HICPMメールマガジン第833号(2019.06.03)

みなさんこんにちは

 

はじめに

私はここしばらく、この数年来問題にしてきた都市計画法の開発許可の問題を考えています。現在HICPMの事務所を置かせてもらっている神奈川県川崎市にあるボウクス株式会社の田園調布の開発に関係があります。ボウクス会社はHICPMの会員でもあり、小生自身、1968年の都市計画法の立法時に関係して以来の問題でもあるため、その行政官時代からの問題として取り組んでいます。現在、大田区においてボウクスが取り組んでいる住宅地開発の問題で、都市計画法どおりの開発が東京都の開発行政によって妨害されています。この問題は、焼成の半世紀に渉る取り組みです。そのため、詳細部分にのめり込んでしまいそうですが、今回は都市計画法の専門知識のない方でも解るように説明します。

 

第1.都市計画法立法当時の社会的背景

1960年代後半は東京オリンピック、千里万国博欄会で、わが国の高度経済成長が軌道に乗った時代です。人工の都市急増と厳しい住宅問題で、大都市の周辺部の農地に市街地が、「木賃アパート」と「文化住宅」が違法、違法に確認なしで1週間足らずで建設され、入居が進みました。教育施設や社会保障施設の供給も追いつかないため、生活関連行政は、電気、ガス、水道の供給停止を行なって違反開発を阻止しようとしました。その対応前に入居が進め、納税者の生存環境保障や、住環境改善要求に押されて無政府状態が改善されない状態でした。そのような状況に対して、わが国の政治家や行政環境関係者からは、少し長期を見込んだ政策に必要性が指摘され、わが国の都市の将来を考え、しっかりした政策を求める要求が台頭してきました。わが国政府は、戦後、欧米を見聞し、福祉国家を目指すと言われた英国の都市計画が最も優れていて、わが国のモデルとするべきものと考えられていました。

 

それは戦後のわが国では終戦前から内務省が戦後対策を研究し、特に英国ではチャーチルの保守政権で世界大戦が勝利したにも拘らず、戦後の総選挙腕保守党は敗北し、住宅・都市政策を掲げた後リー労働政権が成立したことから、住宅・都市政策研究が内務省内部で取り組まれていました。1951年の英国に倣って公営住宅法の制定し、英国では、ハーローニュータウンの開発を開始した。政府は建設省職員を英国に派遣するとともに、大阪府千里丘陵でニュータウンを開発するため、英国のハーローニュータウンとほぼ同一地形の土地買収を行ない、英国での開発どおりの取り組みを実施しました。その検討を経て、将来に向けて立派な都市を形成するためには、しっかりした都市計画法を立法することが指摘され、英国の「都市農村計画法」に倣って都市計画法をつくることが政府として決定されました。

 

第2.英国の「都市農村計画法をモデルにした理由

わが国の都市計画法は、都市計画法と建築基準法とが、「姉妹法の関係」で計画を実現することになっていますが、その建築基準法の前身「市街地建築物法」は、内務省警保局の所管で、市街地建築物法は警察の許認可行政として行われていました。軍国主義一掃の行政改革の中で、市街地建築物法は廃止され、新たに米国の都市計画法と建築法規とを取り入れた建築基準法が誕生することになり、都市計画法も米国の都市計画法(ゾーニングコード)に合わせて関連改正されることになりました。その都市計画法も都市のスプロールに対応できないと判断し、廃止し、新しく英国の都市農村計画法に倣うことになりました。英国の都市農村計画法は計画許可制度で、都市計画決定した内容は強制権によって、国家がその責任の下に実現する権利(計画高権)に裏付けられた法律と説明されていました。

 

新しい都市計画法では英国の計画許可(プランニング・パーミッション)制度を、「開発許可」制度とし、「土地と建築物一体の建築環境計画」を許可の対象にするものでした。都市計画制度は民法第87条を背景に、土地と建築物とは別の不動産とされ、それまで「土地利用規制は都市計画法」、「建築規制は建築基準法」で行うことになっていて、土地と建築物を不可分一体の建築環境と扱うことは行われていませんでした。建築物の配置計画の概念は、建築環境規制に存在しませんでした。新しい都市計画法では英国の都市農村計画法通り、土地と建築物を一体とした環境計画を開発許可するものでした。

