第227回(2007年8月27日)

 みなさん、こんにちは。

 先週の8月24日(金)、 相模原市 でブリリアテラスとマークスプリングスの見学と、ラウリマデザインスタジオ会長でHICPM理事の渋谷征教氏を講師に迎えたワークショップという内容で、グローバル研修企画による「第2回『洋風住宅デザイン』セミナー&ワークショップ」が行われました。

 その中の、私の車中セミナーでは、特に今回はクラシックデザインについて、基本的な活用をしてもらえるように、クラシックデザインの基本的な構成と理解の仕方と、特に、フランク・ロイド・ライトが何故20世紀を代表する建築家で、実際に20世紀の都市や住宅にどのような影響を与えたか、それをどのように使うか、について説明しました。

 グローバル研修企画で開催しているワンデイバスツアーは、実際に建築されている住宅を見学しながら、学ぶべきもの、学んではいけないものについて、具体例を見ながら勉強してもらおうというもので、HICPMのビルダーズマガジンで海外の事例などを紹介し、それを通して学んでもらおうとしていることと、基本的に共通したことをやっています。

 建設業者は、その業務に必要な知識を学校教育の中で全く学ぶことなく、実社会の中で専門業者として仕事をしています。これらの業者の多くは、ハードな技術として、建築工学を学んでいます。しかし、それは建築や住宅を供給する上で、ほんの一部の技術知識でしかありません。

 今回のツアー参加者で営業に携わっている方が、大変控え目に「私は建築技術という工学ではなく、文科系の人間で、専門性にかけていますが・・・」と自己紹介されましたが、住宅産業関係者の必要知識は、日本の建築学の知識でなければならないという間違った常識があります。

 時計を購入しようとするとき、「時間を性格に掲示しますか」、と尋ねて時計を購入することはまずありません。洋服を購入するとき、「ボタンは取れやすいですか」、「生地は破れませんか」、「色落ちしますか」ということは尋ねません。

 商品の機能や性能は、通常具備されていて当然で、PL法で決められたとおり、生産者が、機能や性能について、消費者に約束どおりのものを供給するのは当然のことになっています。それを「暗黙裡の契約(インプライドコントラクト)」といっています。ハードな技術は、商品のソフトな品質を作るための条件に過ぎません。

 現在、建築や住宅で問題になっていることの原因の多くは、建築や住宅において「言わずもがな」と考えられていることを手抜きしてやらず、確認検査機関は不正承知でそれを目こぼしし、不正な利益を手にいれる。これを当然のようにやってきた産業体質にあります。

 大問題になった耐震偽装だけではなく、日本ERIによる 町田市 東玉川学園の例のように、確認検査機関がデベロッパーと共謀して違反を容認し、あるいは積極的にさせることで、違反建築物を適法建築と思わせて、不正な利益を手に入れることが当り前のように行われています。それに対して、行政は、「建築確認の審査の強化」という形で対応しようとしたため、確認事務ができなくなってしまったことが、最近の現象です。

 最近の国土交通省の住宅政策では、性能表示、確認審査の強化、瑕疵保証などの強化ということで、その全てがハードの技術に偏っています。建設業者の職能としてのモラルを問題にする職能行政、つまり、業者の職能責任を追及する行政が全く行われていないのです。

 本来、建築行政や建設業行政で、違反を犯した業者を法律に照らしてしっかり監督していれば、消費者に皺寄せがよることはないのです。しかし、行政が法律どおりに機能せず、「消費者の自己責任」などというトンチンカンな言い訳で、消費者自身にハードな安全を確認することを押しつけているため、消費者と業者との間でハードな技術を問題にしなければならなくなっているのです。

 住宅営業の中で重要なのは、その住宅が、消費者にとって、「我が家(自分に帰属する住宅)」と思えること、つまり、その住宅のデザインが、消費者の感性に合い、消費者自身のアイデンティティを表現していると思えることにつきます。住宅のデザインとは、アーキテクチュラルデザインのことで、まさに文化のことを言っているのです。

 建築学を工学の範疇のみで考えるなど、日本のような文明国では、あってはならないことです。多くの先進国では、ヒューマニティ(人文科学)の範疇の学問として、建築学を教育しています。しかし、日本で建築学を教育している学部では、シビルエンジニアと言って、まさに工学として、安全や衛生を扱っています。建築の中心はデザインで、教育の場では、その文化を学ぶべきなのです。

 住宅営業において、販売しようとしている住宅の文化を顧客に選択してもらうことが重要であり、買い手市場になったときの住宅販売においては、消費者にその住宅を自分の住宅であると評価して、購入してもらうことが最も重要なのです。

 日本の住宅のストックは、非常に低い水準にあります。そのため、それよりも少し良い、ハードな技術としての品質の高さを、供給する住宅の優秀性であると言って販売する売り方が一般的ですが、それは「物のない貧しい時代」の、売り手市場の販売方法なのです。

 もし、住宅の品質が欧米に遜色のない水準になったと考えるならば、消費者が選択する最大の指標こそ、消費者がアイデンティティを持てる住宅であること、つまり、住宅を消費者の感性に照らして、消費者が「自分の住宅」と感じることのできるデザインかどうか、それを指標にして選択されるものでなくてはならないということです。

 そのような意味で、住宅販売は、住文化を販売する仕事であるというべきで、そのための人材としては、工学系の人よりも、文科系の人のほうが適しているのではないかと思います。住宅は工学的な知識や技術を使って造られますが、その利用は人文科学的な分野の満足を大切にしなければならないものです。

 都市も住宅も、人類の生活を文化的に豊かにするものでなければならないことについて、もう1度考えてみる必要があるのではないでしょうか。今回のデザインセミナーは、デザインの基本について考えて頂くことに重点を置いてみました。