HICPMメールマガジン第738号(2017.09.20)

HICPMメールマガジン第738号

みなさんこんにちは

ボークスの内海さんのご支援でユーチューブの第1号がまとまりました、大変うまくまとめられており関心しました。ぜひご覧になってください。その上でご意見をお寄せください。

https://youtu.be/KBTQt5H6_so

連休は雨でしたので、連休後休暇を取って、秋晴れの台風一過、あの信州の「無言館」に出かけ館長窪島誠一郎さんのお話と天満敦子さんそのご主人シュトラスバリウスによるヴァイオリン独奏会を聞きに行ってきました。無言館とは、絵画を目指した学徒の遺作を陳列したもので、かねてより出かけようと思っていたところでしたが、ヴァイオリニストでよく演奏を聴く天満敦子さんのお話で、最もヴァイオリンがいい音を出していてくれるスタジオということで演奏を聴きに出かけました。窪島さんのお話を聞き、絵画の展示を見て、この美術館は、戦争で画家になる夢を奪われてしまった画学生の遺作展で、よく「反戦」画廊というようによくこの絵画展が東日本大震災の支援に持ち出されたとき、被災者が「この展示会を見て、生きる希望を見つけることができた」言われ多という話が伝えられています。このことにかんし、窪島さんが説明されたようにこの絵画展にはどこにも「反戦」の主張はありません。

私はこの画家と同じように今できる最大の力を書いた気持ちこそ、東日本大震災の被災者や私たちに「今、何をしなければならないか」を教えてくれる美術館だと思いました。私には絵画の能力はありませんが、このが学生たちの作品に日本の画壇の権威が、その絵画に専門家としてのコメントをつけてあげたら、その遺作を見る人にその絵画の評価をしてみる人の鑑賞に援助をしてくれて、その作品が絵画を目指す人にいろいろな参考資料を提供することになれば、少しは報われるのではないかと思いました。

 

今回も「注文住宅」のお話をします。何か戦没が学生の作品紹介みたいな気持ちで、「今自分にできることを、ともかくやろう」とすることを教えてくれます。私がメールマガジンでやっていることも戦没が学生が絵画に取り組んでいたときと同じことを行なっていることが分かりました。

 

第738号「注文住宅」第10回

不正確な設計業務しかできない建築士

建築士法で、「設計・工事監理の業務を排他的独占業務として行う規定の根拠」は、建築物は土地を加工して造られる恒久的な不動産(都市環境)で、住宅購入者にとって高額、かつ、その生命財産に重要な関係があるからです。建築士が米国の建築家と同様な学識・経験を有していることが建築士法で定められました。しかし、建築士の実態は、建築士が法に定められた業務を実施する学識経験を有しないため、建築士法で定められた設計・工事監理業務を、建築士法第18条に定められた立法の趣旨どおり建築士「建築士の業務」として行うことができません。

 

実際の建築士法の運用は、立法趣旨に合わない学識経験を有しない建築士試験合格者に建築士資格を与えました。その建築士が建築士法で定める設計図書を作成せず、それに代わって、大学の建築学教育から始まって「代願設計」を行い、特記仕様書で定められた「背任行為」を正当化する工事監理を行なってきました。それを、国土交通省による建設(建築士法、建設業法、建築基準法)行政では、その法律上禁止している業務を、適正な設計・工事監理業務と見なした公共工事を行い、政治家、官僚、土木建設業界が利益を抜き取る「土建国家」を建設してきました。

 

公共事業の不正な業務を当然な業務のように欺罔して行う産業の構造が、国土交通省の住宅・建設行政として実施されてきたため、住宅建設業者は建築主に不利益を与える住宅をつくり、住宅が資産ではなく建設廃棄物になってしまっているのです。住宅・建築・都市行政では、建築士を建築士法で定められた学識経験を有する技術者と見なしたため、建築士が実施した設計・工事監理業務を正確に行われた業務と国民を欺く結果になりました。それでもGDPを最大化するならばいいじゃないかというのが政府や建設関係者の主張です。そして、わが国の住宅・建築・都市政策は、GDPを最大にする経済政策の主要な担い手として、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返す住宅・建築・都市づくりを行なってきました。むしろ、スクラップ・アンド・ビルドを推進する設計・工事監理を推進する技術者として、政府は建築士を排他独占的業務の担い手として保護をしてきました。

 

