HICPMメールマガジン第762号(2018.03.12)

みなさんこんにちは

住宅設計を粗末にして、よい住宅はできない

この数年来消費者が住宅を取得することで資産を失っている理由を調査研究し、無数の原因を絞り込んでいくとどうしても「設計」 に最大の問題があることに帰着する。その結論にたどり着いて、振り返ってその理由を考えると、設計、施工、維持管理のすべてが重要であることは言うまでもない が、最初の設計段階の設計ができていないとその後の施工や維持管理でどれだけ頑張っても、回復することはできない。

わが国で設計が疎かにされている理由 は、設計教育が疎かにされているためである。設計重視の観点で、先週は赤坂離宮の視察報告をした。今週は現在静かな人気のあるF・L・ライトの弟子であっ た遠藤新の息子、遠藤栄の孫、遠藤現の作品集を書籍で学習した後で、今日は遠藤栄の実例を見学した。遠藤新のご子息、栄のお孫さん現さんにはライトの住宅 に対する思想〈ライトの4原則〉が正しく伝えられていて、消費者にとって素直に受け入れられる住宅だと思った。

多摩ニュータウンの聖ヶ丘に遠藤栄さんが設計した住宅を見学したが、それをライトの建築思想(建築の「4原則」)との関係で説明すると以下のとおりである。

 

第1原則(土地を大切にせよ):緩い起伏のある敷地を生かし、周辺環境を考えた街並み景観と住宅からの眺望を考えて、、それをスキップフロアーの住宅にすることで、既存の住環境を生かす住宅としている。

第2原則(材料と工法を尊重せよ):木造で外壁下見板と漆喰とを基本とした住宅に、障子と板戸を採用することで「日本人に歴史文化になじみのある和風住宅」の感じを実現している。

第3原則(箱をつぶせ):権威主義の住宅ではなく、生活差の生活要求を第1にする設計が行われたが、わが国の消費者は設計上の決定権を持つことを建築主の設計能力と勘違いし、専門の設計者を無視した設計を要求し、「設計書の提案通りにすればよかった」と建築主が再三述懐していた。

第4原則(民主主義の実現):オープンプランニングによる設計を行うことで、この家に生活するひとも訪問する人も、お互いがそれぞれの違いを理解し合えることで、家族間だけではなく、この住宅に集う費と相互の民主主義〈相互の人格を尊重しあうこと〉ができる住宅になっていた。

 

遠藤一族の建築設計思想の系譜

特に、ライトはわが国の寝殿造りの設計思想をプレーリー様式としそれを帝国ホテルのデザインとして里帰りし、その設計デザイン を通して、ライトはアントニオ・レーモンドや吉村順三らその設計思想を伝えた。ライトが遠藤新に完成させた明日館を見れば、そこには宇治平等院鳳凰堂が重 なって見える。ライトの指導を受けたレーモンド吉村順三は、ロックフェラーの意向を受け戦後の住宅デザインとして書院造を求め、MoMAに吉村順三が建て た「松風荘」(書院造)として実現し、それがオープンプランニングとして戦後の米国だけではなく世界の住宅設計思想に取り入れられた。寝殿造り、ライト、 レーモンド、吉村順三、書院造り、遠藤新、遠藤栄、遠藤現という師弟関係で受け継がれた和風建築文化が、仏教思想に立つ宇宙観に裏付けられた建築設計思想 を現代に受け継いでいる。その建築思想を設計に展開している遠藤栄や、現在活躍中の遠藤現の設計を見ると、寝殿造りや書院造りとしてライトやロックフェ ラーを感動させた次の4つの考え方がその根底にある。

(1)寝殿造りや書院造りとしてライトやロックフェラーを感動させた歴史文化を踏まえた設計とする。

(2)無理、無駄、斑をなくし、使用する材料を必要最小限にして、できるだけ安い費用で住宅を造る。

(3)住宅からの熱のランニングコストを最小にするためにエンベロップを最小にする住宅である。

(4)オープンプランニングを最大限活用することで限られた屋内空間を有効に活用している。

 

