HICPMメールマガジン第733号

HICPMメールマガジン第733号(2017.08.17)

みなさんこんにちは

東京は梅雨のような毎日です、盆休みを囲週間とりまして、その間、東京の都市計画の勉強をしました。

今回も注文住宅についての第7回目を掲載します。岩波書店で米国の映画を鑑賞した帰りに地下鉄で「注文住宅」の無償の住宅建設会社紹介の情報誌があり、まさに今回連載している批判すべき事項が満載されていました。この雑誌を見て、屋内写真は、狭い空間を写真技術でよく見えますが、購入したときから購入者自身にとって建設廃棄物としてしか考えられない住宅にしか思えません。すべて洋風住宅ですが、一体どこの国の文化を継承していると言えるのでしょうか。設計者は間違いなく建築士で、建築設計教育を行なっていない日本の大学で建築を学び、設計・工事監理の実務経験なしに建築士試験に合格した人たちです。

 

連載「注文住宅」

「中古住宅」を意識した新築住宅設計

住居費支払いの問題と中古住宅として住宅を売却しなければならなくなったときの中古住宅価格は、建築主の資産問題として、住宅設計を始めるよりはるか以前に検討されるべき基本問題です。住宅設計は住宅不動産は半永久的に残る資産として、「基本コンセプト」を設定して、それに基づき住宅を設計・施工し、住宅の維持管理をする将来に亘っての「ストーリー」を作成してから基本設計が始められるものです。そこまでの検討を基に、基本設計が取り組まれ、実施設計はそれに基づいて行なわれます。実施設計は工事内容を特定し、工事費用を見積もる設計図書を作成することです。

実施設計を作成する基本条件が設計されていない設計は「基本設計」ではありませんし、実施設計を使って住宅を建設できる工事内容が決められていなければ、それは「実施設計」ではありません。「現場での工事の納まりが分からない」そして「工事費見積もりのできない」設計図は、「実施設計」ではありません。そのいずれにも該当しない図面は建築士法上の設計図ではなく、そのための設計業務は、建築士法上の「建築士が排他独占的に行う業務」とされている業務ではありません。一方、わが国の建築士が行ってきた設計業務のプロセスは以下のとおりです。この設計は建築士法の立法趣旨として考えられてきた米国の人文科学としての建築学で考えられ教育されてきた設計業務とは似て非なるもので、建築士法上の設計業務は全く行われていないのです。

 

わが国の建築士による設計業務、

米国の人文科学部建築学科で教育されている建築家が行う建築設計業務と、日本の工学教育を受けた建築士が行う設計業務を比較した結果は以下のとおりです。建築士の行っている設計業務は、用語は同じ設計でも、米国の建築設計業務とは似て非なるものです。わが国の建築士による現在の設計業務では、

(1)   基本設計に当たり「基本コンセプト」はありません。

(2)   設計仕様とする住宅の将来に向けての「ストーリー」も「ヴィジョニング」もつくられず、基本設計の条件自体が存在しないで、建築主の生活要求を設計条件に、確認申請の代願設計の元となる概略設計が始められています。

(3)   概略設計ができると、代願設計が行なわれますが、建築主の求めている概略設計が終わったら、建築主の希望を取り入れた材料工法を決められるように代願設計が始められます。

(4)   そこで代願設計と言われるものは建築基準法の確認申請に添付を義務図けられている建築基準関連法令に適合していることを説明する設計図書です。建築士法及び建設業法で定めている工事内容を決める実施設計ではありません。

(5)   確認申請用の代願図書を実施設計と称し、「材工一式」の概算複合単価で工事請負額を決定するために略算工事費見積もりが行われます。この実施設計は実際の建設工事詳細は明らかでなく、正確な工事内容を確定できない工事費見積もりも概算で、建設業法上の請負契約額にできないものです。

(6)   代願設計は確認申請書の添付図書として作成される建築基準法に適合する計画であることを示すもので、建築工事内容を特定する図書ではありません。代願設計圖書では正確な材料も労務の必要数量も単価も分からず、「材工一式」の概算複合単価を使った工事費総額の見積もりは正確にはできません。

(7)   確認申請書(代願設計)添付図書を使って工事費見積もりを行なっても工事内容(材料と労務の数量と単価)が特定できず、建築床面積単位の概算額として工事費見積もりが行われます。この概算額は重層下請け構造を使って、下請け叩きをすれば工事はできるとされた横着な単価です。

