテブ)として、消費者に販売しました。MBSを販売した会社が倒産すれば、そのMBSを取り扱った会社が破産しない限り、取り扱った会社がその損失をかぶることになります。そのため、野村証券が400億円など、法人企業で約1兆円の損失が発生したと言われています。 サブプライムローンを組んだ住宅購入者がローン返済自体に行き詰まり、ローン元利の返済ができなくなってしまったために、サブプライムローンのモーゲージを証券化した金融商品を買った人に支払うべき元利が、証券化した金融機関に入ってこなくなってしまったので、もし、連鎖倒産というようなことになれば、日本の証券を買った人にまで損失が及ぶことになりますが、今回の程度の損失では野村証券は倒産せず、損失負担できたため、被害が消費者のところにまで及ばないのです。 当面の資金繰りができなくて、デリバテブ関連会社の倒産已む無しに追いこまれたとしても、モーゲージの清算をした場合には、意外に損失の合計は小さいのではないかと思われます。その理由は、モーゲージ自体の価値は基本的に減少しているわけではないからです。 日本のMBSにおいても、このような事態になった時には、住宅金融支援機構がローン債券を購入して、それを証券化した場合にも、金融支援機構がローン債権の債務保証をした場合にも、MBSを購入した投資家には元利を保証しているため、ローン返済できないための不足分は全て住宅金融支援機構の損失として計上され、最終的に日本国の財政支出になるのです。 サブプライムローンと日本のMBSは基本的に違いますが、事故の発生する構造は同じなのです。日本のMBSの場合は、住宅の資産価値自体がローン融資額をはるかに下回っているという現実があるため、ローン返済不能事故が発生すれば、間違いなくMBSへの元利の供給原資が止まり、住宅金融支援機構は損失を被るという構造にあるわけです。 その点、サブプライムローンの場合、モーゲージを実行したとき、住宅の不動産としての資産価値自体は、モーゲージの設定時点で不正が行われていなければ、基本的にはアプレイザル(不動産鑑定評価)として社会的に認められている住宅不動産の市場価格で、売却益を回収することができると考えるべきです。 もちろん、サブプライムローンの破綻による住宅不動産の売り物件が多く発生すれば、需給関係を反映して、モーゲージの元本割れが発生することもないわけではありません。しかし、それはアメリカの住宅全体の資産価値に共通する問題であるため、特殊事例としてモーゲージ割れが発生することがあっても、それはあくまでも例外なのです。 つまり、日本のバブル経済崩壊時の住宅価格の下落は、元々価値が社会的に評価されない住宅で、ローン借受人の個人信用の喪失にあって、競売にかけられた住宅がボロボロの価格でしか取引きされなかったのであり、それをアメリカのモーゲージの実行と同じ土俵で比較することはできないのです。 8月29日(水)のセミナーでは、このメールマガジンで扱っているアメリカのサブプライムローンとの関係で、住生活基本法の基本問題についてお話しする予定です。参加者の質問に答える時間も取りたいと思いますので、是非ご参加頂き、意見交換ができればと思っています。詳しくは、下記セミナーのご案内、添付ファイルをご覧下さい。 |