第238回(2007年11月12日)

みなさん、こんにちは。
 昨日 11 日、 堺市 の新事業創造センターにおいて、日本住宅会議の住宅白書「サステイナブルな住まい」についてのシンポジウムが開催され、私も発表者の一人として参加しました。日曜日の午後という時間と、場所も堺ということで、想像していたよりかなり少ない参加者でしたが、シンポジウムの内容は前向きの議論で、参加者にとっては実りの多いものではなかったかと思います。
  住宅に対する関心が低い理由は、住宅についての合理的な知識を必要としない社会になっていることだと思います。それは書店に出掛けても、住宅に関するまともな本を見付けることがたいへん難しい状態からも言えます。住宅産業にとって、まともな知識は必要とされず、詐欺まがいのテクニックを伝授するハウツーものが、日替わりで書店に並び、まともな努力をして科学的な知識を学ぶという観点が産業界に抜けているからです。
  堺で開かれたシンポジウムでは、住宅によってサステイナブルな環境を創るという基本テーマの中で、資産価値を住宅によって作るという世界の常識から逸脱した日本において、如何に住宅によって資産を形成することができるのかと言うテーマに、議論が集中しました。議論を進める中で、アメリカで発生したサブプライムローンについて、日本に読み替えた場合が取り上げられました。

 つまり、住生活基本法時代の柱となっているMBSという似非MBSによってデフレ時代に年収の5倍もの住宅ローンを組んだ人の所得が減少して、例えばFTAによって20年後に所得が半減すれば、実質のローン負担が年収の10倍の負担になってローン返済不能に陥る。そのとき、どのようになるかと言う問題です。住宅金融支援機構は国家の信用にかけて、その買い上げたローン債権をベースに、MBS(例えば、現在の ” フラット35 ” )の証券元利の返済をすることになります。しかし、そのMBSの根拠になっているローン債権がローン返済不能に陥っているとしたらどうなるのでしょうか。
  アメリカで起こっているサブプライムローンの事故と同じように、住宅金融支援機構は債券を「売り掛け金」勘定で保有していますから、帳簿上では黒字です。しかし、住宅ローンのある消費者はローン返済不能になっており、住宅金融支援機構はローン債権を売った金融機関とはローン元利の取立て機関(サービサー)として契約しており、取立てを急がせても払えないものは払えないということで、ローン元利は返ってきません。
  住宅ローンの担保として押さえている一番抵当権も、現在のわが国の不動産鑑定評価手法で評価すれば、建物は償却資産で、建設後20年を経過した木造住宅は不動産としての現価(現在価格、残存価値)はゼロとされています。本来、住宅は非償却資産です。仮に、償却資産という扱いをしたとしても、それは帳簿上の評価であって、市場取引きで決まる住宅の価値そのものではないのです。しかし、住宅基本法時代においては、政府自体がスクラップ&ビルドによって住宅の建替えによる居住水準の引き上げをするため、償却資産扱いの帳簿価格を取引価格であると国民を騙まし、大切な住宅を粗大ゴミであるとして取り壊してきたのです。
  居住水準の向上を、政府や住宅関係の学者や研究者達は性懲りなく、住宅政策の評価すべき成果であるといってきましたが、それは全くの間違いです。国民の住宅資産を無価値なものであると騙し、その取壊しを正しい判断であるといって取り壊させてきたのです。そして、実際の価値の半分もない住宅を2倍以上の価値があると住宅会社に値段をつけさせ、その住宅に住宅会社の言いなりの住宅金融公庫がロ−ンを供給したのです。その際、政府はローンの融資期間を延ばしたり、返済条件を操作して不当に高い住宅に対しても、当面のローン返済ができるようにして、住宅会社に売り抜けさせてきたというのが実態なのです。