遠藤栄・現の実践してきた住宅建築

遠藤現は基本的にライトの建築思想に傾倒し、遠藤新、遠藤栄が実践した建築設計を謙虚に実践しようと努力をしており、素直にラ イトの建築思想を学び実践する姿勢で臨んでいるため、その説明も行なっていることも日本の現在住宅産業を汚染している「差別化」設計で顧客から多額の資金 をむしり取ろうせず、好感が持てる。しかし、居住者が布団を屋外のベランダ一杯に干し、住宅地の景観や眺望を無視した生活要求を改めさせず、その要求を受 け入れた設計をした話を聞いて、少し幻滅を感じた。

もし、エベネザーハワードが『ガーデンシテイ』で住宅を購入した人の資産形成をできるものにする英米の住宅設計の理論と経験を ライトが実践したように、遠藤さんがその設計に生かし、その設計思想を建築主に説明し、欧米の社会性を生かした住まい方を建築主に指導すれは、建築主自身 の資産形成にもなる。遠藤さんは米国で生活をして生活感として社会性を重視した生活の重要性は分かっているとは思われるが、日本の確認申請第1主義の建築 と「差別化」教育に押されてしまっていた。

しかし、遠藤栄・現は、日本社会で設計を行いながら、遠藤新以来のライトの建築思想による住宅設計実例を評価してくれている顧客に恵まれ、設計の仕事ができている恵まれた設計者であると感じた。

 

ホームプランシステム

昨日もHICPMの会員支援と消費者に必要な取り組みとして「住宅設計」支援の検 討会をHICPM会議室で実施した。それはかつてフロンビルホームを創設した越川さんの業務成果の活用と、成瀬さんがなくなって中断しているHICPM ホームプランを再活性化できないかと考えての取り組みである。越川さんと成瀬さんは面識がなかったかもしれないが、設計を尊重し合ったことを考えて、今回 コラボレイションを考えた。消費者の住宅購買力が低下し、現在は住宅会社が不等価交換販売を不等価交換金融で幇助し、日本では住宅価格の問題は住宅購入者 の支払い能力の問題がないかのような勘違いが生まれ、住宅会社の言いなりの住宅を購入し、気が付いてみれば住宅を購入することで資産を失い、退職後の気が ついてみれば、「下級老人」になっている現実が広がっている。住宅購入者はその住宅購入額の不動産投資をしたわけである。欧米の常識が働く国であれば、住 宅の資産価値は物価上昇分以上の比率で増殖する必要である。それには以下の2つのことが工務店によって実施されなければならない。

  • 欧米並みの資産を増殖できる設計業務(時代とともに資産価値が上がる基本設計と正確な工事費見積もりのできる実施設計)が消費者の支払い能力で手に入れられる設計が行なわれる
  • 工事段階で無理、無駄、斑のない常時のできるCM技術に裏付けられた工事施工管理ができる。

米国では優秀な建築家でなければ作成できない設計業務を、設計業務費を著作権の印 税払いで済ます方法としてホームプランシステムがある。現在の欧米の住宅は基本的にホームプランシステムを使うことで、資産価値の形成できる住宅設計を実 際の設計業務費の10%程度で手に入れることができている。

日本ではハウスメーカーの営業マンが「無償〈サービス〉」で設計すると言い、工事 費の見積もりをすることのできない代願設計の作成を、国土交通省も大学の住宅設計と勘違いして容認している。そのため日本ではそのようにして設計した設計 図書で建設した住宅は、例外なく建築主の資産を失わせる。そのような不当な建築設計教育しか行っていないのが日本の大学の建築教育である。大学の設計教育 に当たる教師自身が欧米の建築設計教育として行われている人文科学としての建築教育を受けていない。確認申請に合格した設計図書は、建築士の受験合格向け に建築基準法の審査基準に適合している代願設であって、建築主の生活要求に適合している品質であることを審査し、確認したものではない。