(8)   「材工一式」単価で計算された工事費概算額を、建設業法第20条で定めた正確な請負工事額であるとみなし、工事請負契約が締結され、確認申請書の添付設計図書を工事請負設計圖書と呼び、一対で、正式な「変更の認められない基本となる工事請負契約書」と見なされます。概算見積額は精算額でありません。

(9)   実際の工事は、工事に用いられる設計図書自体が工事の納まりも確定できない不正確な設計図書であるため、建設業の工事現場では合理的な建設工事経営管理(CM:コンストラクションマネジメント)ができず、資金管理、品質管理、時間管理ができず、非生産的な工事で予算管理もできません。

(10) 予算が不足し期待した利益が確保できなくなると、建築主に隠れて、工事請負契約書中の特記仕様書に記載された工事監理者による「同等品」の承認で手抜き工事を正当化しています。

 以上に記載した現行の設計・施工の業務の流れは、スケジュールどおりに業務を流していると説明されていますが、実態は実施設計が存在しないと同様な状態で、業務の条件が基本的に決められず、工事監理者は実施設計図書が存在せず、工事監理業務は行えません。施工者としても、資金管理、品質管理、工程(時間)管理ができず、計画的な工程計画(CPN:クリティカル・パス・ネットワーク)ができず、低い生産に低迷しています。その理由は、建設工事業者は実施設計図書が不十分である上、施工経営管理(CM)技術を学習しておらず、合理的な施工管理業務ができないためです。建設業経営管理として必要な工事費管理、品質管理、工程管理の3つの基本管理技術がないため工事管理ができず、工事が長引き工事資金が不足する事態が生まれています。

 

「手抜き工事」を正当化する建設行政

工事管理が適正に行われず、工事工程が遅れ、建設工事現場で予想した利益確保に不安が生まれると、工事請負契約額と添付した設計図書は変更できないので、手抜き工事が「合法的な体裁」をとって、次のように行われています。

工事請負契約書の正式書類に「工事監理者による『同等品』承認」を定めた建築主に対する背任行為の特記仕様書が加えられています。背任行為の証拠隠滅のために、工事引き渡し時に、「実際の行なった工事図面がないと建築主も困る」と言い、工事請負契約書添付設計図書を実施した「手抜き工事図面」と全面的差し替えてきました。この最後の「設計図書の差し替え」は、建設業者の詐欺・横領の証拠隠滅の背任行為ですが、国土交通省の公共事業で作り上げてきた違法な建設業法行政が、住宅産業にもそのまま適用され、建設業の不正な業務実態を容認してきました。 

重層下請けの各段階で行われている下請け工事業務は、立法趣旨及び法文で記載された通りの業務として行われていません。建築士法及び建設業法の条文は、GHQの指導に基づき米国の建築家法と建設業法を取り入れてつくられたものです。建築士法では、「建築主の住宅要求にこたえられる学識経験を積んで建築士試験に合格した建築士でないと設計及び工事監理業務を行ってはならない」と決めています。しかし、わが国の建築士は、米国の建築家のように人文科学としての建築学を学習していない上、設計・工事監理に関する実務経験なしに建築士試験を受験できます。その上、建築士試験は大学の建築教育の卒業試験のようなもので、建築士法で就業制限を定めている設計・工事監理の学識と経験を試す試験になっていません。建築士法では建築士に、設計・工事監理業務を誠実に行うことを定めていますが、肝心の設計・工事監理業務を具体的に明らかにすべき定義が学校教育上の設計・工事監理教育として明確化されていません。その設計・工事監理業務の誠実な履行義務は、日本の建築学教育に照らして明らかではありません。建築士法上では建築主の求めに的確に対応した設計・工事監理を行うことを定めていますから、現在わが国で起きているような建築主(住宅購入者)に損害が及ぶような業務は、建築士法上の誠実な業務ではないのです。上記の(1)から(10)までの不適切または不正に行われている業務の結果、建築主に大きな損失が及んでいるのです。人文科学としての建築学を学ばず、設計・工事監理技術の欠如する者を野放しにして、建築士の職業倫理を問うこと自体無意味です。

 