建築物の安全と衛生に関しては、建築主事が建築基準法に照合して安全確認をしてきました。建築士の行うべき設計・工事監理業務に対し、建築士法が社会的に求めていることは、建築主の要求に応える適法な建築物をつくることです。それ以上に、その立法の経緯を考えて建築士法の条文を読めば、高い学識経験を駆使し、国民の健康で文化的は建築を造り、国民の資産形成に寄与することは、建築士法の立法趣旨と条文上から明らかです。世界に目を向けてみても、住宅建設費は個人の所得と比較して比較にならないほど高額なもので、それを疎かに作ってはならないことは言わずもがなのことです。しかし、戦後70余年、建築士に対して建築士法が求めてきたことが、建築士の資格と業務のいずれに対しても、立法趣旨の条文の規定も疎かにされ続け、国民の利益に反する不正業務が横行しています。

 

設計業務成果である設計図書は、建築士法で定めたとおりの学識経験を具備した技術者ではなかった場合、大きな損失をもたらす恐れがあると判断されたため、建築士法の立法に当たり、建築士しか担えない排他的独占業務に定められました。そのため住宅設計を担う人は高い学識と、設計と工事監理に関する高い術無経験がなければならないということで、その試験は難しいのです。しかし、わが国の建築士資格はその低い合格率のため、難関と言われ、建築士は建築士法の立法趣旨どおりの学識経験尾豊は技術者と思わされています。しかし、実際の建築士は、設計・工事監理に必要な学識・経験を持たない日田たちで、基本設計も実施設計の作成もできない人たちです。

 

それにもかかわらず、建築士資格を得た者にしか担えない設計・工事監理業務を行わせず、国家資格を与えられた「建築士の特権」により、「優秀な技術者」と周囲を誤解させ不正な利益を手にしてきました。建築士は設計・工事監理に関する建築士法が定めている能力を持っていないため、当然のように建築士の設計の結果建築主は大きな損失を被ってきました。

 

建築士による国民の住宅資産価値毀損

ハウスメーカーでは、無資格の客引きを行っている営業マンが「名義借り」で設計業務は行なっても、建築士が設計業務を行っても大差のないと判断し、「名義借り」による営業マンが設計業務を行い、建築行政も、その事実を認め「名義借り」の違法を容認しています。そのため、建築士法上の立場に立てば、建築士は国民の期待に応える業務が行えず、消費者に大きな損失を与えてきました。しかし、社会的には、建築士が設計・工事監理業務をしてもしなくても、建設される建築に大差はありません。建築士法を持ち出して建築士資格者の業務を問題にする必要もないと考えているのが、政府の建築基準法行政であり、それをみて社会一般も同じ見方で、違法を容認してきました。

 

建築士法で規定した学識・経験を有する建築士が存在しない結果、建築主の建築物を長期的な資産形成の視点に立った基本設計が作成されず、社会的に短期的寿命しか持たない建築設計しか設計されず、消費者に損害を与えてきました。建築主の住宅資産を設計する場合、長期的視点で建築設計を進める技術を建築士が保有しないため、社会経済的に見て寿命の短い住宅建築しか設計できていません。そのため、欧米のように住宅を取得することで個人の資産形成ができる住宅がつくれないできました。

 

わが国では新築住宅販売のときには、「差別化」により、広告・宣伝、営業・販売にかけた費用を直接工事費と欺罔し、販売価格でかかったサービス経費のすべてを直接工事費として回収する高額な独占価格販売を行ない、住宅金融機関はその独占価格全額の融資を行ってきました。しかし、住宅自体の実際の価値は、住宅市場での需要と供給によって決められる価格で、本来は、直接工事費です。そのため、住宅購入者が住宅を手放さなすときには、中古住宅価格は直接工事費以外が過半を占め、中古住宅は半額以下になり、建築主に大きな損失を与えてきました。そのため、広告宣伝、営業販売に費やした費用は新築住宅販売で消滅し、中古住宅ではついていけませんので、中古住宅では新築住宅で広告宣伝、営業販売にかけた費用は中古住宅販売価格についていけません。

 

本来の建築士は、建築主の要求に沿って、資産となるべき住宅を設計しなければなりません。設計とは、工事用の設計図書を作成する図面だけではなく、建築士法がモデルにしている米国の建築家法のとおり、建築に関する歴史観と建築思想を持ち、歴史・文化的視点に立って優れた住環境として持続する住環境を創造・設計する使命を持った職能(プロフェッショナル)でなければなりません。欧米では建築家(アーキテクト)をプロフェッショナル(職能)と呼んでいますので、日本の有名建築家集団である日本建築家協会の建築士たちが自分たちも職能だと言い、欧米の建築家の主張をそのまま持ち込もうとします。広告宣伝、営業販売にかけた費用を直接工事費と欺罔している日本の建築士は、米国ではその業務実体は「詐欺」行為であると言って禁止しています。政府が住宅産業を建設サービス業と言っている説明は、米国では「詐欺」であると言っています。建築士は詐欺師です。

 

