HICPMメールマガジン第844号(2019.08.26)

本連載HICPMメールマガジンの番号に誤りがありました。第1回が第843号で、第743は間違いです。

みなさんこんにちは

第2回

セレブレイションのダウンタウンとアクティブ・リタイアメント・コミュニテイ

「セレブレイション」での入居者に与えられた社会向けに解かり易い開発目標は次の3点であった。

1.入居時点で、熟成したときの満足できる住環境の提供、2.居住者の生活要求に対応し、経年するに伴い成長する住環境の形成、3.居住者の所得に見合った住居費負担及び家族の成長に見合った資産形成、である。これらの目標は新規開発の住宅地で「ハワードの叶えられなかった夢」であった。その実現を目指した。「セレブレイション」の特色は、都心が備えることに期待された熟成したダウンタウンで、商業及び業務地をディズニーが活用できる全米を代表する建築家の総意と工夫を駆使し「建築展のようなテーマパーク」を連想させる街並み形成と、人びとの賑わいを合わせて実現する計画であった。

 

施設計画と一体に高い購買力を持った消費者を導入

セレブレイションのダウンタウン計画の鍵は、ダウンタウンの上階に自由時間を豊かに過ごす生活環境、アクティブ・リタイアメント・コミュニティの賑わいを一体的に計画したことであった。それはダウンタウンの施設計画の充実と、ダウンタウンにふさわしい高い購買力を持った人たちの賑わいの一体的な実現である。計画したアクティブ・リタイアメント・コミュニティ入居者の動線を地盤面部分のダウンタウンと分離させ、ダウンタウンに来た人たちは、当時米国でつくられていたアクティブ・リタイアメント・コミュニティとは違った自由時間を楽しむ人たち(リッチ・ソサイティ)を対象に、「自由時間を優雅に過ごす人たちの生活空間」をダウンタウンに取り入れた。アクティブ・リタイアメント・コミュニティの生活者にとって、ダウンタウンはリゾートコミュニティの社交場であり、その空間自体、人に見られることを楽しむ空間である。ダウンタウンは終日とそこに居住している人たちだけではなく、外部から訪れる人たちや来客とが「自由時間都市」の会話を楽しむ場として計画されている。

個々の居住者はリタイア後の自由な時間をアグレッシブに自分のために豊かに使いたいと願っている。ダウンタウンのアクティブ・リタイアメント・コミュニティの居住者は、1年中、国内外を旅行することが忙しく、又は、フロリダでのんびり暮らしたいと考えている。リタイアメント階層に退屈させないで、「わくわく感」で満ちた空間である。居住者たちはセレブレイションに家族や友人を招き、そこを拠点に享受できるリゾートライフを楽しみ,この生活環境を繰り返し訪問し、楽しむ空間である。生活者も訪問者も口伝で豊かな思い出づくりの場として楽しみ、多くの人たちに伝えられる。ダウンタウンはいつも盛況で門前市をなし、食事をするためだけにも多くの旅行客は行列を作り、テーマパークとして集り、お土産物を購入し、出逢った人たちと雑談をし、沢山の記念写真を撮っていく。

 

ダウンタウンには計画当初から「テーマパーク」と勘違いした人たちが、ショッピングや金融機関を利用するためにも集まってきた。ダウンタウンの中心には大きな水面を持つ沼沢地が広がり、人工的に循環されている河川を囲んで、森林や緑地やゴルフ場やテニス場が広がっている。ダウンタウンの植生環境は天然ではなく、人工的に「フロリダ」やネイティブ・アメリカンの生活環境を演出し、観光客が期待する寛ぎのリゾート・フロリダがつくられている。ダウンタウン自体が時間の経過話感じなくなる非日常的な空間である。ダウンタウン自体が多くの人からテーマパークと間違われるほど商業・業務施設が充実し、魅力的なリゾートライフを享受できる。そこでは、危険性の少ない鰐の生息を認めている。