「住宅設計業務」と「代願設計業務」との違い

わが国の建設業が欧米同様に合理的に行われるようにするためには、建築の設計、施工関係者が、まず、正確な建設工事のできる実施設計図書を作成する能力を学校で教育され、実務経験を積み、設計・工事監理、施工管理経営を実施する能力を高めることしかありません。

現行の建築士法の施行を誤らせている原因は、設計業務の成果物である設計図書が建築士法及び建設業法で定める設計図書ではなく、建築基準法の確認申請書に添付する代願設計とされているところにあります。代願設計作成業務は建築士法上「設計業務」と区別して「その他の業務」とされています。わが国の大学の建築学教育では確認申請用の設計図書の作成を建築設計教育として誤って行なっています。

欧米の建築設計教育は人文科学部建築学科として日本の建築教育とは設計業務自体が違っているだけではなく、建築設計で作成されは設計圖書自体が違います。設計業務は建築工事を正確に行なえる設計圖書の作成です。戦前や高度経済成長以前の工事実施は、優秀な職人集団に丸投げしていれば建築物は造られたため、実施設計図書作成教育を疎かにしてきました。特に戦後、建築基準法が全国適用になり、確認済み証を受けられなければ工事着工は認められないとされたことから、「確認済み証の得られる設計図書の作成」が、大学の建築教育での建築設計教育になっていました。日本の建築教育で行っている建築確認申請書の添付設計図書のように建築基準関連法令に適合していることを確かめるためのもので、建築士法及び建設業法上の建築工事を正確に行うための設計図書ではありません。

 

2つの「顧客満足」

建築士法は1950年日本が占領下におかれていた時代にGHQの指導管理下で米国の建築士法(慣習法)を参考に作成された設計・工事監理業務を目的にした法律です。建築士法は、米国の建築家法で定められていることに倣って、建築教育と設計実務を前提に、建築基準法との関係は、設計と工事監理業務は建築士が排他独占的に行うべきことと定めています。そこで、建築士の行う設計業務は、「建築主の求め」に応じて建設するための建築工事を正確に行うことのできる設計図書を作成する業務であると定めています。その設計図書による現場の工事詳細が明確に定められ、工事費見積もりが正確にできる設計図書でなければならないと定めてあります。ここで重要なことは、「建築主が求めている満足」は、病人が医師に求めていると同様に、建築の設計及び工事監理に専門的な学識と経験を駆使できる者であることを前提に、建築士法は、「尊敬される建築士の業務」の履行を求めています。個人住宅の建設費も、その年収の5倍以上の高額です。日本ではバブル経済時代に年収の5倍であれば適正といい、8倍以上になっても住宅金融公庫は年収の5倍に抑え、それ以上は住専などの合わせ貸しで、その他の金融機関で借りることは差支えないとしました。政府の関心は住宅産業が利益を確保するためには、住宅購入者の購買力を高めることし、建設業者が販売する住宅販売額全額を融資対象にし、過大の融資に対し返済不可能であると判断されたため、融資額の約3倍の担保を抑えました。融資額を膨らませることが、住宅建設業者を満足させることであり、政府の考える「顧客満足」でした。世界中どこの国でも、「顧客満足」といわれていることは、顧客が求めている品質の住宅を、顧客の家計支出の範囲で購入できることです。欧米の「顧客満足」は、希望する品質の住宅をその購買能力で購入できることです。しかし、

わが国では、住宅販売競争が激しくなると、ハウスメーカーの住宅に差異が見られない上、どの住宅を購入しても、その資産価値は下落することから、住宅そのものに対する満足は日本ではあり得ないと考えられるようになってきました。そこで、ハウスメーカーの営業は、「販売する住宅に対する満足」から、「注文住宅を建設するプロセスの満足」に移ってきました。それは、「メイド喫茶」の人気のように、「メイド」に求めている「服従サービス」に対する満足を、注文住宅供給で顧客に提供するものです。現在、ハウスメーカーが中心になって行っている注文住宅の「顧客満足」は、住宅品質間に差異の見られない住宅自体から、顧客を「ご主人様」に持ち上げ、「メイド・サービスの設計」による満足が重要とされてきました。建築主に住宅購入により資産形成を行なうものではなく、「ご主人様」に献身的に尽くす満足です。住宅購入者からも「メイドの指名」がなされ、経営上の重要な判断になっています。

(733号第6回)

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