HICPMメールマガジン第831号(2019.05.20)

みなさんこんにちは、

令和の10連休が終わり、わが国の日常生活も皆さまの平常に戻ったと思います。私はこの高額な旅行費用を避けるため、連休を避けて連休後の10日間をローマ旅行に出かけました。多分ローマには過去に3回以上訪問したことがあります。しかし、そのローマ旅行は、団体の観光旅行など主体性を持っていなかった旅行のため、ローマに関する鮮明な印象を思い浮かべることができないでいました。しかし、私がもう一度、「欧米と日本の住宅・建築・都市」を比較研究し始めると、住宅、建築、都市は、人びとの思想を表現しているもので、その思想を見ることがなければ欧米に学ぶことはできないと思うようになってきました。圧倒的に欧米が日本と比較して、優れた住宅・建築・都市文明を誇っている理由は、国民の生活の視点や国の文化の視点で優れていて、それを守ってきたため、欧米社会は豊かな生活を享受しているのです。日本人がどうしてそのようになってしまったかを考えると、そこには守るべき思想が伝達されず、使い捨ての住宅、建築、都市づくりに終始してきたからです。

 

 

結論的にたどり着いた結論は、わが国の教育、社会、文化の基本が誇りを失ってしまったためのように思えます。私は住宅・建築・都市行政に関係したことから、わが国の法制度や行政を政治・経済・歴史文化という視点で観察し、取り組んできたと思い込んできていましたが、明治以来は政府の考える近代化の中で考え、第2次世界大戦後は日米安全保障条約の構造の中で自由主義国という枠組みの中で対米従属の枠組みでしか考えることができない状態に縛られてきたように思えます。そこで昨年はルネサンス建築意匠の原点であるパラディアン様式を追いかけ、今年はヘレニズム文化の原点である古代ローマとその展開をルネサンス時代のローマから見ようと出かけることにしました。

 

偶々、昨日NHKTVで徳島県で、かつて、ドイツ人捕虜がベートーベンの第9を教えた歴史が、約100年の歴史を経て、国民レベルで、音楽を通して尊重し合える文化交流が脈々と続いていることを知らされ、この生んだ文化を支えてきた人たちの教養の高さに感動させられました。ここでは現代のわが国では考えられない人間を尊重し尊敬し合う関係が、わが国にも残っていることに驚きと救いを感じました。わが国では外国人労働者を人手不足を補うことが主目的で非人道的な雇用を行なっているニュースが連日報道されています。日本人同士の間でもいじめが様々な形で行われ、自殺に追い込まれている子供たちが多数あり、今ではニュースにならないほど多数になっていると報道されています。

 

わたくしは、住宅・建築・都市行政を中心に半世紀取り組んできて、物づくりという視点でわが国と欧米とのハードな技術に大きな違いはないという「政府の説明」を信じていた時代もありました。経済的な豊かさが高まれば、人びとの欲望を満たすために、結果的にわが国の住宅・建築・都市も豊かになってきたという政府や御用学者の無責任な説明が跡を絶たず、国民は騙され続けてきました。NPO法人住宅生産性研究会を創設し全米ホームビルダーズ協会(NAHB)と相互協力協定を締結し、米国の住宅産業人が実際に米国内で行使している住宅・建築・都市技術を見聞する中で、同じ技術を「誰のために行使しているのか」の基本的疑問が湧いてきました。主権在民の自由主義を尊重する民主国家であるから、わが国と欧米には大きな違いはないと政府は説明し、それを正当化する御用学者がたくさんいます。

 

私がこの30年、「消費者を中心」に住宅・建築・都市を考えてきた欧米と、「国の経済や国の産業として住宅・建築・都市産業の利益」を考えてきたわが国とは全く違っていることを感じてきました。経済指標としては同じような数値となることがあっても、生活している人々にとっては欲望を満足させるものがあっても、国民を尊重することにはなりません。欲望の満足を高い文明水準と考えるわが国の考え方は、NHK連続ドラマ「セゴドン}に紹介された明治維新の大久保利通の富国強兵の考え方です。欧米の財政破綻国(PIIGS:ポルトガル、アイルランド、イタリー、希臘、スペイン)を住宅。建築。都市と消費者の関係で調べてみようと思って、数年かけて件分旅行をしたことがありました。

 

PIIGSの国も、わが国の国民と比較して遥かに充実した豊かな住生活環境にあることが分かりました。そのときの分析した結論は、住宅・建築・都市のためにスクラップ・アンド・ビルドされている「フローの富」では、わが国は飛び抜けて大きく、一方、「ストックの富」を維持する欧米の支出がわが国の3分のⅠ以下であることが分かりました。取得した住宅自体が「その純資産を年率4~%に上昇させている欧米」と、「20年近くで住宅投資額はゼロにする住宅政策をしてわが国」の違いです。スクラップ・アンド・ビルドをすれば、産業界の利益となり、政治献金と官僚の昇進利益という護送船団構造になります。欧米では住宅・建築・都市産業関係者も、建設業における無理無駄斑を削減しZD(ゼロディーフェクト)により財政支出を最小限化することを考えます。わが国では東日本大震災のように災害復興事業都市でどれだけ巨額な財政支出を行なって公共事業費として土建業を潤し、経済成長を実現し、巨額の政治献金と官僚の天下りを受け入れて護送船団が設けることしか考えていません。

 

かつて私が官僚として経験した護送船団方式が国民の税金を政治家と官僚の利益のために湯水のごとく使い、公共事業単価に反映されている政府内での「価格協定の話」を米国でも同様に行われているのではないかと思って米国の住宅都市省の官僚に尋ねたことがありました。しかし、そのようなわが国で行われていることは、米国では「犯罪」であり、わが国の政治家と官僚でやられていることなど不可能であると言い、護送船団方式が放置されるどころか、それがわが国の経済政策として産業界に支持されている話を聞いて、「信じられない」と言い、「日本は民主国家か」と疑問を投げ掛け、「どうしてそのような議員が選挙民に選ばれるのか」と日本を法律制度通り機能している国と信じているため、「冗談を言わんでくれ」と最後まで信じなかった人もありました。

 

建築デザイン教育に関し、欧米では様式建築の教育を行なうが、日本では明治以来「意匠建築」教育を行ない、欧米と同じ建築教育と説明されてきた。欧米では、文字を使って思想を伝えるように建築用語を習得して建築家はその建築思想を建築設計により、社会に建築デザインを通して訴える。その種建築教育では建築の形、様式、装蝕、詳細の表わす建築思想を著わす建築ヴォキャブラリーを習得し、それを駆使して建築思想を伝達しようとしている。ヘレニズムの思想を絵画、彫刻。建築に著わした古代ローマ以来の西欧建築が、ルネサンス運動を推進し。産業革命を行ない近代国家の形成に大きな力となった。建築は絵画・彫刻、文学と同じような文化的な役割りを果たしてきた。古代ローマのヘレニズムの合理的な社会思想を中世ヨーロッパに復興したルネサンスが、欧米の近代国家の礎となった。

 

私の前回のヴィチェンツァとパドバとヴェネチアでのアンドレア・パラディオの「建築4書」も、今回のローマの建築視察ツアーも、現代の西欧建築思想の源泉を確認するものです。何百年をの歴史に耐えたローマの文化は、私の期待を遥かに超えた住宅・建築・都市文化を学習機会となった。目下紀行気を整理を始めたところである。「ローマ紀行記」がまとまり次第ご報告するつもりである。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)

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