多くのリゾートライフを享受したいと願っている人々にとってダウンタウンに取り込まれたアクティブ・リタイアメント・コミュニティは、多数の友人たちを招いて楽しめる雰囲気がある。レストラン、バー、喫茶店も多数あり、商業・業務施設がコンパクトに整備され、ホテルやショッピング施設や金融機関も充実している。ダウンタウン全体がリゾートであるとともに、自宅は宿泊施設に提供できる格好のロッジになっている。湖沼や森林を景観に、ダウンタウンに作られたセレブレイションホテルに宿泊し、トラディショナルなインテリアのロビーでクラシックな演奏が楽しめる。終日ディズニーのテーマパーク巡りを楽しめる。ダウンタウンからTNDデザインのセレブレイションの街並みの散策やダウンタウンを中心に地図を頼りに建築と都市計画を見て回り、夕日を楽しむ景観の撮影もできる。

 

アクティブ・リタイアメント。コミュニティと言う「自由時間都市」

アクティブ・リタイアメント・コミュニティには大きな池や沼地を囲んで、映画館や優れたレクリエーションやエンターテインメント施設や商業・業務施設がつくられている。適正な価格の飲食と並んで、有産者階級が飲食にお金を使う豪華な生活要求に応える娯楽施設環境も演出されている。ダウンタウンには学齢期の子供は居住していないから、通常の住宅地のように子供の教育やスポーツレクリエイション施設は存在しない。しかし、この地にやってくる子供たちの遊具としてスポーツグラウンドや噴水があり、この地の歴史文化に関心を持つ生活をしようとする人には、歴史文化・人文科学のコミュニティ・カレッジもダウンタウンに隣接するセレブレイション内に併設されている。

アクティブ・リタイアメント・コミュニテイに居住する人たちは、その家族や友人たちに自宅の一部を宿泊施設に提供し、又は、ダウンタウン内にあるホテルに宿を取り、ダウンタウンのレストランやバーを使ってバカンスを楽しみ、夜風に涼んで星空を楽しめる。ダウンタウンには映画館もあれば小劇場もある。ゴルフやテニスなどのスポーツもできる。中央の池でボートを楽しみ、食事やお酒や喫茶をしながら会話を楽しめる。ダウンタウンには外部からの来客は車道に駐車することができるが、居住者は道路に駐車することはできない。すべてダウンタウンの道路から見えない車庫に駐車することになっている。日常生活感のない空間に、安全上も、景観上も、快適な環境形成ができている。

セレブレイションではダウンタウンとアクティブ・リタイアメント・コミュニテイの特殊な異質な条件を組み合わせることによって相乗効果を発揮させ、いつも多くの人たちを惹きつけ、ダウンタウン空間に求められる賑わいが維持されている。アクテイブ・リタイアメント・コミュニテイ空間としては、「テーマパーク」のように計画し経営されている。その結果、セレブレイションに居住者が計画通り定住しない以前から、熟成した賑わいのあるダウンタウンをつくることに成功した。セレブレイションの住宅地への入居希望者はセレブレイションの開発に先立って進められたダウンタウンとアクティブリタイアメントコミュニテイの開発により安心できる豊かな熟成した社会の文化生活が保障されている。その空間で得た満足が評判となり、さらに多くに人たちの心を掴み、セレブレイション全体の住宅購買予約の契約が先行し、事業は最初から売り手市場で、開発は計画通り、順調に進んだ。

 

全てのライフステージの生活に高い満足を与える住宅地開発

セレブレイションはそこに生活した人たちが、年を追って子供の成長と家族の熟成した生活を希望する願いに応えられるように、全ての世代の児童、生徒、学生に対応する教育施設が整備されている。居住者の子弟教育にセレブレイション・スクールは、社会的に優れた教育施設である評価が受けている。それは小中一貫校で、教育内容の吟味と教師の教育訓錬が行われ、学校教育内容と教員の能力を管理し、教師の再教育訓練する大学が併設されている。また、人びとの健康を管理するため、医学実績に高い評価がされているフロリダ大学医学部とセレブレイション・ヘルス(医療施設)が協力関係を締結し、セレブレイションに住むことが医療・保険・健康管理の安心を得ていると同じある。

