HICPMメールマガジン第870号(2020.03.09)

みなさんこんにちは、

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第29回:東京都の都市計画法違反の開発許可行政(都市計画法立法時の「歴史の証人」)

(その1)都市計画法立法時の「開発許可と確認」事務に対する都市局と住宅局の合意

都市計画法は英国の都市農村計画法の「計画許可」制度に倣って、建築不動産を土地と建築物一体として「開発許可」に名称を変更した。当時、私は、「都市計画法」の姉妹法「建築基準法」の住宅局の折衝窓口の係長であった。その立場で知った事実は、住宅局の要求は「新都市計画法が立法されると、建築基準法第3章関係の確認事務が都市計画法の開発許可事務に吸収され、住宅局の業務が奪われる」ので、「新都市計画法の立法反対」であった。一方、新都市計画法は、田中角栄の「都市政策大綱」の考え方で、国家権力(計画高権)により都市計画決定を強行する法律であるとされていた。当時、わが国で「世界で最も優れた都市計画法」とされていた英国の「都市農村計画法」体系に倣うことで、わが国の都市計画を英国のような都市計画国にできる判断し、立法が決定されていた。

建設省関係者で英国の都市計画の理論と法体系を人文科学的に理解している官僚は皆無であった。新都市計画法の立法作業は、英国の都市農村計画法の和訳作業同様、建築不動産の「計画許可」制度を新都市計画法の「開発許可」に置き換える機械的作業が立法作業として行われていて、英国の都市計画法の学問(人文科学)的理解や都市計画思想を学ぶことは棚上げされ、条文の翻訳で手一杯であった。住宅局の立法反対は、「開発許可」は建築不動産を対象に行われるため、建築確認は開発許可に吸収され、建築行政の死活問題になっていた。住宅局と都市局の対立は、許認可行政権をめぐる対立になっていた。新都市計画法の開発許可は「建築不動産」を対象にしていた。わが国では、それ以前は「土地とそこに立つ建築物とは別の不動産」(民法第87条)の規定に依っていた。英国の「都市農村計画法」に倣った「土地と建築物を一体の不動産」と扱う「新都市計画法案」は、民法に定めた「建築不動産」と矛盾した立法内容あったが、建設省はその事実に気付いていないで、英国の都市農村計画法のつまみ食い翻訳を新都市計画法案に纏めりことに追われていた。

新都市計画法を国会に上程するためには、民法と新都市計画法の間の矛盾を解消しなければならないが、法務省と建設省の間の事前協議は行われていなかった。建設省大臣官房文書課の法律事務官は、法務省法律事務官とは、法律知識が違い対等の議論はできない状態で、事前協議を避け続けていた。建設省は法務省との事前協議を諦め、都市計画法案を現行民法の規定に従った修正をすることにした。それは「都市計画法案を廃案にすること」を意味していたが、都市計画法案は田中角栄の「都市政策大綱」に基づく立法とされたので廃案にはできず、都市計画法は立法を前提に、民法に矛盾しない法律案に修正された。

新都市計画法は「開発許可制度」が最大の売り物である。都市計画法の立法に拘ることは、「開発許可制度」を残すことにあった。しかし、民法との関係で「新都市計画法案以前の状態」に戻せば、開発許可制度は不要であるが、不要な「開発許可」が新都市計画法に創設される大前提にされた。その結果、「開発許可」の法律上の定義は、それまでの都市計画には存在しない事務を新設することになった。その結果、新たに「開発行為」に見合った定義が必要になり、混迷が始まった。「開発行為」とは、それまでの法律概念では「宅地造成」である。しかし、「宅地造成」にすれば、新鮮さはなく都市計画法の新規立法を否定する。そこで、「開発許可」は「土地の区画形質の変更」と過去に存在しない「定義」を定めた。その定義は「予定建築物を建設する地盤面の形成」を説明するものである。土地と建築物とを一体とした「建築不動産」から「予定建築物」を除いた残りが、新都市計画法案の「開発行為」になる。そうすれば、「建築不動産」から「予定建築物」を除外した部分が、「土地の区画形質の変更」、即ち、「敷地分割と土工事と基礎工事」が「開発行為の定義」になる。

