HICPMメールマガジン第860号(2019.12.16)

みなさんこんにちは

 

18回。TND連載に、NHK特集「パラレル東京」に北米の都市防災対策の導入を

 

首都東京直下地震・火災危険地域の危険原因となる都市計画の解明

東京都心直下震災の課題は、NHK特集「パラレル東京」によると、江東ゼロメートル地域の「浸水災害」と環状6号線と環状8号線の間の木造密集市街地の「延焼火災」の2つである。その原因は、都市開発密度とバランスの取れない都市施設(道路を中心とする都市インフラ)に未整備で、その対応策の基本は「避難と救出」路の確保とされている。その原因は2つの災害経験に学んでいないことであった。関東大震災以来の震災対策をあざ笑うように襲った東京大空襲の経験から、わが国政府の防災対策は不燃化の代償に行なった建蔽率緩和による「不燃物」の促進の結果と、日本国憲法違反承知の「聖域なき構造改革」として政府が実施した平成14年都市再生緊急措置法による都市の高層高密度都市再生事業で、「パラレル東京」の舞台都市となった。時間を戻すことはできない。NHKは「パラレル東京」の原因に都市再生事業を全く問題にしていないが、この不良債権を帳消しのために、都市施設整備を伴わないで容積率を2倍以上に拡大した失政の指摘もない。

 

「木造住宅地域の不燃化」対策から、「中高層耐火建築物化の危険性」認識

世界では「タワリング・イン・フェルノ」の事故と映画化が高層建築再検討の契機となって、鉄筋コンクリートや鉄骨建築物という不燃材料の建築物を建築しても、人びとの生命と財産を守ることはできないことを理解した。カナダでは1960年、火災そのものから人命と財産を守る火災理論に直接取り組むことが行われ、ついに「木造耐火建築物を実現すること」に成功した。北米ではロンドン大火以来、都市防火は防火地域の建設によって国民の防耐火から安全な市街地を建設できると考え、都市における木造建築物の原則禁止を定めた防火地域制(ファイアーゾーニング)の建設が取り組まれてきた。その途中に発生した「タワリング・イン・フェルノ」は中高層耐火建築物により、人命と物損はさらに拡大した。その欠陥を改善する取り組みの建築物及び都市火災研究が実施され、火災成長の理論解明を基にした防耐火構造理論として防耐火区画(ファイアーコンパートメント)の形成が立法化された。

 

防耐火区画(ファイアーコンパートメント)による都市防災

林産資源が豊かな北米では経済的合理性を持つ2×4工法の普及と調和する形で都市防災性能を強化する技術開発が取り組まれてきた。わが国のように耐火建築物を鉄筋コンクリート構造を前提に、その普及促進として取り組むのではなく、火災そのものの燃焼現象は有機物の燃焼に伴う火災エネルギーによる基本に立ち戻って都市防災、建築防耐火が検討された。火災理論の原点からの構築と合わせて、巨大な市街地火災実験(セントローレンスバーンズ)を実施し、その成果に基づき、カナダのNBCにその規定が取り入れられた。その後、NBCは、1972年に米国のUBCに取り入れられた。ロンドン大火以来の都市防火対策としての防火地域(ファイアーゾーニング)に代わって、建築物の防耐火区画(ファイアーコンパートメント)が採用されることにより、建築構造材の如何に関係なく防耐火建築を造れることになった。

 

北米の都市及び建築物防耐火理論(「防火地域」から「防耐火区画」へ)

火災現象は、基本的に有機物の燃焼現象によって発生するから、火災の発生を覚知し、初期消火が重要である。しかし、人類の文明の発展に伴いエネルギー使用量は拡大し、それだけ火災の発生機会は拡大する。それを早期覚知し、初期消火することが理想的であるが、その最初の砦が壊されたときの対応が、初期火災対策と同様に検討されなければならない。ここに紹介する北米における火災対策は、1972年にUBC(ユニフォーム・ビルディング・コード)に取り上げられた。その建築防火理論が1970年建築基準法第5次改正で、米国のUBCの防耐火・避難理論として1972年法に取り入れられ、防耐火技術基準として基本的に取り入れたられた。この段階ではわが国の建築学自体の理解不足で、UBC通りの技術水準の合意と導入は出来なかったが、UBCの理論と技術の一部を建築基準法に取り入れた。

火災は人びとが生活する場所から発生し、その空間内にある火災荷重を燃焼し、その加熱エネルギーでそれを囲う建築空間の外殻を破壊し、外部に延焼する。そこで建築空間を囲う壁、床、天井が火災荷重の燃焼熱で破壊されず、開口部から噴出する火炎や熱が隣接建築物を燃焼させることがなければ、火災の延焼を防ぐことができる。欧米では「加害防止」の考え方で火災荷重を囲うのに対し、わが国では「被害防止」の考え方によって外部からの延焼回避の考え方で法律ができている。

