HICPMメールマガジン第748号(2017.11.27)

HICPMメールマガジン第748号(2017.11.27)

みなさんこんにちは

歴史文化を担った日本建築と建築家教育

2週間ほど前、大磯の吉田茂邸を見学してきました。葉巻を加え、白足袋を履き、国会では野党議員に「馬鹿野郎」と怒鳴り、南原 繁東大総長には「曲学阿世」の徒とやっつけ、胸のすくような政治家で、皇居の北の丸公園に銅像があり、散歩のとき時々その姿を見て戦後の日本を思い出しま す。現在の麻生副総理の叔父にあたる人ですが、政治家としてのイメージは全く違います。5年ほど前火災に遭った大磯の邸宅は復興したと聞いて、出かけてみ ることにしました。想像をはるかに上回った素晴らしい正統派和風建築で、海外の要人に誇りをもって見せることのできる建築だと思いました。この建築は邸宅 の内部も外部も邸宅を見る人にとって、「見せる」美しさのある建築であるとともに、邸宅内外からの眺望の優れた和風建築でした。その設計者は吉田五十八で す。1カ月前ほどに竹橋にある国際美術館で開催された世界で巡回展示をした「日本の住宅」展があり、丹下健三以下黒川紀章、安藤忠雄らの建築家の作品を思 い起こし、比較してしまいました。同じ戦後の日本の建築設計者でも、まともな人文科学としての建築教育を受けた吉田五十八と、伝統的な建築教育を受けず、 戦後、コルビジュエらの洋風建築の真似をした丹下以下とは「月とスッポン」だと思いました。

 

政治家、吉田茂

アレン・ダレスが朝鮮戦争勃発後、訪日し、吉田首相に「日本に再軍備」を迫ったのに対し、吉田首相はそれを拒否しました。その ことは当時から私の「吉田首相の政治家像」の基本となっていました。私にはサンフランシスコ平和条約に日本の全権施設として出席した首相という記憶と、そ れに引き続いて開催された日米安全保障条約で、随員を外し、単独で署名人になったことで、吉田首相の胸の内はどうだったのかと疑問が残っています。

日本国憲法を守り、再軍備を拒否した吉田首相が、日本国憲法に沿ったサンフランシスコ平和条約に調印したところまでは筋が通っ ていますが、調印後、日本国憲法と矛盾する日米安全保障条約に調印するに当たり、随員をつけず、吉田首相が単独で署名した理由は、すべての政治責任は自分 で背負おうとしたように思えます。吉田首相にも背負える責任ではないのですが、当時の日本には米国の極東軍事戦略に服従する以外の選択肢はなかったので す。その随員に「日本憲法違反の日米安全保障条約に調印した」という政治責任は負わせたくないと吉田首相は考えたに違いないと思いました。

NHKの連続歴史小説「井伊直虎」の物語も、人間の生き方を考えさせてくれるもので、吉田茂は織田信長の同盟関係の中の徳川家 康の役割を担っていたように思われます。岸伸介以下安倍晋三らは、日本の太平洋戦争の責任を国内外に対して、全く感じず、米軍にお先棒担ぎしかしない政治 家で、吉田茂とは別種の政治家です。日本には吉田茂のような政治家がいなくなってしまったという悲しさを感じます。

 

今回も「注文住宅」の続きを説明します。

 

建築士法上の建築士

建築士法は、憲法第25条に定める国民に健康で文化的な住宅・建築・都市環境を実現するために建築設計・工事監理業務を適切に 行う建築士とその業務を定める法治国の役割を担っています。日本が法治国であることの安心感が、建築士法への信頼感になり、建築士の業務への信頼感につな がっています。実際に建築士法の立法趣旨どおりの業務が行われていなくても、建築基準法の手続きで建築士が設計・工事監理をしたことを確認された建築に対 する安心感を、国家に対する信頼感を通して国民に与えています。建築設計及び建築施工で、法律違反が起き、それを国家に訴えれば、国家は法律に定めたとお りに違反を是正してくれると国民は教育し、国民は法治国の建前を信じています。

 

設計図書(基本設計と実施設計)

わが国の大学及び建築専門学校で建築教育している内容は、法治国の建前の建築教育でしかありません。実際の建築教育も建築業務 も、建築設計でも建築施工でも欧米で行われている建築教育は行われず、建築知識が不足しているため、違反が建築士資格者の業務として横行し、行政はそれら の違反を容認しています。その最大の理由は、まともな建築設計教育が行われず、建築教育が乱れているためです。確認申請書に添付する建築計画が建築基準関 係法令に適合していることを説明する設計図書(「代願設計」と呼ばれる。)を作成することが建築士法上の建築設計ではないのにもかかわらず、日本の建築教 育では代願設計の作成を建築設計教育で教えています。代願設計では工事の詳細は分からず、工事費見積もりも概算見積もりしかできません。本来の建築教育で は、その基本設計は建築主の意図を建築家の建築言語(アーキテクチュラル・ボキャブラリー:建築形態、建築詳細、建築装飾)を駆使して社会に説明するもの であり、実施設計は、その建築を造るために使われる材料と工法を熟知し、正確な建築工事を予定された建築工事費で建設する実施設計でなければなりません。

 