それまでの都市計画行政では、建築物の「土工事と基礎工事」を都市計画行政として実施した前例はない。また、都市計画行政には「開発行為」の「概念」も「行政上の経験」もなかった。また、建築行政でも「土工事と基礎工事」を建築工事から区分して扱った例はない。「土工事と基礎工事」を建築工事から切り離し、確認の対象から外された例もなければ、確認の対象にした例もない。「建築工事」の用語は、土工事、基礎工事、躯体工事、内装工事、外装工事、外構工事、建築設備工事およびそれらの付帯工事の全体を定義し、「土工事と基礎工事」を建築工事と区分した工事例も、区別する必要もなかった。

建築行政は既得権行政を死守し、一方都市計画行政は、「土工事と基礎工事とを開発許可として切り離して行うことを拒絶した。そこで建設省大臣官房文書課は、「開発行為」の省内の妥協策として、「法律論」と「現実の行政事務実務論」とに分ける提案を行なった。「法律論」では、建築不動産を民法に合わせた「建築行為」(「予定建築物」の建築)と「開発行為」(「予定建築物」の地盤整備)に分解した。その上で、建築行政では、「予定建築物の確認」を行ない、開発許可行政では、「予定建築物の地盤の整備」を行なうとした。

新都市計画法制定前の建築行政は土工事から躯体工事以下の外構工事を含む建築不動産全体確認対象としていた。それが新都市計画法立法による法律論では、「土工事、基礎工事及び外構工事」は都市計画法の「開発行為」に区分し、「開発行為」の完了後、予定建築物を「建築基準法で確認」すると定義した。確認事務を従来の確認で行なうことを建築行政が望み、その要求を行政事務手数料の納付を含め、「異存ない」と都市計画行政が容認すれば、「開発許可事務を確認事務が代行しても安全上問題はない。そこで、実務として既得行政を都市局及び住宅局が容認し合い、新都市計画法による「開発許可」は、実務としての「確認」事務として行うことに都市局及び住宅局の合意ができ、都市計画法案は国会に上程された。

この建設省内の住宅、都市、大臣官房の「3者合意」は、建築基準法第3章と新都市計画法との間で合意された妥協であって、その合意文書は外部に公表されていないので、現在文書による証拠はない。しかも、この妥協は新都市計画法と建築基準法第3章(集団規定)に関する合意であって、建築基準法第2章(単体規定)に関しては妥協の対象にされてもいない。そのため建築基準法第2章に関する確認事務は、新都市計画法制定前の状態で行なわれている。現在の国土交通省は、この行政事務を建設省から第2章と第3章の矛盾を孕んだ状態で引き継いでいる。

 

(その2)都市計画法第29条(開発許可)と都市計画法第33条(開発許可の基準)の矛盾

都市計画法が施行されて最初に問題になったことは、都市計画法に基づく「開発許可の基準」(第33条)と開発許可(第29条)の矛盾であった。新都市計画法は都市が将来に向けて優れた都市基盤を持つ新都市計画法上での不可欠の立法事項のされ、立法作業の初めの段階で、都市施設として道路と公園の整備が取り上げられた。それまでにわが国の都市施設のうち、道路は1950年建築基準法制定時に都市計画法も米国の都市計画法(ゾーニングコード)に倣って関連改正され、「サブディヴィジョンコントロール」は、建築基準法第3章規定とされ、都市計画法では道路及び公園という都市施設を都市計画決定することになった。都市計画区域内の道路は、「幅員4m以上」と定められたが、現実には建築基準法制定以前の市街地建築物法による6尺道路(1.8m)、9尺道路(2,7m)が圧倒的多数を占め、幅員4m以上の道路は例外的であったため、「みなし道路」の規定(建築基準法第42条第2項)により、幅員4m道路と見なす救済を行なってきた。

新都市計画法ではそれまでの都市計画区域内の「道路幅員4m」を、一挙に「幅員6m以上」の道路とする開発許可の基準(第33条)が設定された。開発許可の基準では「開発許可ができなくなる」と問題提起がなされれた。それに対し、都市局は強腰で、「ガソリン税の利用もできるようになるので、道路整備を都市計画法に先行して行う可能性の議論もされた。しかし、都市施設整備を都市計画法に先立って行なう対応ができない段階で住宅局の「立法反対」と「法務省との民法との未調整」問題が発生した。都市施設の先行整備の議論は放置された状態で、都市計画法は国会に上程され、制定・施行された。当時、都市局の立法作業関係者からは、新法には「計画高権」があり、法律で決められたことは国家権力により強制できるから、開発許可基準通りの開発許可は都市施設整備と一体で実現できると、法律論に根拠を置かない説明がされた。