注文住宅講座
の続き

 わが国の「フローの住宅」政策

欧 米の住宅不動産価値を高めることを不動産政策の目的とする常識に反し、わが国では土地を流通させることや、株式を流通させることで、不動産業者が「流通利 益(口銭)」入れることを目的にして不動産購入が行われ、不動産業性がそれを追認してきた。不動産業者が取引利益の大きさを拡大するため、「差別化」 の手段を使う取引(売買)により、土地(不動産)経営や株式会社経営による経営利益の拡大が図られてきた。土地自身の効用を高めるのではなく、架空な 計画や予測を持ち出し、事業計画もないのに、開発許可手続きをすることで取引価格を吊り上げることが行われ、都市計画行政が開発業界の言いなりに許可を与 えてきた。そこには住宅産業のことにしか住宅政策の関心はなく、消費者の住宅をどのように設計するか自体が問題にされてきません。

「顧客 満足」という言葉だけが独り歩きしていますが、多様な要求をもつ顧客に満足のいく住宅をつくるためのには、その設計をどのようにまとめていくかという 議論が建築主との間で、その置かれている状況と将来の生活を考えてしっかりした議論がなされ、それを実現する専門的な知識を駆使した設計が行われなければな りません。

小 泉・竹中内閣時代の都市再生事業では、そのような住宅の問題は議論の対象にはならなくなり、既存の土地をいかに高い容積率で開発されることが議論の中心に なりました。そして新しく生み出した都市空間をいかに高く売却するかが住宅都市政策の全てになりました。その経済再生を実現する政策に合わせて、都市計画 法に違反する「東京都の開発許可の手引き」を適法に運用し、土地の切土、盛土として1m未満の開発行為は、開発行為自体が存在しないので「開発許可不要」 と都市計画法違反の説明をし土地取引が行われました。

都市計画法上開発許可をゆする土地が開発許可を得るためにた道路をはじめ都市施設の整備が必要になり ます。その都市施設の整備をしないでもできる都市開発政策として「開発許可不要という政策は東京都の開発許可の手引きとして出され、それを政府が全面的に 容認したのです。

その後、開発行為は存在しない開発であるとされた開発で、そこでの建築行為として土地の大掘削を行うが、土地の掘削工事は建築工事であって、開発行為には 該当しないと開発許可権者は開発反対の住民に東京都の開発行政も説明を行いました。そして、開発許可基準に抵触する開発を進めた事例は無数にありました。 開発行政と建築確認が、住民のためではなく、開発業者の利益を拡大するために使われてきました。東京都に代表される開発行政は、目先の開発業者の要求に応 える許可を与えて業者に利益供与をすることが目的になり、開発許可によって都民のためになる開発を許可する考えは全く存在しません。開発許可が行われる と、建築確認では開発許可に対する違法を指摘しても、それを許可済みのこととして取り合わず、申請開発業者の言いなりの確認を行うことで住宅産業者の利益 を可能にすることが開発と建築の行政になっていました。

卑 近な言葉で説明すると、日本で行われている民間の不動産経営と行政は「不動産取引や株式取引という投機的利益(期待利益)追求」を目的とする「差別化」経 営とその見込み利益追求を支援する行政です。それに対し、欧米での不動産の関心は、「株式を発行して事業資金を集め、計画通りの事業経営を行い、不動産事 業の経営で挙げた実利益を投資者に分配し、株式売買価格を引き上げる」実業の経営です。

一般的には虚業(期待利益の追求)か、実業(実際利益の追求)の違 いといい、平たい言葉では、「博打打経営」か、「実直な律儀商売」かの違いと説明されてきました。それは「フローの住宅」では住宅購入者不在の住宅産業本 位の住宅政策であり、「ストックの住宅」は、住宅購入者利益本位の住宅政策になります。そのため、欧米の住宅政策に「フローの住宅」政策は存在しないし、 住宅政策上あってはならない政策と考えられています。

(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷英世)

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