セレブレイションに働いている人たちの業務地を職住近接させ、セレブレイション・ヘルスに隣接させ、公園の中に立つマーケットプレース(業務ビル)として、イタリアの建築家に美しい働く環境として設計させ、居住者働く場所に誇りのもてる勤務環境を整備し、撮影ポイントになっている。

ダウンタウンや都市施設・業務施設経営は、住宅地開発事業とは独立して経営されているが、事業計画的にはその機能は相互依存の関係として計画され、有機的に一体の計画とされている。一体的な環境・景観デザインがつくられている。人気のキャッチコピーは、「セレブレイションの居住者の子弟が、親に頼まれて、登校前に、徒歩や自転車を使ってミルクを買いにダウンタウンに安全に出かける」(セレブレイション・ストーリー)がセレブレイションのモデルライフスタイルとして使われてきた。

セレブレイションの道路計画は車道と歩道は明確に分離された上、歩行者優先が徹底されている。来客を迎えた自家用車のアプローチは、住宅前の歩道で来客を下車させ、車はそこからバックアレーを経由して車庫に入る。タクシーによる来客の車は、住宅の前面の歩道に面して停車し乗降する。前面道路はバックアレーに繋がっていて、ごみ収集を含む自動車サービスは、バックアレーから行われる。住宅の前面に造られた歩道は、車の横断することを禁止し、歩行者の安全を保障している。

各住宅前面の歩道は皆に利用させるもので、私道であっても道路利用の管理責任は住宅所有者に及ぶ。木の葉が歩道に貯まり、雨によって滑りやすくなると、歩行者の転倒事故も起き易くなる。歩道での転倒事故は住宅所有者の道路管理責任とされるため、住宅所有者は歩道の清掃には熱心である。歩道は住宅の敷地の歩道使用を認める(地役権)による通行が認められている。セレブレイションの住宅地では、自宅前の車道は公道であるが、来客の駐・停車が許されている。住宅所有者の自家用車が自宅前の道路に停車はできても、駐車することは禁止されている。セレブレイション開発では、各住宅の自家用車はバックアレーを通ってガレージ(車庫)や駐車場に駐停車する。住宅前面での駐停車は中古自動車駐車風景と同じで禁止されている。景観的な観点から車庫もコテッジのようにつくる義務が課せられている。

 

セレブレイションの住宅地景観計画

当初、セレブレイション計画は居住者の歩行距離を考えて「2つの都心計画」とされていた。しかし、都心は、「賑わいが重要」と判断され、集約的な商業業務施設計画が居住者の希望と判断され一中心型の都心となった。都心から市街地縁辺に離れるにつれ郊外住宅を連想させる住宅が計画され、その建築様式はTNDの住宅設計計画で事業主から用意された様式の中から、住宅購入者が自由な方式で選択する。各住宅集団が形成する住宅地の性格は様式建築が特色づける地区への帰属意識を高めている。

住宅の建築デザイン様式(スタイル)は、居住者がセレブレイションで計画された住宅様式の中から自由に選択できる。建築様式を選択することで、それぞれの住宅地は同じスタイルの住宅が集積される相乗効果により、地区ごとの様式が特徴付けられる。住宅地の個性が住宅所有者の街区のデザイン様式への帰属意識を自覚させる。「わが家(アワーハウス)」「わが街(アワーストリート)」「「わが街(アワーヴィレッジ)」の意識は、街並み景観と街並み眺望への居住者の帰属意識を形成する。