「計画高権とは何か」と言う議論も提起されたが、計画高権とは、都市計画決定に公権力を行使できることである。それは、わが国の都市計画法で付与された「公共性」と同じ意味でしかないが、何か新しい強制権が付与させられたかのような説明がなされた。「計画高権」の具体的説明はされず、その理解は有耶無耶のまま、法律が施行された。「開発許可」(第29条)と「開発許可の基準」(第33条)の矛盾は、私たちが危惧していたとおり、都市計画法自体の施行を不可能にする事態をもたらすことになった。

そして、東京都知事は都市計画区域の殆どが都市計画法第33条違反で、開発許可ができない状態になっていることに気付かされた。都市計画法自体が矛盾を抱え開発許可が行なえず、結果的に、建築確認が行なえないことが明らかになった。しかし、建設省は政府立法の責任を取らず、東京都知事に都市計画法が建築行為の妨害することなく、「知恵を絞って建築確認をせよ」と圧力をかけた。

結局、「無責任知事」の異名を持つ青島幸雄知事のとき、地方自治法に基づき東京都知事の事務を特別区長に移管する条例を制定し、その条例違反の施行規則で、「都知事権限を特別区長移管する規定」を制定し、以降は都知事権限を特別区長が行う都市計画法第29条と地方自治法第281条の2違反が横行するようにになった。東京都23区内の開発許可は都市計画法東京都知事の排他独演的業務と定められている。それを特別区長に違法に移管した。その処分は地方自治法による権限移管になるため、行政処分に対する特別区長を相手にした訴えは、都市計画法ではなく、地方自治法に従わなければならないが、東京都は特別区長の処分に対し、都市計画法で違法な対応をしている。

 

「開発行為」の都市計画法の「定義」と都市計画法違反の「定義」

「開発許可」は都市計画法の基本となる行政行為であるため、都市計画法第4条に「開発行為」の定義がなされた。しかも、都市計画法では、開発許可事務として「完了公告」がなされるまでは開発許可の手続きは終わっていない「法律の論理」に合わせ、「建築行為の禁止」(都市計画法第37条)を定め、予定建築物の確認申請は受け付けられないと建築基準法(第6条)で定められた。都市計画法上開発許可ができない状態の土地で、建築をしなければならない都民からの要求に応え、東京都と特別区長は、開発許可をしなくても建築が出来る方法を考え、それを尤もらしく纏めた。その都市計画法及び建築基準法違反の指針が『開発許可の手引き』(東京都都市整備局)である。その「手引き」は、都市計画法第4条に定められた「開発行為の定義」に違反した以下の定義を行なった。

  • その地盤面を開発行為の結果、1m以上切り下げ、又は、盛り上げなければ、土地の区画形質を変更させても、開発行為ではないと定義した。(都市計画法第4条違反)
  • 開発許可権者が許可すれば、開発許可が完成していない土地でも、建築をすることが出来る。(都市計画法第29条違反、第37条違反)(建築基準法第6条違反)
  • 東京都知事に排他独占的に付与された開発許可権(都市計画違法第29条)を、特別区長に移管した。(地方自治法で定めた東京都条例に違反した東京都施行規則を、都条例に適合すると都議会を欺罔して成立させ、その欺罔して成立させた施行規則で、特別区長に東京都知事の排他独占的な権限を移管し行使させ、その処分に都市計画法が及ばないようにした。

東京都知事が行なうべき行政事務を特別区長に権利移管したことは、都市計画法及び地方自治法に違反した権限移管であるだけではなく、そこで行なっている開発許可の行政事務は、開発許可権者の許可によらないものであるので、悉く都市計画法違反である。その違反に関し、再三、行政不服審査請求や行政事件訴訟が行なわれてきたが、東京都知事及び特別区長は違反の事実を認めず、それを行政事件訴訟で訴えた東京地方裁判所及び東京高等裁判所の判事は、口頭で「あなたは法律の専門家でないから理解できないことはやむを得ないが、行政時効として特別区長への行政権は移管されたと見なされるべきだ」と法律違反の判断をし、取り合おうとしなかった。また、元東京高等裁判所判事は、「法律違反の判例を積み重ねることによって、司法による立法を実現することが出来る」と公開の講演会の場で、衆目の目の前で『司法による立法』をテーマに講演を行ない法令違反の判決を行なうように煽った。

都市再生事業では、日本憲法違反の都市再生法が制定され、日本憲法違反の都市再生事業が行なわれ、都市再生法を根拠に都市計画法及び建築基準法が改正され、都市計画法及び建築基準法違反の都市再生事業が行われた。それに対し全国津々浦々から違反の開発許可及び確認は、国民から都市計画法及び建築基準法違反で行政不服審査請求や行政事件訴訟として争われた。被害を被った国民の多くから、HICPMは行政事件の支援を依頼され、私自身約100件の訴訟に関係したが、全ての訴訟で敗訴した。