建築士の建築知識

現在、わが国で、建築士にその作成した住宅設計の工事費を見積もるように要求しても、正確な見積もりのできる建築士は皆無に近い状態です。その設計図書といわれるものは、確認申請書添付図書であって、それを作成した建築士に工事現場で工事監理業務をするように言っても、工事監理業務はできません。日本の建築士は実施設計が作成できません。彼らの実施設計では、住宅に使用する材料の種類も工事納まりを決められないため、工事費見積もりができません。その理由は、下請け業者に渡された設計図書(代願設計)では具体的な工事詳細はなく、その設計図書では工事が設計図書どおりに行うことの工事監理は不可能だからです。実際に行なわれるべき工事詳細が設計されないと、工事業者も工事ができませんし、工事費見積もりもできません。工事費見積もりをしないと請負工事費も決まらず、工事請負契約も結べません。そこで、工事業者は「材工一式」の床面積当たりの概算工事単価(坪単価)を使って工事費を見積もりますが、その見積額は概算額であって正確な見積もりではありません。わが国の工事請負契約に添付される設計圖書は、建築工事を具体的に確定できない実施設計図書と呼ばれる「代願設計図書」によって起きています。

 

確認申請書は、建築主が工事を計画したとき、その計画内容を建築主事に設計図書として提出することを求めています。設計図書は確認申請時点で計画したことを設計図書にまとめて提出するもので、その段階で未決定の内容は確認申請書に記載する必要はありません。記載したくても実際に決定していなければ記載できません。建築基準法の確認申請では、それでよいと定めています。しかし、現実の確認申請は、建築主維持や確認検査機関の建築主事資格を有する者から、違法に、請負契約書に添付する設計書と同じものを提出することが求められ、未確定の設計内容まで記載することが求められています。建築基準法が理解されていないためです。

建築基準法で定めている確認申請書は、申請時に建築計画をした意思表示として提出することを求めていて、計画内容の確定を求めてはいません。実際の建設工事は、工事の確定できる実施設計がまとまらないと工事請負契約は締結できません。また、工事請負契約なしに工事をするわけにはいきません。建築主は確認申請後、計画内容を変更しても、変更確認申請の手続きは不要で、後は工事請負契約内容としての設計圖書を「工事検査確認」として建築主事が審査するのが建築基準法の立法時の法律の構成です。代願設計をどれだけ正確に書いても、それで工事監理(モニタリング)はできません。もちろん工事管理(マネジメント)もできません。

 

工事請負契約書締結のための工事費見積もり

社会的には、建築設計技術・能力が欠如し、設計段階で工事内容を特定できない不正確な設計図書であっても、これしかないため、それで工事請負契約を強行する必要自体が生じてきました。設計圖書として不正確なものでは材料も労務も数量が確定せず、工事費見積もりはできません。そこで設計圖書が不正確でも、概算額を計算できる概算見積もり方法生み出されました。それが「材工一式」の略式単価で概算工事費を見積もる方法です。わが国では建築士は学力も実務経験もないため、正確な実施設計が作成できなかったので、その概算額を正確に工事費を見積もった見積額と見なして、一挙に工事請負契約を締結させる建設業法違反を強行させたのです。内容の確定しない設計図書を使い、「材工一式」の概算額単価を使って概算見積もりを行い、それを基に工事請負契約を締結することは建設業法違反です。

 

しかし、日本では、概算見積工事費でも、重層下請け構造を前提建設工事は実施できると考え、概算見積額を正式な工事見積額と見なし、正式の工事請負契約が締結されてきました。そこでの単価は実際に支払われる材料費及び労務費より十分高額な単価として設定されていたため、下請けを厳しく締め付けることで、殆どの工事は概算額で計算した工事請負契約額の範囲で実行できていました。そのような不確かな工事費見積もり額で工事請負契約は建設業法違反です。

 

建設業法違反の原因は、建築士が実施設計を作成できないことに原因がありました。工事内容を確定させる実施設計を作成できないため、その後の工事見積もりを不可能にし、工事請負金額の見積もりを、概算工事費としてしか計算できない状況を作ってきました。そのような学識経験の不十分な建築士を育成する制度が現実です。建設省は、1950年に建築士に必要な学識経験を行う学校教育も実務も存在しないのに、それが存在する前提で建築士法を施行したことにすべての不都合の原因があったのです。

 

戦前までは、わが国では職人制度がしっかりしていました。そこで、設計及び工事監理業務が不十分でも、実施設計が正確にできていなくても、熟練技能者が工事を確実に実施してくれました。そのため、実施設計圖書が未整備で設計が無責任で、「材工一式」の概算見積りで工事は納められると確信していました。しかし、職人技能制度が崩壊し、実施設計において工事納まりを明確にしない限り、現場での工事はできない状態が生まれてきました。実施設計図書が作れず、概算見積もりと概略設計で工事請負契約を進めたところに合理的な工事のできない問題あります。現在の時点で建築士法上の責任関係を明確にするためには、建築士に実際に工事のできる実施設計を作成させることです。しかし、有名建築家がいても、学校教育で実施設計を作成する教育を行なえる教師ではないのが現状です。