 

第3.都市施設整備工場のために設けられた「開発許可の基準』

優れた都市環境を形成する上で最も重要な条件は、道路・公園・下水道整備であると考えられ、1950年の建築基準法制定時に都市計画区域内の号炉幅員は4m以上とされ、4m未満の道路に関しても、建築物の建設時に敷地の前面後退を行なって、都市計画区域内の道路は最終的には幅員4mとすることが決められていました。そこで新都市計画法では都市計画区域内の道路はそれまでの4mの50%増しの6m以上とすることにし、その条件を都市計画法第33条の「開発許可の基準」に明記しました。その基準に合致した都市施設環境を整備するためには都市施設整備を、都市計画法の施行に先行して行うことが不可欠でした。しかし、日米安全保障条約関連の自由化政策で炭鉱の閉山と石油の自由化を行なうことにより、ガソリン税が見込まれ、道路財源は確保できると考えられていました。

 

第4.「土地」と「建築物」とは別の不動産と見なす民法第87条との調整

都市計画法の立法作業が進行する過程で、建設省住宅局建築指導課は、都市計画法の姉妹法の所管部署で、都市計画法改正に対応して市街地建築指導室がつくられ、私な同室の係長でした。都市局が計画している都市計画法が制定されると、都市計画区域における建築確認業務は開発許可に吸収され、住宅局の建築基準法集団規定部門は都市計画行政に吸収されることになります。そのことが判明すると、住宅局は一挙に「都市計画法立法反対」狼煙を上げることになりました。都市計確保の立法は政府の方針と決定され、その方針変更はできない状況にありました。しかも、土地と建築物を別の不動産と定めた法的根拠は民法第87条で、民法改正まで拡大すると、予定通りの立法はできない状況にありました。

 

第5.建設省大臣官房文書課が行った立法目的のための妥協:「予定建築物」

住宅局と都市局の行政利権を調整するために大臣官房文書課がその仲裁に入りました。その結果行われた調整は、既存の都市計画行政と建築行政の既存利権を尊重するものでした。その調整のために新たに「予定建築物」という法律用語がつくられて、「予定建築物」を建設するための地盤の整備までを「開発許可」として都市計画法で規定し、開発許可が完了公告されてからは、その土地での建築基準法による確認が行なわれることが決定しました。その結果、当初の都市計画法で規定していた開発許可は、土地と建築物一体の建築不動産に対する開発許可から、建築物の地盤面を境界に、地盤面以下の部分を都市計画法が監督し、地盤面以上の部分は建築基準法が監督することになりました。

 

都市計画法では「予定建築物」の地盤面の整備までを「開発行為」と呼び、「土地の区画形質の変更」と定義しました。一方、建築基準法の行政は開発許可で形成された地盤面上に、建築物を建築する業務に整理・仕訳されました。しかし、建築基準法で言う建築物は、建設業法上の建築物であって、土工事及び基礎工事を含む建築不動産を形成する工事全体を「建築物」と呼んできていました。「地盤面より上部のみを建築物」と定義していませんでした。建築物には基礎が不可欠であると建築行政関係者は考えていました。一方、都市計画行政では地盤面以下を都市計画事業で建設する経験を持っていませんでした。建築工事と土木工事とは、材料として同じ鉄筋コンクリートを使っても、その構造・材料は異質と見なされ、適用する技術基準も違っていました。その結果、わが国では建築工事業と土木工事業とは全く別の工事業とされ、一緒に工事をすることは稀でした。多くの建設業は土木工事も建築工事も行っていますが、請負工事としては土木工事と建築工事とは同じ建設業者でも、別の部門が担当しています。

 