敗訴の理由を検討分析した結果解かったことは、日本憲法違反で立法された都市再生緊急措置法は、「聖域なき構造改革」と言われた不良政権を国家及び企業救済のために行なう日本国憲法違反の「徳政令」である。都市再生法の立法に合わせて憲法違反の法律が作られ、政府の方針に従って憲法違反の精霊や規則が作られ、違法な行政指導が行なわれたとき、司法もまた政府の方針に従わされた。司法の判決は原告の訴えを無視し、「行政処分の追認」の判決をするものばかりであった。行政権が国家統治のために立法府及び司法府も服従させたためである。そこで出来上がった国家とは全体主義国家と基本的に同じ構造となった。

 

「制限解除」と言う国土交通省が追認した法律解釈

わが国の都市計画行政は、都市計画に関する人文科学的知識、経験が絶対的に不足し、都市計画法の立法時点に、立法能力を欠でいた。わが国の都市計画は欧米のように人文科学に区分される学問ではなく、建設工学の土壌に構築されたものでである。都市計画法を都市の歴史文化の上に人文科学的に立法されておらず、それを政治・行政を執行する為政者の判断により都市計画が作成されてきた。

行政が作成した法定都市計画と都市計画事業として、政治家、官僚・公務員が、歴史文化的判断ではなく、時代の政治的、経済的、行政的要求に応えた「その場凌ぎの都市計画事業判断」を行なってきた。人文科学的な必然性に立った都市計画理論に立った法解釈や法施行をせず、目先の開発利益や法律の抱える矛盾をすり抜ける法律解釈で都市計画行政が行われてきた。都市計画法を歪めている最大の問題は、都市計画法第33条に定める「開発許可の基準」と「開発許可(第29条)の矛盾を、「建築制限」(都市計画法第37条)の文理解釈を否定し、開発許可権者が「都市計画法の文理解釈ではあり得ない違法な解釈(開発許可権者の独裁権定めたもの)を東京都都市整備局が行ない、それを国土交通省が追認することで、違法な法解釈が恣意的にできる奇想天外な法解釈を持ち込んだ。

「制限解除」とは、開発許可申請事務が完了すれば、開発許可の完了公告がなされたと見なし、予定建築物の確認申請と着工を認めている。この違法な法解釈は、「都市計画法の開発許可の完了公告のない開発許可の実態が存在しなくても建築確認ができる」とし、開発許可制度を開発許可権者の「制限解除」処分でできるとしたもので、都市計画法の開発許可制度を否定する自殺行為である。

東京都知事が「制限解除」の根拠条文としている都市計画法第37条は、開発許可事務が完了するまでは予定建築物を始め一切の建築行為を禁止する規定である。しかし、開発許可された開発行為を行なうために避けて通れない工事現場に必要な建築物の建設を例外的に認めたもので、「予定建築物を例外許可する条文」ではない。東京都が創設した「制限解除」では、予定建築物の建築を認める根拠条文にしているが、都市計画法第37条の文理解釈によって東京都の法律解釈は不可能である。

東京都は「制限解除」の制度を、都市計画法第29条と第33条の矛盾を回避するために、事実上、開発許可制度を否定し、開発許可なしに建築確認で行なえる制度を都市計画法に違反する制度を創設した。その制度は都市計画法に定める「開発行為」の定義に違反し、許可された建築行為は都市計画法によって開発許可を行なった土地で行なうという都市計画法の立法趣旨に違反している。「制限解除」とは、開発許可制度を否定して建築を行なう違法行為でしかない。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)

PS.東京都知事が『開発許可の手引きによって都市計画法違反の開発許可を行なっている行政処分は都民に重大な損害を与えていると判断し、東京地方検察局に刑事告発の相談をした。地検は「東京都知事は新宿区にあるので、新宿警察署の刑事に告発してはどうか」と勧められた。そこで新宿警察署の刑事かに出掛けたところ、本論で明らかにしたことは正しい内容と判断されるが、都市計画法立法上の矛盾(第29条と第33条)や都市計画法違反は新宿警察署刑事課では取り扱えず、「国会誓願」する種の問題と言われ、刑事事件の起訴権を持っが、国民から刑事告発されても起訴はしないと言われお手上げとなった。

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