第230回(2007年9月18日)

 みなさん、こんにちは。

 先週末は、大阪ATCのCMセミナーと、堺町づくり研究会があって、関西に行ってきました。ATCのCMセミナーでは、サスティナブルハウスとCMについて勉強してもらいました。

 (株)夢現設計室の前野さんは、サスティナブルハウスとの関係で、設計から積算の規格化、標準化をシステマティックに実行できるようにし、これならば、多くの住宅建設業でその実践に取り組めるものにできそうで、私としては大変嬉しくなってきました。

 現在までの成果を、10月31日から11月3日まで開催される名古屋国際木工機械展でのセミナーでご紹介致しますので、多くの建設業者に学んで、利用して頂ければと思っています。

 設計自体にムリ・ムダ・ムラが蓄積されている設計図書を使いながら、建設工事においてCMを実践しようとしても、それは叶いません。それは、ピントのボケたネガを使って、精度の高い陽画(ポジ)を作ろうとするに似たことなのです。

 徹底的な合理主義を実践したムリ・ムダ・ムラのない設計をして、合理的な施行計画を作り、計画どおりの施行をすることが、CMの実践なのです。

 HICPMがこれまで進めてきたCM教育は、多くの建設業者の実践を通して、だんだん具体的に理解されてきているのです。私自身、直接建設業をやっているわけではありませんが、会員の方々の実践を通したフィードバックにより、CMの理解が進んでいることを感じています。

 アメリカでも、英国でも、住宅産業の発展とホームプランが切り離せなかった理由は、住宅会社の規模を超えて、標準化・規格化・単純化を産業的な広がりを持って進めるために、ホームプランが不可欠だったからです。

 元請け、つまり、住宅会社相互が競合関係にあっても、その下請け達は、競合する元請会社の間で同じように働いており、競合する会社の仕事であっても、下請会社にとっては競合しない仕事なのです。アメリカでは、これらの下請けに能率よく仕事させることが、元請負業者にとっても利益のあることであるという認識を共通にしているため、ホームビルダー協会は、会社の境界を越えた作業の規格化・標準化・単純化に取り組んできました。ディテールシートの標準化、仕様書の共通化などの取り組みも進められてきました。それをより一歩、具体的に進めたものが、ホームプランシステムなのです。

 前野さんは、設計、構造設計、設備設計等の規格化を進めることで、見積りのシステム化に向けて、作業を進めようとしています。当然ディテールの標準化ということも避けて通れません。このような作業を通して、CMを具体的に進めるためにやるべき作業が見えてきているように感じています。

 まだ、ホームプランと、サスティナブルハウスと、CMとを、別のもののように感じている人が沢山いますし、アメリカでの生産性の高さがホームプランシステムによって支えられていることを理解していない人も沢山います。

 CMで進める生産性の向上は、規格化・標準化・単純化によって実現されていると理解することで、ホームプランの意味を理解することができるのではないかと思います。

 基本的に建設現場を重要視できている人ならば、住宅は、職人の現場での作業により造られることが理解でき、職人の立場で現場を見れば、現場にいる限り、自分の技能を最大限発揮し、自分自身で納得できる仕事をしたいという職人の気持ちがわかるはずです。

 しかし、現場の職人の期待に反し、作業は期待どおりには運びません。ディテールが決まっていないため作業ができないとか、前の現場と今回の現場で、同じような住宅であるにもかかわらず、使うべき技能に少しずつではあるが、違いがあるため、図面の確認や作業内容の確認に作業時間が費やされ、肝心の作業が進まないということが日常茶飯事に起きている。仕事が進まなければ、それだけ時間がかかり、全体の収入は減少していく。

 建設労働者の収入が下がれば、その種の仕事の担い手は少なくなる。日本の建設業者の高齢化は、実は建設産業自体が若者の要求に合わない魅力のない産業になっていることを物語っています。建設労働者に高い賃金を与えようとしても、住宅を購入しようとしている消費者の賃金が低迷していれば、住宅建設費として支払える額は少なくなります。

 その条件のもとで建設労働者に、より高い賃金を支払えるようにするためには、建設生産性を高めることをおいてはありません。つまり、現場の住宅生産の過程でロスとなっている建材と労務を削減すること、マイナスとなっているものを生産過程から取り除くことで、全体としてプラスを増やすことができるため、それを賃金に振り向けることが実現できます。

 優秀な産業は、例外なく、優秀な労働者を惹き付けることに成功しています。住宅のように、人類の発生とともに生まれ、人類が消滅するときまで継続する産業は、その時代の要求に合った産業経営が正しく行われていれば、食いはぐれのない産業であると世界中の多くの国で言われてきました。

 その住宅産業が、日本で衰退している理由は何かと言えば、住宅の生産性向上の取り組みが遅れて、職人に満足のいく賃金が払えないためです。

 HICPMが今年になってCMセミナーを重視して取り組んでいる理由は、住宅産業の衰退が、住生活基本法になって、さらに放置されたままになっていることから、住宅産業の危機という焦りにも似たものを感じているからなのです。

 大阪のATCでのCMセミナーは、毎回20人程度の参加者を得て、関西のHICPM理事総出で取り組んでいますし、東京では10名弱の参加者を迎えてセミナーを実施しています。

 もっと多くの会員や住宅産業の方の参加があってもよいと思っていますが、建設業経営を学問として学んだ経験がなく、建築生産というハードな技術をもって住宅経営ができると勘違いして、住宅産業が取り組まれていることに大きな問題があると思います。

 「生産性を高めることこそ、産業基盤を高めることになる。」ということを繰り返して、今日のメールとします。