HICPMメールマガジン 第871号(2020.07.13) 

HICPM会員の皆様

HICPMビルダーズマガジン読者の皆様

 

NPO法人住宅生産性研究会の解散について

(御礼とご報告)

 

コロナヴィールスによるエピデミックで様々な被害が生まれ、皆様もご苦労なさっておられることと思います。疾病にかかられた方や集中豪雨の被害に遭われた方には、一刻も早い回復と災害を乗り越え、再び健全な状態に戻れることを願っております。

さて、今回ご連絡を申し上げる趣旨は、NPO法人が解散手続きを6月に川崎市(NPO法人の監督官庁)に、東海林吾一様(ボウクス社役員)にお願いし、完了させていただきました。そのご報告に合わせ、1995年にHICPMを創設以来、会員のご支持・ご支援を得て活動を続けられたことに感謝しているとお伝えするためです。本来であれば、HICPM創設以来の会員の皆様全員にお伝えすべきと思ってはいしたが、HICPM会員名簿管理が出来ていなく、現段階で把握できる会員にしかお知らせできなく残念です。

NPO法人HICPMの過去25年間の歳入は、会員の会費、研究会実施事業の参加費、書籍等出版物の販売代金等でした。25年の活動の最終経理は経営的には、「債務ゼロ」で閉鎖できました。出版事業は外部の複数書店で30冊の単行本の市場の出版販売を行いました。最大のご協力下さった井上書院では関連書籍を今後も取り扱って下さいます。

HICPMは創立当初、中曽根内閣の「輸入住宅政策」に組み、同内閣経済企画庁長官近藤鉄夫を当研究会理事長に選出し、全米ホームビルダー協会(NAHB)と相互友好協力協定を締結し、NAHBの住宅産業技術の国内移転を進めてきました。HICPM会員は伝統的近隣住区開発(TND)や建設業経営管理技術(CM)の技術移転を中心に活動をしてきた。近藤理事長にはHICPMを政治活動に組み込むことで1年後に退任していただき、その後、私(戸谷)が、技術移転団体活動してきましたが、政府の「輸入住宅政策」の転換により、HICPMは期待通りの結果を期待通り残せませんでした。

2019年私が3つの疾病に同時に架かり、事業を継続できなくなったのですが、ボウクス社長内海健太郎様がご支援してくだされ、1年後疾病は回復し、幸いそのご約2年間残務を継続できました。その後の2年余にHICPMの当面の事業総括をしました。即ち、欧米の住宅都市産業のように「消費者が住宅を購入することで住宅購入者の資産形成を実現するようにしたい」と願うHICPMの取り組みは、国家の制度と住宅都市理論の相違により、わが国には欧米同様の住宅・建築・都市ができない社会構造なっていることが判明しました。そこで最後のご挨拶の機会に、25年間の活動の総括の結論を、最近解明した「欧米と日本の住宅都市政策の基本的な違い」としてご報告することにしました。

 

最後のHICPM住宅都市講座:HICPM25年間の運動総括から得た結論

  • 欧米の住宅不動産が資産価値を経年することで増殖する理由

欧米では土地を住宅加工し、「土地・建物一体の住宅不動産」を造り、住宅不動産は永久に使われる「ストックの資産」として造り、計画修繕と善良管理を行ないます。そのように管理された住宅不動産は、その効用を失うことはありません。効用が維持された住宅不動産の価値は、米国の不動産鑑定評価制度(アプレイザル)による『コストアプローチ』によりと、「推定再建築費」と評価されます。

その住宅不動産の価値は物価上昇分以上の資産価値の増加が得られます。コミュニティが熟成し、生活がし易くなれば、需給関係で価値は増進します。欧米の住宅政策は「ストックの住宅」で、土地と住宅を不可分一体の住環境を造り、その住環境は住宅所有者の共有資産として自治経営の対象にするため、住環境の向上はHOA資産価値の向上となって住宅所有者の資産向上になっていきます。

  • わが国の住宅不動産は経験することで資産を失うことになる理由

わが国「民法」により、住宅と土地は「別の不動産」とされます。住宅は例外なく「減価償却資産」とされ、その不動産価値は、「減価償却」される分だけ、「価値は経年、減少」します。

土地は、「変化しない恒久資産」とされ、「減価償却はしない」と言われていますが、その「土地の上に建築される住宅が減価償却」して行けば、最終的には「価値の消滅した償却済み資産(住宅)の置き場、言い換えれば、土地は、建設廃棄物の置き場になります。そのため、わが国では「スクラップ・アンド・ビルド」と言う都市再開発を繰り返し行なうことになります。

いずれにしろ、住宅不動産を保有していた人たちは、「住宅と土地」双方で資産を失うことになります。わが国の住宅地の環境向上のための都市施設等は国、公団、市町村と言う団体の資産向上になっても住宅所有者の資産向上ではありません。土地の価値向上はすべて土地所有者に帰属しないため、地価評価と土地所有者の資産評価は米国に倣って行われていますが、米国とは違います。不動産鑑定評価制度自体が違っています。そのため米国の不動産鑑定評価制度は日本では使えないのです。

  • 住宅建築設計と都市計画は「人文科学」に属し、住宅都市建設は「建設工学」

人びとが住宅・建築・都市に働きかけその経営を行ない、人びとは住宅・建築・都市の影響を受けて生活します。「人」と「土地」の弁証的関係により住宅・建築・都市の歴史文化が形成され発展することになります。その関係は人文科学と社会科学の関係として理解されるべきで、「物づくり」(工学)ではありません。

住宅・建築・都市の計画にはつくる人びとの「思想」が必要です。その「思想」を伝え、住宅や都市を建設するために、「思想」を伝達する「言葉」(ボキャブラリー)が必要になります。アーキテクチュラル・ボキャブラリー(建築用語)とアーバン・プランニング・ボキャブラリー(都市計画用語)を欧米の建築学や都市計画学では、過去から現代までの実例を調査研究して学び、その言葉を使って住宅・建築・都市を計画する仕事を「設計」といいます。建築や都市デザインの様式は、建築や都市の設計の言葉です。

欧米では建築や都市の言葉の利用を通して、よい建築や都市を設計しようとしています。1900年にエベネザー・ハワードが開発した『ガーデンシティ』の理論が、1980年DPXにより、ロバート・デービスにより、「シーサイド」においてTND開発として実施されました。それはディズニー社の5代目社長の手で「ハワードの実現できなかった夢の実現」プロジェクト(セレブレイション)として発意されました。このプロジェクトの実現は、ハワード以降の都市の理想があり、それを計画にし、関係者の合意で実現させた「人類の英知」の結晶と言われるものです。

最後に:

ここで取りあげた住宅・建築・都市の基本問題は、明治時代から欧米とは別の道を突き進んできたもので、「一朝一夕」に修正できるとは思えない。しかし、国民にとって豊かな住環境の実現は、国民にとって放置できる問題ではありません。私自身として、生涯、この問題の解決に拘り通していきたいと思っています。この総括は、HICPMとして小論文(TNDとわが国の都市計画法の問題)にしているので、ご希望の方は「返信用の空メール」でご連絡ください。

現在はコロナが再拡大し始めていますので、事務所は開店休業にし、安心できる状態が出来たら、ボウクスと活動についての相談の上、出勤したいと思いますので、メールの送信はそれ以降になります。

以上

2020.07.13.

HICPM理事長  戸谷英世

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