 

建築基準法に取り入れられている北米の木造耐火建築物の技術

北米では火災荷重を、石膏ボードや珪酸カルシウム版のような結晶水を持つ材料は、火災に遭っても裏面温度の上昇を妨げる性質により、火災荷重を包み込む構造をつくり、火災の成長と延焼拡大速度を抑えることを都市・建築防火法に取り入れてきた。その結果、建築物の火災成長速度が抑えるファイアーコンパートメント(防火区画)によって火災安全な空間を有する建築物は、仮にその建築物が延焼することになっても、その建築物で火災延焼速度は大幅に食い止められ、市街地火災への拡大を抑えることになる。

わが国の伝統的な木造建築物の場合、火災発生から15分程度で建築物全体が燃え落ち、都市火災に拡大したので、『パラレル東京』の木造密集市街地火災は、その火災想定が前提にされている。しかし、北米の2×4工法木造耐火建築物と格付けされた耐火性能を有する建築物の火災は、わが国でこれまで繰り返し行われた実大火災実践でも、開口部を閉鎖状態にした建築物では、1時間半程度の耐火性能は確認されてきた。勿論その建築物の屋外に面する部分を防耐火構造とするならば、建築物は可害防止性能に加えて火災の被害防止性能が加味される。そのため、木造耐火建築物でつくられている都市は、都市全体としては、地震に合わせて火災が発生しても、建築物全体として火災に耐える力の持った建築物により、安全避難と火災延焼速度を押さえた都市・建築とすることができる。現在の建築基準法で規定している基準は、単体の建築物として耐火建築物と見なされる建築物を造る規定となっているが、火災の成長を考えた防耐火設計を進めることになれば、さらに合目的的な防耐火設計とすることができる。

 

市街地火災の延焼速度の大幅な延長

「パラレル東京」では環状6号線と環状7号線に挟まれた木造密集市街地は、「火の海」になるので、そこから避難する他なく、その際の木造火災の延焼速度は関東大震災や東京の焼夷弾爆撃と同様なことになる被害想定で「パラレル東京」の議論が行われている。

しかし、現実に北米の木造耐火建築物の技術は、わが国においても「2×4工法タウンハウス」として1970年代に2×4がわが国の建築基準法上耐火建築物としてつくることが可能になって以来、住宅金融公庫が『2×4工法タウンハウス』として普及した。そして、現在では事実上、「防耐火性能の高い2×4工法タウンハウス」も国内で建てられている。それらは米国と全く同じ「2×4工法タウンハウス」ではないが、ほぼそれに類似した耐火性能であるので、もう一度吟味し必要な修繕を施せば、米国の木造耐火建築物と同じ防耐火性能の建築物とすることができる。

 

都市防災性能を高める防耐火改修

現在建築基準法に取り入れられている木造防耐火建築物は、既存木造建築物を取り壊さなくても改修工事として、石膏ボードによる防耐火区画を後付けで形成することで可能な方法である。つまり、各建築ごとにカスタマイズされた防耐火改修工事を行なえば、それに見合った建築物の防耐火性能は向上し、建築物の防耐火性能と一緒に都市としての防耐火性能は向上することになる。それは防耐火改修計画によりその費用には大きな違いが生まれるが、建築物の延焼速度を低減させるための防耐火区画を建築物に設けると言った最小限の都市防火措置となる改修工事であれば、1戸当たり、500万円程度で十分効力ある措置を行なうことができる。

都市の防耐火性能を高めるために、既存木造住宅所有者が防耐火改造を行なうことに対しては都市計画上助成する理由も成り立つことで、例えば防耐火性能向上に必要な措置に関し、防耐火建築工事費の半額を補助金として交付するような制度ができれば、「パラレル東京」対策として取り組む人も現れることになる。それは東京を防災都市とするだけではなく、現在の住宅の品質向上をもたらすもので、現在住宅を所有している個人の資産形成や東京全体の経済対策として大きな効果を発揮することになる。

ここで提案している木造建築物に対する防耐火改修工事は、既存の住宅地震の防耐火構造性能を高めるもので、その工事は同時の住宅の省エネ性能を向上させ、遮音、断熱性能など住宅に求められる諸性能全ての性能向上を可能にするものである。最新の国米のゼロエネルギー住宅への回収もほぼここで提唱している改良工事である。

 