住宅地には車庫付き住宅と車庫別棟住宅とがある。車庫は住環境の一部として自然地形を生かし、コテッジの雰囲気を切妻屋根で作り、殺風景な街並み景観にならないように計画される。住宅は道路に面して造られるファサードが街並みを形成するように計画されている。バックアレーを囲んでガレージが計画され、ガレージも人目に監視されるように、ウォッチャー(監視人)の住む住宅(ガレッジハウス)がガレージの端の車庫の2階に計画され、個人のスタジオや成人化した子供の巣立ち前後の住まいとして使われている。それ以外の車庫はコモン(共有地)に面して建設されている。

セレブレイションには沼沢地も多く、沼沢地の間に歩道がつくられ、各住宅も自然豊かな沼沢地の中にあるものも多い。コモン(共有地)の中には樹木の植えられた緑地もあれば、沼沢地を取り込んだ密林を思わせる緑地や、スポーツを行なえるような広場を備えたものもある。全てコモン(共有地)と呼ばれている土地は、セレブレイションのHOA(住宅地経営主体:ホーム・オーナーズ・アソシエーション)が所有し経営管理し、その利用と経営管理は決められたルールに従って管理されている。殆どの住宅は、歩道付き自動車道路に面する街並み景観を形成する前面玄関(フロント・ファサード)と、バックアレーに入口を持つコモン(共有地)を向いた背面玄関(リアー・ファサード)の2つの顔を持っている。

 

セレブレイションの開発密度計画と住宅地経営管理

セレブレイションはダウンタウンから住宅地の外縁に向かうほど住宅は大きく居住密度は低くなり、郊外に向かっている感じで計画されている。セレブレイション管理事務所で住宅と生活の関係を聞くと、居住者のライフスタイルの違いに合った「都心生活」と「郊外生活」の2つの住宅地計画をしている。セレブレイションには家族の構成や子供の就学条件を考慮し、学校やショッピングセンター、病院や社会福祉施設の関係を考え、個人にとって最適な立地をライフスタイルに合わせて選んでいる。そこで住宅の取引と住宅の選択には、専門の不動産仲介業者が介在する。人びとは生活要求に合った住宅を探すため、入居者は住宅地の生活調査には熱心で、盛んに足を運んで事前に調査を行なっている。

住宅の取引価格は合理的な不動産鑑定評価システムによるため、モーゲージと連動した不動産取引で損失は発生しない。欧米では住宅はわが国のような減価償却資産ではない。住宅は土地を住宅加工して住環境が形成される。住環境はHOAが住宅所有者と協力して、計画的修繕と善良管理義務を果たす。HOAと金融機関は住宅所有者に資産形成の助言に従わせて住環境を保全させる。住環境の状況を調査し、評価するシステムが「ホーム・インスペクション」である。適正な計画修繕と住環境が善良管理されていれば、物価上昇以上の推定再建築費と評価され、評価額通りの純資産金融(エクイティ・ローン)が与えられる。計画修繕費用や住宅の善良管理に必要な費用は、エクイティローンが充当される。米国の住宅取引は、住宅の効用(住環境評価)と住宅の経済的価値とを等価交換するから、計画修繕と善良館義務を果たした住宅の価値は、推定再建築費と評価され、物価上昇以上の不動産投資と考えられる。

セレブレイションでは、前面道路からそこに面する住宅を見て街並み景観を楽しみ、リビングポーチにいる人と挨拶をし、雑談が出来る。住宅の居住する人にとってはリビングポーチからの街並み景観を見ることも生活の喜びであり、全面通路を通る人にその住宅の良さをアッピールすることも自分の住宅を販売する評価の重要な役割を果たしている。欧米では友人はお互いの住宅を子供同士、訪問させ合うことは普通に行われている。住民の話題の多くは住宅のインテリアを家族の生活に併せて作り直し、住宅の計画修繕や維持管理への対応である。住宅の計画修繕と善良管理義務は住宅の不動産価値評価と同じことで、住宅管理の重要性が解ると、住宅所有者に資産価値を高める不可欠な取り組みとされる。

(NPO法人住宅生産性研究会理事長戸谷英世)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です