HICPMメールマガジン第824号(2019.03.13)

みなさんこんにちは

 

体調を崩し月曜のメールマガジンの配信が今日になってしまいました。今回のテーマは、欧米では最も大きな関心事ですが、わが国では住宅価格が高くても低くてもすべて住宅ローンが契約額通り出されるため問題にされていません。その結果、わが国ほど住宅価格に住宅産業も国民も無頓着にさせられていることには、欧米との比較で驚かされます。

 

注文住宅設計被害と政府の対応

わが国の注文住宅の設計は、世界に例を見ない「不思議な方法」で行われている。設計業務の始まりは、「材工一式」の概算単価の決定から始まる。欧米にも概算単価はあるが、住宅の品質や住宅の価格を概算単価で決めることはしない。欧米の場合、住宅不動産という住環境を土地、土地をして設計・施工するから、住環境全体の取引価格を建設工事に要した材料と労務価格を問題にする。わが国のように外観見積額や相場価格で、建築部分の工事坪単価で住宅の総額を考えることはない。わが国ではハウスメーカー、大手住宅会社、中堅建築業者住宅会社、パワービルダーの規模、中小工務店、零細工務店等の住宅建設業者ごとに「相場」と呼ばれる工事単価がある。その相場が違う理由に関し、ハウスメーカーの場合、一般的にはブランドによる信用により高額になると説明されているが、ハウスメーカーの企業経営上、高額にして高利潤を得ないと経営が成り立たない企業体質のためである。

 

ハウスメーカーの供給する住宅には、高額物件と一般物件とにより「相場」単価は違っている。建設業者はそれぞれが行う住宅の相場としての請負単価を「坪単価」として100万円、80万円、50万円というような相場が、業界では横並びに設定され、大雑把な仕様と一体になった単価を予め決めている。住宅建設業者は、広告・宣伝、営業・販売方法、資材の購入方法、金融機関との関係、企業体質と材料メーカーとの関係、建材物流システムと金融・保険システムとの関係等により決められる単価の暗黙裡の了解を基に、新築市場の取引価格の縄張りを決め、顧客勧誘をしている。このようなことが公然と行われている理由は、わが国社会は等価交換販売が行われていないからである。民法があり、公正取引委員会があり、建設業法があり行政がありながら、不等価交換販売が行われているのが日本である。

 

各企業はそれぞれの企業グループごとの区別を暗黙裡に認め合い、経験則に則った経営を行なってきた。1976年に始まった住宅建設計画法時代から約40年かけて形成された住宅産業経営としての経営規模に応じた広告・宣伝、営業・販売を含んだ経営方法として、定着した工事費の目安である。各企業群が企業収益を確保するための安全側で注文住宅を請け負う請負単価の目安である。わが国には自由な建材・住宅設備の自由流通市場は存在せず、同じ材料を同じ取引業者から購入しても、その取引価格は違い、購入代金の決済方法も違っている。このような不正が白昼公然と行われている理由は、わが国は法治国であると言われながら、行政法が機能しておらず無政府状態になっているからである。

 

消費者の立場に立った政治か、住宅産業者の立場に立った行政か

無政府状態にならぬように行政法があり、刑法、民法、行政法がありながら、これらの法律制度が機能していない理由は、立法機関、行政機関、司法機関の全てが法律で定められたとおり機能していないからである。わが国の立法府の頂点に立つ国会、行政府の頂点に立つ政府、司法の頂点に立つ最高裁判所が機能している現実こそ、わが国の無政府状態を正直に説明しているものはない。わが国は「法治国」であると日本国憲法で定めているが、政府が率先して消費者を守ろうとせず、逆に不正利益を奪う民間悪徳業者の犯行を幇助している行政が行われ、消費者は浮かばれない。少なくとも主権在民の国是を定めた日本憲法下で、行政法は公務員が国民の税金で行政法を施行しているわけであるから、行政法の適正な施行は行われて当然である。しかし、それが行われていない国がわが国である。

 

ハウスメーカーやマンション業者が日常茶飯事で建設業法違反を行なっているが、行政処分も刑事告訴も全く行われていない。消費者が行政機関に訴えても取り扱われず、刑事告訴や刑事告発をしても受理されることはない。安倍内閣は、財政金の不正交付を国会で追及された犯罪を、「真摯に受け止める」と言うが、その対応は安倍内閣と業者の利益と安倍自身の保身である。森友学園や家計学園に関する安倍内閣のスキャンダルもみ消しに国会審議時間を浪費し、被害者である納税者の立場には立たない。北朝鮮の拉致事件、東日本大震災の全てにおいて、被害者は真面目な納税者である国民であるが、被害者救済は、自民党政権は30年以上拉致問題を真摯に受け止めてきたと言いながら、具体的アクションを起こそうとしていない。

