第231回(2007年9月25日)

みなさん、こんにちは。
  先週は、プロズジャパンという住宅開発会社の事業を見に、岡山へ行って参りました。社長の土倉さんと常務の河野さんのお二人と、お昼から真夜中の12時まで、現在取り組んでおられる開発を巡って、多様な視点からの意見交換を致しました。

 大変高い理想に燃えて事業に取り組んでおられることに大いに敬意を表し、その並大抵ではないご努力に頭の下がる思いで聴かせてもらいました。しかし、そのご努力が歪んだ行政との闘いに使われてしまい、折角の莫大な投資が行政によって支出させられ、土倉さんの理想の実現がむしろ逆行させられているように思われ、とても残念な気が致しました。

 以前、私が住宅都市整備公団の都市開発調査課長であった1980年に、志村総裁が私に、「公団も国の補助金を受けることをやめて、開発をやってみたらどうか」という問題提起をされました。

 その理由は、国庫補助金を受けて行う事業は、全て公共事業の建設基準と、その行政指導を受けさせられるため、まさに「角を矯めて牛を殺す」の譬のとおり、都市開発事業の住宅地としては過大な道路、公園、下水、排水など、公共事業者が困らないような高い管理水準に対応するものを整備しなくてはなりません。

 本当にそれほどの高い水準の工事が住宅地に必要かどうかは、世界の優れた住宅地を見ても大きな疑問とされています。公共事業の金額を大きくすることで、土木の公共事業全体の事業費が大きくなり、役人OBの雇用先を増やせるからだということは、関係者の常識になっています。 都市開発について、世界的に比較しても、日本のように雛壇造成をして、驚くほど巨大な擁壁で、城壁のような住宅地をつくっている国は、世界でも例を見ません。

 神戸でURが開発した舞多聞のような、穏やかなゴルフ場として使われていた丘陵を、どうして雛壇造成をしなければならないか、まともな都市づくりをやってきた人には説明できません。

 日本の宅地の価格が高いといわれ、素地も高いといわれますが、実はニュータウン建設で造られる宅地は、素地の20倍か、それ以上の価格になっているのです。その主な費用は、造成工事費とその金利によって構成されています。

 土倉さんの開発は、国庫補助金を受けていない事業であるにもかかわらず、開発許可の権力の濫用によって、驚くべきムダな工事をやらされているのです。「都市計画法にもとづく」、と行政が言えば、ほとんどの人は、都市計画にとって必要な良いことを指導していると勘違いさせられます。
  確かに、造成工事には驚くほどの事業費がかけられていますが、その費用は、計画的に見て全く良い住宅を造ることの邪魔になっているような道路や公園、擁壁などを造るために使われています。これは、行政による国民の財産を浪費させる犯罪ではないか、言いかえれば、法治国にあって許されない違法行為が、行政の名によって行われていると思わされました。

 多分、この開発指導をしている行政担当者は、自分のやっていることを、業者に多くの金を使わせたから、国民のために良い仕事をしていると勘違いをしているのかもしれません。「民間業者は金儲けのために何か悪いことをしでかす輩で、油断も好きもない」と、先入観を持っている公務員も少なからずいます。その前提に立って、できる限り開発事業の安全を強化するという大義名分を持ち出して、金のかかる仕事を業者にやらせれば、国民のためになっていると、本気で考えているのです。
  確かに、民間業者の中には、違反をすることで不正な利益を上げてきた企業も沢山あります。役人の多くは、これらの業者が違反をやっていることを承知の上で、違反に目を瞑って、これらの業者に不正な利益を与え、その代わりに役人OBの就職や、役人OBの雇用されている外郭団体の会員にならせて、多額の賛助会費を納入させてきたという事実もあります。

 耐震偽装事件も問題になりましたが、多くの指定確認検査機関が、現在、都市計画法の開発許可をふっ飛ばして、確認済証を交付し、本来都市計画の開発許可としてやらなければならない事業をふっ飛ばして不正利益を手に入れている現実を、はっきり見据えなければなりません。

 このような不正があまりに日常茶飯事に行われていることから、業者は全て犯罪者に近い行動を取っていると感じる公務員のいることもわかります。

 しかし、社会保険庁の年金詐取事件があれほど多発しているように、実は犯罪を前提にした公務員と、その不正を組織的に隠蔽している官僚機構があるということも、ハッキリ理解しておかなければなりません。  

 犯罪を犯している連中の多くは、他人の犯罪を指摘することで、自らの犯罪は帳消しになるかと勘違いしているような行動を平気で取っているのです。  

 北側国土交通大臣が、自らの建築基準行政を手縫いて、違反建築物に検査済み証を交付して、危険マンションが消費者に売られていることを棚にあげ、法律上、設計者でもない姉歯一級建築士を告発したのも、基本的には同じことです。

 このようなおかしなことは、国土交通大臣を始め、関係している公務員の多くが、自ら関係している行政に必要な法律知識や、技術上の知識があいまいであることが問題なのです。
  プロズジャパンが、世界水準の豊かな住宅地をつくるために努力をしているときに、都市計画行政の開発許可の担当部局は、町づくりについてほとんどまともな知識を持っておらず、いたずらに土木工事としての安全を理由に、私が見た限り、およそ安全とは関係のないことを権力を濫用して、安全という大義名分や、法治国であるから基準には従わせるという屁理屈だけで、ムリを押しつけているだけなのです。

 その結果、つくられた宅地造成の内容は、居住者に不当な負担を押し付けるだけで、何一つ良いことはないのです。しかも、初期投資として無駄な造成工事に大きな費用が投資されると、その金利全体が事業を圧迫することになり、購入者にとって高い費用負担をさせられる理由自体意味がないことを押し付けることになるのです。また、開発業者に不当な不利益を与えることで、経営を悪化させることも懸念されます。

 プロズジャパンのように、高い理想に燃えて真面目に住宅地開発に取り組んでいる会社は決して多いとは言えないだけに、何とかこの事業が成功するようにと願っています。

 HICPMとしては、会員はもとより、困っている人から依頼を受ければ、住宅地開発の計画や経営はもとより、色々な問題のご相談になることはできます。私自身、都市開発関係の仕事に20年近く関係し、その分野の技術士でもあり、日本国内だけではなく世界の優れた住宅地を調査し、その計画についての文献調査もしていますので、多少は参考になるアドバイスやコンサルティングはして差し上げられるかもしれません。

 土倉さんとの深夜までの話し合いで、土倉さんのこれまでのお仕事にかける理想に私としても多いに弾かれ、しかもその夢の実現に体全体をぶつけて取り組んでおられることを見て、私も大変愉快な時間を持てました。