HICPMメールマガジン第264号

HICPMビルダーズマガジン第264号をお届けします

 

民間建築主事制度が耐震偽装事件を生み出し、建築行政の責任問題が指摘され、建築行政が破綻するのではないかと思わされてから二昔も経たない。スルガ銀行の不正住宅融資問題や、レオパレスによる不正利益を得んがための違反住宅・建築問題が行政機関やメディアも承知の下で発生した。その違反は企業が法律違反を悪びれることなく正当な経済活動のように行ない利益を追求している。監督行政機関も警察・検察の存在を無視した事件に、国民も怒りもできず、唖然と見守る他ない状態に置かれている。

 

半世紀ほど前、福島や兵庫での旅館・ホテル火災や、大阪の千日前での雑居ビル火災で多くの人身事故と物損が発生したとき、建築と消防行政の責任と信用が問題にされ、国会が法律の大改正を要求した。そのとき、私は建設省で建築行政を担当し行政は責任を痛感した。それを現在の住宅・建築行政違反を比較すると、同じ国の政治や行政監督下で発生し、メディアが監視・観察している事件と思われない。これらの問題を社会問題として、政府も行政も社会も認識していると思えない理由はなぜだろうか。

 

戦後70年経過し、戦後新しく制度化された住宅・建築・都市計画の行政も軌道に乗っているように見える。中でも都市計画法が1968年の制定当時、英国のような都市計画を実現する国にと、政府が国民に説明して立法した。しかし、首都東京都が実施している都市計画行政は、東京都が国土交通省と合意の下で都市計画法違反の行政指導書を基に、都民に都市計画法違反を行なう異常な行政である。それを政治家も行政関係者当然のように行ない、行政に、法律違反の行政であるという自覚が失せている。

 

わが国は法治国と小学生から義務教育で教えられ文盲率がゼロとされている国家である。法律文書に定められたことが蹂躙されていることを政府は承知し、社会もそれを容認していることは信じられないことである。冒頭に取り上げられたとおり法律の蹂躙は日常化している。行政能力がありながら違反は公然と放置されている。ビルダーズマガジンでは、住宅・建築・都市行政で行政法違反が常態化しているわが国の住宅・建築・都市の状況を歴史軸を辿って、どこに問題があったのかを検討することにした。

 

結果として分かったことは、わが国は「フローの利益」本位の刹那的な企業経営とともに刹那的な行政が行なわれており、国民や国家の資産を高める「ストックの利益」本位の経営や行政が軽視され、法律違反でも政治は利益を重視し、企業利益を守ることを法律に優先して行なう歪んだ行政体質の固まった国になってしまった。違反を正当化して、行政と司法が憲法に定めた機能を果たしているかが問われている。司法が政治の要求を受けて容認した法律違反の判断に既得権を与える司法の慣例がある。戦後の占領政策で行った憲法違反が、日米安全保障条約で追認されたことに根本的な原因が潜んでいる。

 

 

内容紹介

2. インターナショナル・アーツ&クラフツ:

チャールズ・レニエー・マッキントッシュ ;サイドチェア、1905-1910年

3. カレントトピックス:ゼロから始まった戦後の住宅・都市政策

内務省解体の歴史を引きずる住宅・建築・都市行政

5. 松尾憲親の「荻浦ガーデンサバーブ」住宅地経営奮闘記:第12回

   「資産価値の上がる住宅地とは」(6)

6. 特集:「欧米の都市計画」と異質な「日本の都市計画」;

「明治維新の都市づくり」から「現代の都市計画」に続く共通性

11. 補講:わが国の都市計画学、都市計画法、都市計画行政;

日本と欧米の都市計画行政の相違:違法な行政指導の横行する国

13. 竹山清明の街並み講座:セザンヌ絵画公園と住宅地

14. 澁谷征教の住宅デザインのワンポイント(70):

    『マークスプリングス物語』書籍出版の裏話 

15. トリッシーノとパラディオの街:ヴィチェンツァ(北イタリア)

16. CM講座学習の原点に戻って(15):

実施設計と工事費見積もりのデータベース

17. 二つの本誌連載記事の繰り上げ終了と総括:

「オランダ・アメリカ・日本の住宅」と「聖域なき構造改革」

18. 「街づくり教科書」講座(第22回)

都市計画法に定める「開発行為」と開発許可の矛盾

20. 書籍注文書/編集後記

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