 

東日本大震災も発生後8年を経過しながら、放置されていると同然の扱いである。口先だけで「真摯に取り組む」と公言し、政治家と官僚は高額な報酬を得ながら、口先だけの説明で被災者の期待している国民の期待していることは全く行われていない。東日本大震災の時支援を申し出た米国の財界人が、わが国の政府の「住宅の2重ローン」の対応を説明したところ、「日本は民主国家か、国会議員は国民に選ばれた代表ではないのか」と真面目に疑問を投げかけてきた。第2次世界大戦でヒットラーは「平和の実現」を掲げてポーランド侵攻を行なった歴史が、最近NHK/BSで報道された。それは、安倍内閣は日本の安全を口実に安保法制を改正し、1兆円を超えることになるイージス・アショアーを導入し、輸入商社を介して巨額な政治献金を安倍首相が受け取っている現実と同じように思われる。

 

「相場価格」を基にして始まる住宅設計

建築主が注文住宅の設計を始める場合、建設工事を請負ことになる業者の選択が行われるが、その選択が設計内容は何も決まっていない状態で行われる理由は、業者を選択したときに、実際は同時に、工事ごとの「注文住宅」の仕事の進め方(建設方法)を選ぶことになるからである。「相場」と言われているものは、材料の購入方法や、住宅に使用する材料や住宅設備など企業規模による特注方法が違うことも含まれている。OEM(オリジナル・エクイップメント・マニファクチュア)と言って、企業ごとに特別仕様の建材や住宅設備を住宅建材業者や住宅設備会社に集約注文する方法で、非常に安価に生産し、それらを住宅購入者には高額に販売するものである。注文住宅に採用する商品は、一般社会でも購入できるが、独占価格販売以外の販売をせず、高額販売を維持する「差別化」商品の代表的例である。

 

格付けされた企業は、企業群ごとに材料供給業者により、同業他社と横並びの仕様により、材料の供給を受ける。中小の建設業者は資本力が小さいため、材料業者によって信用管理され、大手住宅会社の集約需要で材料生産需要の基礎需要とすることで、材料業者はハウスメーカーの利益を守る相互依存関係ができている。その関係は独占禁止法の禁止事項そのものである。政府は独占販売の構造自体を「差別化」を住宅政策の基本に据え企業利益を保護しているため、現在の建材価格の不平等な独占価格の構造は、政府の住宅政策そのもので、成果や官僚の利益が一体になっている関係を変える兆しはない。

 

わが国の住宅産業における住宅価格、建材価格は、需要と供給による自由市場価格とはかけ離れたもので、巨大な建材メーカーと大手ハウスメーカー、大手建材商社が40年近い年月をかけて構築されたものである。建材取引の与信管理販売を前提にして、建材流通の独占販売の結果つくられた産業構造である。その結果、建材や住宅設備は、市場で自由な流通の需給の関係で取引価格が決められることはない。事実上は与信管理による系列・統制販売になっている。建材メーカーや建材商社が住宅産業界で支配的な地位を持つようになった理由は、建設現場で工事を担う技能者が払底し、それに対応して政府が住宅生産工業化政策を1962年ごろから実施した結果である。

 

建設現場から有能な職人を排斥してきたわが国の住宅産業

建設現場から高い専門技能を排除し、単能工で組み立てられる材料と工法を推進してきたためである。その代表的な材料・工法は、建築の部分修繕を廃止し、代わって接着剤を多用した全面取り換え工事による徹底したスクラップ・アンド・ビルドにより、建材廃棄物と建材使用料を最大化し、既存の職人の仕事を奪い、建材メーカー及び工事請負業者の利益を最大化する方法で、消費者は膨張した費用を負担させられる。建築部材の単能工による施工は、いずれも新築工事のためのシステムであるため、新技術は日進月歩し、既存の技能は新材料・新工法とともに使い捨てられている。

 