第6.脱法で開発許可を回避する取り組み

建築行政は、確認業務としては土工事及び基礎工事を含む建築工事全体を行なうことを要求し、都市計画行政は、それまで土工事と基礎工事だけを土木工事として行なった経験は殆どなく、建築工事のうち、「土工事と基礎工事が開発行為」として行った経験はなく、開発行為を対象に都市計画行政を行ないたくないと開発許可を忌避していました。その上、都市計画法で新しく設定された「開発許可の基準」は、現実の都市にはその基準を満足させる道路がなく、開発許可申請が出されても「開発許可の基準」に不適合であるから、「許可できない」旨の通知をせざるを得ません。都市計画法の施行以前であれば、確認事務ができるため、都市計画行政はそれまで可能な建築行為を妨害することになってしまいます。そこで都市計画法上の開発許可を回避する取り組みが、都市計画法改正を含んで官民で検討されました。

 

結果的に行われたことは、「開発許可不要」、「開発行為不存在」「違法な理由を認めた開発許可」が行われましたが、開発許可に適合する都市施設の整備を含む適法な対応は、その間に行なわれた違法な処分を違法であるとしないように「全て適法な行政処分」とされ、実施された違法な行政処分を、「適法な行政処分」と勘違いさせるように作成された指導書が東京都による『開発許可の手引き』です。東京都の「開発許可の手引き」では、都市計画法第4条に定められた『開発行為』の定義自体を違法に作り替え、開発行為は地盤面高さの変更と強調し、土工事及び基礎工事は、「開発行為ではない」、「建築工事は開発行為ではない」と都市計画法を解釈するとき、勘違いさせるような操作を行なっています。

 

第7.都市計画行政と建築行政の両行政利権の妥協法

都市局と住宅局とが妥協した都市計画法立法時に、「既存の両行政を尊重する」とした合意で、法律上の行政の縄張りは整理されました。しかし、それまでの「開発許可」行政を担う許可制度が生まれたため、都市計画法には「開発行為の定義」が明記されたが、その定義自体「禅問答」に近い「土地の区画形質の変更」と記載で、都市計画関係者にも理解できません。東京都が定めた『開発許可の手引き』おいて、「開発行為」の定義を解説しているが、その解説は、都市計画法違反を正当化するための解説とはいえ、都市計画行政及び建築行政関係者に立法どおりの理解はできないものです。その隙間に東京都は『開発許可の手引き』を都市計画法を欺罔する指導書として作成され、「開発行為」の定義に違反する定義が、『開発許可の手引き』に記載され、都市計画法違反の開発許可が行われています。

 

第8.不当な行政を是正できない行政体質

行政では、法律より条令、条例より規則、規則より行政指導都会に位置付けられるものほど、行政組織を強く縛っています。その理由は行政を執行する人間関係であります。官僚社会では「前官礼遇」と言い、前任者の行なったことに忠実であることが組織秩序を守るために必要とされてきました。そのため、人間関係の強い支配として行政前例を守ることが組織維持上重要と考えられてきました。『開発許可の手引き』は、都市計画法違反を犯して守ってきた違反行政を維持することが行政官の役割と考えられており、それを覆すことは、官僚機構や行政秩序の破壊者と見なされます。それは官僚だけではなく、東京都のような地方公務員社会を持縛っています。誤った既成事実を否定し、正しいことは行なうことは組織を破壊することにもなります。そのためそれを行なう人は、、組織から抹殺されます。都市計画法違反が明白な『開発許可の手引き』は、違反に手を貸した関係者の利益のために守られているのです。

 

おわりに

東京都知事がその権限によって強制している都市計画法違反の『開発許可の手引き』は、放置していれば関係者に法律違反の不利益を及ぼすことになるため、消費者一般のためには、可及的速やかに廃止されなければなりません。しかし、それを廃止させる強制権をもって行なう方法は、訴訟(裁判)を行なって司法権による判決を使うしかありません。HICPMとしては、この『開発許可の手引き』は、個人の私有財産権を侵害するもので、その根拠となる文書は、「都市計画に適合する文書」と欺罔して作成され、刑法第155条文書偽造の罪に該当している文書です。依って、NPO法人住宅生産性研究会としては、利害関係を受けている者だはなく、起訴を行なうことはできないので、東京都知事の犯罪として、東京地方検察庁に刑事告発することにしました。この文書はそのための準備書面です。

(NPOhプ人住宅生産性研究会理事長 戸谷英世

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