  住宅金融公庫の住宅ローン償還期間は、最初は5年から始まり、最終的には35年にまで7倍にも延長されたのです。住民にはローン返済の先送りをさせることで不当な住宅価格を見えなくして住宅を買わせてきたのです。その結果、住宅規模としての居住水準の向上は図られたのですが、それこそ国民を騙し討ちに遭わせただけのことで、評価するとすれば、上手に騙し討ちができたというだけのことです。そのツケは、ローン破産やローン自殺と言ういたましい事故として、消費者に押しつけられてきました。
  この騙し討ちを見えなくした環境が、右肩上がりのインフレ経済成長という説明で、うまく政策の不正を隠蔽してきたのでした。35年の元利均等償還での返済元利は、最初の年と35年目とは同額ですが、かつての高度経済成長時代には年6%のインフレが続いたため、35年目には、実質一年目の返済額に対して8分の1に軽減されたことになりました。バブル経済崩壊後には、インフレからデフレに経済環境が変化して、長期の住宅ローン負担は年が経つごとに重くのしかかり、それがローン返済不能事故を拡大しているのです。
  この傾向はこれから益々拡大します。フラット35において、事故債権はMBSのパッケージから取り除いて優良な債権と入れ替えていると説明されていますが、それが急増すれば、入れ替えは不可能になってしまいます。今、日本のMBSは、政府機関が面子に掛けてよい債権に取り換えてAAAの評価を得ていますが、それはMBSの信用ではなく政府の信用なのです。住生活基本法時代の20年後には、たぶん年収の5倍以上のローンを受けた人がローン返済事故を起こす危険性は非常に高くなります。
  住宅金融支援機構は、MBSの証券元利の返済資金を、住宅ローンの返済元利が返ってこないため、差し押さえた抵当権を実行しようとしても、日本の不動産鑑定手法が償却資産扱いの狂った評価のため、20年後の資産価値はゼロで、残りの債務はローン額の70%もあるのです。つまり、残債全体が負債と言うことになるのです。この負債は取り立てられないことが明らかになるまでは資産勘定に入っていて、帳簿上は黒字なのですが、現金は全く手元に入る見込みがないのです。その意味でサブプライムローン事故と同じ黒字倒産状態になるのです。サブプライムローンの場合、モーゲージは時間が掛かっても評価価格で売れると考えられますが、住宅金融支援機構の場合には欠損になるのです。
  シンポジウムでは、クレジットローンでやっている日本で危惧されるリスクを回避する方法はないかと言う問題が提起がされ、議論が盛り上がりました。クレジットローンであるか、モーゲージローンであるかと言うことは金融制度上重要な問題ですが、融資担保の本質にたちかえれば、市場において住宅自体が融資額以上の価格で取引きされる力(価値)さえ持っていれば、基本的には問題はないわけです。そこが、この住宅白書の中の私が担当した頁で言いたかったことなのです。
  つまり、住宅白書でテーマにしている住宅の価値が維持されるようなサステイナブルな住宅を造るためには、その住宅に対する需要が、常により高い所得の人々に支持されるように管理運営がされなければならないわけで、そのためには、世界で住宅資産価値が高まる管理運営をしている国々の経験から学ぶ他ないのです。HICPMがこの問題にこだわり、10年以上に亘って、世界の国々の住宅開発について文献を探り、更に実際にそれを現地で確かめて学んだことを、各関係者にも学んでもらいたいと思っています。「住宅による資産増殖手法」( HICPM 刊、消費税込価格 3,675 円)は、その集大成の一つと言ってよいと思います。
  シンポジウム前日の 9 日、 10 日は、大阪南港のATCで、HICPMとIHPC共催のCMセミナー第5回「原価管理」が実施されました。合理的な原価管理によって、大きな無駄のあることが発見でき、如何に経営の合理化が図れるかを参加者に学んでもらいました。合理主義を徹底し理に適った方法で利益が上がることを学ぶことによって、建設業を続けていく確信が得られることを再確認しました。 NAHB 刊「コストコントロール」とうテキストは、これまでセミナーのたびに目をとおしましたが、本当によくできた本だと思います。既にお手元にある方にもこの機会に再度読み返して下さることをお勧めします。