そのため、一旦採用した新建材、新工法は修繕維持管理の対処にはならない。全ての材料も労務もスクラップ・アンド・ビルドの対象にならざるを得ない。それは住宅を購入者にとっては、全面やり替えとなり、大きな損失となる。住宅産業界にとっては大量消費・大量建設として経済活動を刺激し、建設産業界の利益になるため政府は支持してきた。しかし、建設職人は熟練技能工になる道は断たれ、基本的に使い捨てにさせられてきた。住宅購入者の住宅購買能力と切り離して、住宅価格を確定する「相場単価」が独り歩きし、それを基に見積もられた住宅価格通りに住宅金融機関が金融し、住宅購入者の支払い能力と切り離して住宅取引が行われていることは、日本以外の国ではあり得ないことで、自由主義経済としては、不等価交換販売を当然とする取引に正当性を与えるもので、異常である。

 

特にバブル経済崩壊後、不良債権に苦しめられていた企業救済のために採択されたゼロ金利政策が、これまでの住宅ローンの考え方を大きく変え、高額な住宅を購入できる勘違いを国民に与えてしまった。わが国のように家計支出総額との比較では返済不可能な巨額な住宅ローンを、住宅産業と住宅金融機関とが組んで消費者に住宅を購入させる「赤信号、皆で渡れば怖くない」と考える現実は、等価交換金融を行なっている欧米人には全く理解できない。住宅金融は住宅業者が住宅販売を容易にするため、住宅購入者に住宅購入に必要な資金を貸し込み、住宅購入者は貸金業者に貸し込まされているだけである。

 

家庭の崩壊をもたらす間違った住宅ローン

2008年住宅バブル崩壊でリーマン・ブラザーズが倒産し、世界恐慌に相当する経済危機を経験した。ローンは消費者の収入よって返済されなければならないので、FHA(連邦住宅庁)は、住宅ローンを組むときには所得との関係を考えなければならないと、『新しく住宅を購入する人のための100のQ&A』を作成し、「所得とローン額の関係」を、計算方法まで示し、返済能力を超えた住宅ローンを組んではならないと警告した。FHAはもとより全米ホームビルダーズ協会(NAHB)は、住宅購入者の立場や住宅生産に携わる職人の立場に立って、「消費者の支払額を最小限にする方向」での解決を求めるべく、住宅産業の在り方を考えてきた。

 

一方、日本ではその逆で、ファイナンスプランナーが登場し、住宅会社が取りまとめた高額の住宅は、「住宅購入者が家計支出で何らかの配慮をすればローン返済は可能になる」とし、さらに、現在は、「政府のゼロ金利政策」を利用して、「借りられるだけ借りた方が得になる」と、高額住宅販売を幇助する詐欺集団めいた機能を果たしてきた。この経済環境が変動する社会で、35年のローン期間の経済環境も住宅購入者の家計環境も安心して将来予測すること自体が不可能である。住宅ローンが返済不能になったときにファイナンシャル・プランナーは、「その時点の状況対応の仕方で、ローン返済はできる」ので、すべて住宅購入者の「自己責任」で行なえばよいと言い、金融コンサルタントはあくまでも参考意見であるという。その助言はハウスメーカーの不等価交換販売を幇助する住宅金融機関の不等価交換金融を正当化し、結果的に住宅購入者に破綻の途を進めている犯罪の手先でしかない。

 

わが国ではかつてバブル経済の崩壊で多数の住宅購入者が住宅ローン破産や住宅ローン返済のため自殺に追いやられて苦い経験を持っている。その経験を生かす取り組みが日本の政府として経済破綻の総括としての都市再生事業であった。政府の対応は、バブル経済崩壊の原因究明をせず、今後の教訓の全てについて何も取り組まれていない。政府自身がバブル崩壊時の住宅ローン事故とその後の不良債権に苦しんで来て、その結果は「聖域なき構造改革」という憲法違反の「平成の徳政令」ともいうべき都市再生事業により、財政破綻に危機を凌いだ。

 

バブル崩壊の結果発生した住宅ローン破綻問題を、国民の「自己責任」の問題とする政府の見解には重大な政策上の無責任さがある。住宅行政が容認している不等価交換販売も不等価交換金融も、政府が放置しているため、不可抗力で発生した現象のように政府は無責任に考え、政治家はもとより住宅政策関係職員も住宅ローン破綻のからくりが、政府の住宅政策の失敗であることも理解できていない。結果として「住宅購入者の自己責任」と責任を住宅購入者に押し付けている政治家、住宅行政に携わっている官僚も金融機関職員も、住宅ローン破綻の責任追及を避けるため、原因究明をしないでいる。住宅行政関係機関はその理由を理解までできていて放置しているが、それは政府の国民に対する犯罪である。

(BM第824号)

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