概略設計(代願設計)であるため発生する不誠実設計業務

不利益を受けた国民が、法律を実現するためには、国家を相手に争わない限り、法律は実現できないのです。行政処分の違反では行 政不服申請を行ない、行政事件訴訟を起こし、特に、詐欺横領といった刑事事件を提訴することになります。しかし、これまで行政が容認した住宅政策に関連し た詐欺事件は、国民が被害者であって刑事告訴をしても、検事が起訴しなければ刑事事件になりません。行政事件や刑事事件で、国民の権利を守る方法は、法治 国の日本では行政及び司法は法律通りの対応をしてくれると説明されていますが、実際に司法や行政により国民の権利が侵されてきた事例が無数にあります。そ れにも拘らず、明らかに憲法違反の事件さえ、学校教育で教えられていません。民事事件や行政事件に関しても、司法の場で実際に争うためには多大の時間と費 用を要することは、ほとんど学校教育で教えられていません。要するに憲法で約束された国民の権利を守るために、国民自身が非常な努力と犠牲を払うことなし に守られることはありません。そのような実際の問題を教育しないで、「法治国」は国家が憲法で定めたことは守ってくれるかのような現実と遊離した教育が行 われ、それを悪用して、国民に法律違反の住宅販売が国の住宅政策として行われているのです。

 

都市再生事業で行われた行政による違反建築

小泉・竹中内閣が行った都市再生事業はその典型な事例ですが、違反を積極的に推進してきた国は、そこで違反が行われたとは絶対 に公言しません。違法に行われている行政情報が、完全に国民に遮断され、詐欺にあった国民は「自己責任」によると切り捨て、詐欺業者を取り締まらなかった ため、国民に詐欺業者を過信させ、国民に同じ被害に遭遇させています。ハウスメーカーや建築士の違反業務に対し、国家が違反業務を容認してきたため、不等 価交換販売と不等価交換金融が横行し国民が資産を失ってきたのです。国土交通省住宅局はハウスメーカーが「差別化」という欺罔の手段で事業を拡大し、住宅 産業を発展させ日本の経済成長を牽引し、景気を浮揚したことを評価し、欺罔の事実を知っていて、ハウスメーカーの代表者としてダイワハウス会長に安倍内閣 が国家大叙勲を与えました。大叙勲を与える場合は、それに先立って受賞者に犯罪によって不正利益を上げたのではないかという調査があって当然です。大叙勲 を与えたことでダイワハウスに不正な営業はなかったことを政府が裏書きしているのです。

 

ハウスメーカーの設計・施工業務を容認した日本政府

国家大叙勲をダイワハウスに授賞させた結果、ダイワハウスのように事実上建築士不在で建設された住宅で、住宅を購入した国民が 貧困になっても、政府は、住宅産業は高利潤を上げGDP引き上げに貢献し、経済を成長させ景気を浮揚させた結果を評価し、これまでのハウスメーカーの業務 方法を追認してきました。大叙勲の授与により、法律に違反した行為はすべて問題にしなくてもよいという政府の判断が示されたことになりました。それが「フ ローの住宅」政策に従った大叙勲を受けたダイワハウスです。その一方で住宅購入者は例外なく住宅購入額の半額の資産を失いましたが、それに住宅購入者が気 づくときは、住宅を売却しなければならなくなるときで、それは住宅政策の対象外なのです。

 

建築士不在が問題か、建築士が問題か

建築設計監理業務に関し、「名義借り」をしても、しなくても同じ結果であるならば、建築士を雇用することは無駄となります。ハ ウスメーカーは無駄な経費を節約するために建築士を雇わず、適法な行政手続きを行うため、「名義借り」をして、注文住宅の設計及び工事監理を行うことと し、確認申請書の設計者及び工事監理者名は建築士です。ハウスメーカーの注文住宅の場合、設計者となるべき建築士は注文住宅の設計・工事監理業務として存 在しませんから、建築主は確認申請書に記載されている建築士に面会することはありません。注文住宅とは建築主の注文にこたえることになっている住宅で、そ の設計及び工事監理者が建築主を見たことも話をしたこともないことが、当然の業務として行われている異常な行政を国土交通省は、70年以上黙認し続けてき ました。

 

ハウスメーカーに対する建築教育

私自身が建設省住宅局で建築士法の施行の責任者であったときにこの異常状態を是正しようとしたのですが、プレハブ住宅を推進す る住宅局内の反対に遭い、行政処分に踏み切ることはできませんでした。その代り、次善の策として、プレハブ会社の営業マンと現場監督に対して、建築士の資 格を取得しなくても、建築士に準じる教育制度プレハブ建築業界に提案し、実施しました。日本建築センター、日本プレハブ建築協会、プレハブ企業をそれぞれ 教育カリキュラムの作成管理する「文部省」、プレハブ企業の教育内容を指導監督する「教育委員会」、各プレハブ会社を「学校」に見立てた「プレハブ教育制 度」を創設しました。その取り組みは、プレハブ会社の違法な業務を結果的に追認するものでしたが、それ以上のことはできませんでした。私は当時、黒川紀章 と菊竹清訓という当時の有名建築家の行政処分(建設大臣による2か月の業務停止処分)を住宅局が法律的に認めた手続きをへて、執行しようとしたことが、私 の上司が「住宅局長になる出世の妨害になる」と判断し、私を住宅局から追放し、その後も邪魔な人材とされ、最終的には住宅官僚ら放逐されたたわけです。プ レハブ教育制度はプレハブ企業に対する強制処分を行なう代わりに実施したものでした。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)

 

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