第229回(2007年9月10日) みなさん、こんにちは。 先週、大分県の西日本ホーム(高倉社長)の安全協力会の設立総会へ出席してきました。私に記念講演の依頼がありましたので、「住生活基本法時代」という、これからの日本の住宅産業を取り巻く環境についてお話ししました。 実は、この4月から全国各地の住宅団体の総会などで、住生活基本法時代に対し、民間の活力を生かせる時代が来ると、バラ色の期待が寄せられているのを耳にしました。しかし、それは大変な幻想であって、もし住宅産業がこのような幻想に踊らされていたら、将来的に経営を失敗させることになると危惧していました。 そこでHICPMでは、『住生活基本法時代』という冊子を作り、そのセミナーを開催しています。しかし、日本全体に大きな広報能力を持つ政府や、その外郭団体を通して、住生活基本法時代の幻想がばら撒かれています。HICPMからの情報発信では、とても太刀打ちできません。 西日本ホームの高倉社長は、これからの住宅産業の環境が、これまでとは全く違ったものになると、私と同様の理解に立っておられまして、西日本ホームの安全協力会の方々に、私のような第三者の立場から見た科学的・合理的な分析を、会員の皆さんに聞いてもらおうと考えられたのだと思います。 そんな私の理解は、HICPMの会員全体にも同じ情報を伝えるべきであるという認識になり、『HICPM BUILDERS' MAGAZINE 10月号』で、同じテーマを取り上げることにしました。住生活基本法時代がどのような時代になるかという認識を共通にしない限り、住宅産業全体としての総合力は発揮できません。 西日本ホームに出掛けた週に、行政にも同じ理解を求めることが必要であると考え、国土交通省住宅局住宅生産課長の坂本さんや、建築指導課長の水流さんと会い、それぞれ1時間程度の意見交換をしました。 私の申し上げたこととは、住宅産業としての将来環境を共通にすることの必要性と、その具体的な認識を共有できるようにすることでした。FTA(自由貿易協定)の時代になって、経済自体はデフレ基調にならざるを得ないこと、その中で住宅の価格自体も将来的に下がらざるを得ないことで、意見が一致しました。 また、日本の住宅産業の生産性の低さ、アメリカの40%程度の低い生産性であるという事実についても確認できました。そして、今の時代、建設労働自体が低賃金のため、優秀な若者を惹きつけることができず、結果的に、今のままなら、住宅産業は衰退産業にならざるを得ないという認識でも共通できました。 住宅産業を成長の見込める産業にするためには、そこで働く労働者に高い賃金を保障しなくては、優秀な労働力を獲得できず、産業としては衰退せざるを得なくなるということについても合意できました。 さらに、水流課長には、行政関係者の生活のための建築行政ではなく、国民のための建築行政にしないと、住生活基本法時代の建築行政によって、国民が大変な皺寄せを負うことを指摘し、そのような事にならないようにしたいという考えを確認できました。 住宅産業の置かれた環境を考えた上で、今、何に取り組むべきかと言えば、住宅産業自体としての生産性を高めることをおいて他になく、それは、CM(コンストラクションマネジメント:建設業経営管理)技術を高める以外にない、ということもわかってもらえました。 しかし、日本でCMと言うと、「CM方式」といった間違った「日本的なCM」と混同され、CMを進めようという提案が簡単には社会的に受け入れられない事自体も問題であるというのが、共通の認識でした。 「日本のCM」には、住宅産業としてトータルの利益をどのように最大化するかという視点が全くなく、下請け業者を分離対立させて、建設業者を排斥し、代わって、CMRが下請け業者を不当に叩き合わせて「漁夫の利」を奪うというものです。「日本のCM」は、国際社会では通用しないCMなのです。 西日本ホームの高倉さんが考えているのはそれとは違い、西日本ホームグループとして発展するためには、まず消費者の利益を最大にする必要があり、西日本ホームの特性を生かして供給する住宅を選択してくれる人を絞って、つまり、買い手から「最大の満足を持って選択される住宅」を供給することを考えているのです。 当然、西日本ホームはマーケットリサーチにもとづいて、多様な住宅需要の中で、これまでの西日本ホームの事業を通して、西日本ホームのデザインを愛し、その購入者の家計支出の中で容易に負担できる価格で購入でき、かつ、住宅地の熟成に伴い、その資産価値を高めることのできるものを供給しようとしています。 その住宅供給の結果、高い利潤を上げて、関係する下請け業者や、材料供給業者が安定した経営を確立し、結果的に従業員や建設労働者に高い労賃を支払うようにするためには、住宅を建設する西日本ホームのグループ全体として高い利潤を上げなくてはなりません。 その方法としては、西日本住宅グループとしての仕事の中に介在する「ムリ、ムダ、ムラ」を生産過程から排除することにより、「ムリ、ムダ、ムラ」というマイナスをなくす分だけ、それらをプラスに変えるという取り組みをしようとしているのです。グループ内の会社を対立させるといった間違った日本型CMではなく、トータルとしてのマイナスをプラスに展観しようとする、世界で通用するCMに取り組もうとしているのです。 正しいCMは、規格化、標準化、単純化を徹底して、学習効果の上がる生産体制を組むことで、生産性の向上と同時に労働安全を増進するというものです。そのために、西日本ホーム安全協力会としては、国際的に通用する正しいCMの研修に取り組んでいきたいということでした。 この取り組みこそ、民間住宅産業中心のアメリカにおいて、NHA(ナショナルハウジングアクト)のもとで住宅産業が取り組んだことなのです。自動車産業が大学や高等教育でOM(オペレイションマネジメント)という生産管理教育を受けた技術者を受け入れることによって、ハードな生産設備で最大の効用を上げたことを見て、日本の自動車産業が文部省に働きかけて大学の教育体系にOMを確立させたことが、現在の自動車産業発展の基礎を作ったのです。 この話について、住宅の生産性を高めるためにCM教育を実施することを、国土交通省との話し合いの俎上に上げ、また、HICPMの田島理事にも能力開発大学の検討議題にしてもらっています。高倉さんは、西日本ホーム全体について、協力会社の経営者から職人まで、現在から将来に亘って展望を持てる住宅産業グループをリードする立場にあることを自覚されていて、短期的な取り込みとともに将来についても考えておられることを見て、日本中の住宅産業関係者が皆このように考えていてくれたらどんなによいかと思った次第でした。 9月14、15日に、7月から大阪のATCとHICPM近畿支部が協力して開催している大阪でのCMセミナー(2日間)第3回を開催します。また、CMを学びたいと考える全国の方を対象に、東京でもCMセミナー(1日)を、年末まで26回の予定で開催します。第1回目は9月12日です。 現実に建設業をされている方にとっては、CMセミナーを受講することで現実に取り組んでいる仕事を合理的に整理することができて、経営改善の糸口を見つけることになると思っています。 実は、全米ホームビルダー協会が会員のためにやってきた研修は、このような理解に立って行われてきたものです。このメールを読まれた住宅関係者の方々も、途中からでも構いませんので、HICPMのCMセミナーを、是非、試しに聴講して見てください。詳細の情報は、HICPM事務局までお問合せ下さい。 |