 

違法を正当化する建設業行政

確認申請書の代願設計を建築士法及び建設業法上の設計図書と見なし、また、建築教育上も、確認申請用の設計図書を建築設計図書と見なして教育してきたことに不正な設計・施工がまぎれ組む原因があります。製造業としての建設業は、建設工事に使う材料と、加工組み立て労務によって構成される工事の基本である実施設計が基本です。その実施設計が存在せず、不正確な設計図書と概算工事費で、重層下請けにより、矛盾を下請けに押し付けることができると間違った判断がされ、建設現場の生産性が破綻し、「手抜き工事依存」が拡大してきました。

 

かつては、日本の建設工事現場の技能は伝統的な技能者の徒弟制度によって担われてきたため、建築工事では工事の最終的な納まりは実施設計されなくても、現場の職人に任せておけばよいという安心感がありました。しかし、戦後の混乱は材料が払底し、技能者も仕事を失い、職人の技能の伝承が失われました。そのため、実施設計図書が正確につくられない限り、合理的な工事は望めなくなってきました。しかし、そこで建設工事は、工事費見積もり同様、「材工一式」で下請けに丸投げされる方法が拡大し、それは建材業者の望む方法でもあったのです。

 

熟練技能に代わるものとして、建材業者が指導権を握って、プラモデル方式の簡単な加工組み立てを非常に多くの建材において導入してきました。そのため、建設現場は単能工により場当たり的に対応しても、一定の工事を実現できるようになり、建設現場から熟練技能者は消滅する方向にあります。単能工による技能は、安い単価で使い捨てられるもので、その技能は既存住宅の修繕や維持管理に有効な技能にはなり得ません。日本の建設業は重層下請け構造で組み立てられているが、それは、欧米のように建設業経営管理(CM)技術が普及していないためです。

 

国土交通省は、「建設業」をこれまでの産業分類を恣意的に変更し、「建設工事業」ではなく、「建設サービス業」と言ってきました。その理由は、下請け業者に工事を下請けさせ工事を監理することよりも、下請け業者に仕事を分配するときの「口銭」(粗利)に関心が向けられた管理のためです。建設業者による工事管理は、下請けの都度、粗利を抜いて実行予算させていく工事の管理です。公共事業の場合、建設業者はその粗利をすべての中間下請け業者から賛助会費(営業経費)として巻き上げ、それを政治家への政治献金や官僚の天下り経費としてキックバックすることが、建設サービス業としての主たる業務と考えられるようになってきました。建設業者の主たる関心が、下請工事をすることよりも、中請けとして粗利を抜くことに関心が移ってきたことに原因があります。

 

公共事業の場合、予算単価自体が財政緊縮で厳しくなり、物価の上昇や重層下請構造を使っても、工事請負額での工事で期待通りの利益を生み出せなくなりました。すると、工事請負契約額に定められている設計圖書と工事請負額の矛盾は、請負工事人が利益を減少させる以外に工事を実施できない矛盾に追い詰められました。その矛盾の原因は、中請け業者が粗利だけを抜いて、さらに下請けさせることとともに、建築士が立法趣旨に違反して工事内容を特定できる実施設計を作成できず、工事費見積もりが正確のできなかったことにあります。そこで持ち出した利益確保の方法は、「手抜き工事」です。

 

「手抜き工事」を建設業法上「適正工事」とする方法が国土交通省の建設業法の施行として行われました。この公共事業で行ってきた方法は、公共事業という財政(国民の税金)を政治家、官僚、建設業界が重層下請けによる粗利の分配によって、業界全体を潤す「社会福祉事業」であると、護送船団内部では皮肉交じりに口にされます。しかし、100億円の5層下請けの公共事業の場合、70億円は粗利の分配で消え、直接工事費として支出される割合は30億円程度です。

 

住宅産業においては、1976年から始まった住宅建設計画法の時代から、「持ち家」政策をハウスメーカーによる住宅展示場を営業の中心に、広告・宣伝、営業・販売を中心に置く経営に変化してきました。そして、その流通業務自体にかけるサービス費用を販売価格で回収する経営が始まり、そのサービス業務の経費が販売額の過半数を超える額なってきました。住宅販売額の60%をも占めるサービス業務費を直接工事費と欺罔して住宅販売を行ってきましたが、政府はその経営が建設業法に適合していると欺罔し、それを追及されぬよう建設業法に違反して、建設サービス業という新しい産業分類を持ち出しました。(以下続く)

NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)

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