TNDによる2×4工法によるタウンハウス

HICPMが4半世紀に亘って取り組んできた「TNDによる2×4工法によるタウンハウス」は、高地価の市街地で、全ての住戸に優れた公園環境を提供し、高密度開発をしながら、高性能の住宅を提供する取り組みは、結果的に防耐火区画で作られた2×4工法によるタウンハウスと言うことが出来る。それは現在の全米ホームビルダーズ協会及びその会員たちが取り組んでいるゼロエネルギーを実現する取り組みに現れている。米国のホームビルダーズ協会(NAHB)は、現在の不動産環境が経済の好景気を反映して、より高品質の住宅の実現に取り組んでいるが、それは手放しで住宅価格の高騰に向かっているのではなく、次の2つの条件を満足させることで取り組まれている。

  • 住宅購入者の所得と言う住宅購買力を基本にした住宅価格。
  • 住宅の純資産価値(エクイテイ)の動向を反映したモーゲージローン、

 

「スクラップ・アンド・ビルド」(フローの住宅)からの転換を迫られる日本の住宅政策

わが国の建築不動産は土地と建築物とをそれぞれ独立した不動産と扱い、土地は恒久的に変化しない不動産と見なし、建築物は減価償却する耐用年数の有限な建築不動産の単純な複合体と見なされてきた。そのため、土地に関しては減価償却しない不動産と考えられ、建築物は税法上、物理的に減価償却する資産と見なされてきた。しかし、土地、地盤は土木工作物としてつくられるものであって、その安全を守る土木構造物も建築物同様、その構造にあった計画修繕と善良管理を行なわない限り衰退する。物理的な構造物は決して計画修繕を必要としないものではなく、宅地を形成する地盤、擁壁、地下埋設建築設備の全てが計画修繕の対象になり善良管理義務が必要となることでは建築物と同じである。

欧米ではその事実に着目して建築不動産全体を一体不可分の管理対象と考えている。その考え方が住宅を「ストック」と見なして扱う考え方である。わが国は住宅不動産のうち、建築物を有限な機関で「スクラップ・アンド・ビルド」の減価償却する資産対象と考えているが、その考え方は、建築物を「スクラップ・アンド・ビルド」の都度、建設粗利を生み出すものと扱い、その生み出す粗利の獲得に関心を集中することになる。その反面、ストックとしての資産形成の関心を持てなくしている。

 

「木造耐火建築物」と言うストック資産

本稿で扱っている木造耐火建築物の考え方は、基本的に欧米の建築不動産の考え方に立つものである、即ち、土地と建築物とが一体不可分の不動産を形成し、その全体に対して必要な計画修繕と善良管理義務を果たすことで、その建築不動産自体は全体として高級資産として取り扱われることになる。その理由は、建築不動産全体としての効用が建設されたときの状態を継続的に維持されて、建設されたときの効用を保持している。そのため、その不動産としての経済価値は、米国の不動産鑑定評価制度でも決められているとおりのコストアプローチ〈推定再建築費〉として評価される。推定再建築費は材料及び労働に使われる労務費の全てが建設時点と比較し、物価上昇率以上上昇した価格として評価されることである。欧米の住宅不動産の純資産価値(エクイティ)が物価上昇率以上に上昇するのはそのためである。住宅不動産は、そこに人びとの生活は形成され、人びとの生活と言うコミュニテイが住宅不動産に付加されることにより、推定再建築費以上の取引価格が上昇することになる。

本稿で提唱している「木造耐火建築物」は、既存木造建築物に、防耐火改築工事を付加することであるが、その結果は欧米の木造耐火建築同様土地と建築物を一体の住宅不動産と見なす建築不動産とすることで、その不動産価値も欧米同様、計画修繕と善良管理義務を果たすことで、物価上昇以上に上昇する建築不動産とすることを目指している。

 

「地域防災性能向上」と言う新しい視点

既に繰り返し説明したことであるが、本稿で最も重視したことは、この住宅不動産は建築不動差自体の防耐火性能を向上させるが、その結果として「木造耐火建築物」が集団的に建てられた地域全体の防耐火性能を高めることになる。地域全体としての防大佐性能を向上させる都市防災計画が同時に計画されることにより、地域の防災性能は急激に向上することになる。その都市防災計画は、防災効果を経済的な資金計画と経済的利益の見込みとして計上できる。それは地域としての防災性能向上を評価する方法が作成されれば、都市防災目標が決められ、その目標実現の取り組みが進み、(パラレル東京)対策と言う防災対策を進めることが効率的に行われる。その促進計画を推進するための「耐火木造建築促進費助成」が計画も考えられる。木造建築の防耐火建築指導と地域防災性能向上計画が、技術開発と計画指導としての取り組みも必要となる。

(NPO法人住宅生産性研究会理事長戸谷英世)

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