HICPMメールマガジン第739号(2017.09.25)

HICPMメールマガジン第739号(2017.09.25)

みなさんこんにちは

ユーチューブを作成してくださった内海社長(ヴォークス)から、ご連絡をいただきました。

本日9/22()アップロード完了致しました。下記URLで公開開始しております。

https://youtu.be/pkjTIuEMCEc

以後、早い時期に動画へのいざないをFaceBookSNSとの連携告知と進めさせていただきます。

 

さて、私は、金曜日には夕方、雨が降り始め、傘をさして帰路につき電車を乗り換え多摩センターの自宅への夜道を歩いて帰宅したのですが、気額から血が流れ、手のひらには傷ができ、血が流れておりました。帰路に事故に遭ったという記憶もなく、帰宅し胸が殴られたように痛く、唾液も飲み込むと胸が痛みました。そんな経験初めてで、事故に遭遇した記憶もありません。病院には専門医がいらっしゃる火曜日に診察を受けることにしていますが、病院勤務の娘に話したところ、「一時的な記憶喪失で、打撲を受けたのではないか。」とのことで、痛み以外に仕事には影響がありませんので、普通の勤務をしています。キツネにつままれたことで、皆様もお気をつけなさってください。

『注文住宅』の続きを掲載します。

 

『注文住宅』

建設行政による「手抜き工事」正当化

わが国では工事請負契約書の正式書類としては、工事請負額を定めた工事請負契約書、工事設計圖書、特記仕様書の3つの図書で構成されています。欧米では、工事内訳明細書や工事費見積もりに際し、施工者が建築主に工事内容を質問し、設計者がそれに答えた議事録も契約正式文書に入れます。わが国の工事請負契約書では「材工一式」の概算工事費で計算した概算見積額を、正確な見積工事費と見なした工事請負契約書と、工事費見積もりを行った根拠となる実施設計図書(通常は、「代願設計」)の2つの書類が変更のできない基本契約書です。その2つの契約書の矛盾は、重層下請け構造の中で「下請け叩き」で解決する運用で形成れています。しかし、重層下請け構造は工事を下請けに転嫁させるだけではなく、その過程で請負金額は中間下請けが抜き取る粗利分だけやせ細っていきます。矛盾を下請けに押しつけていく方法は、潤沢な請負金額があるときには可能でも、重層下請けで中間下請けごとに10~15%ずつ工事費(請負い金額)はやせ細っていきます。建築主に追加更生予算を求めることもできず、末端下請けに損を強いることができなくなると、「手抜き工事」が行われます。公共事業の場合、政治家や官僚が請負工事の最初の段階で利益を先に奪い取ると、重層下請けの過程で、粗利の分配で期待できなくなり、工事費予算の不足は「手抜き工事」に走ることになります。

 

顧客をぬか喜びさせる設計手法

現在では、顧客の夢を膨らませ、その夢を手抜き工事のできる予算を、請負契約当初から隠しておく方法が広く行われてきました。実際の工事では使わない高額な材料や工法を、建築主には「高級な工事をする」と期待させ「仮押さえ」をしておくと説明し、設計仕様に取り入れ工事費見積もりの対象にします。実際に設計者には「仮押さえ」材料を使う意図はなく、材料に資料は集め検討対象にしますが、採用できない条件を調べ注文はしません。資金が必要になったときには何時でも仕様を変更し、不足する資金を捻出します。その不足費用を捻出する財源が、「隠し財産」と業界では口にする「仮押さえした高額な材料仕様」です。設計段階で高額な材料や施工方法を使うことで建築主の希望を叶える夢を膨らませ、高額な予算を準備しておき実際の工事は安くて済む材料や工法に変更する方法です。それを建設業法違反であるにもかかわらず正当であるように変更する方法として、工事請負契約書の正式文書に「特記仕様書」を加えます。「特記仕様書」には「建築主と施工者のいずれの利益にも与しない」工事監理者の判断の形式をとって、「手抜き工事」も特記仕様書の手続きで行えば許されるとしたのです。

建設業法は建築士による建築設計図書は不正確なものしか作成できないことを前提に、歴史的に設計図書に建設業者の不正利益を隠してきました。「材工一式」の概算額で工事請負額を見積もることで、施工業者は潤沢な予算を恣意的に使い、大きな利潤を上げてきました。公共事業請負建設業者は「材工一式」の概算によることで、政治献金や行政機関の天下り人件費の支出など建設業の利益確保のうまみがありました。つまり、概算額で工事費見積もりを行うことは、重層下請け構造を利用して、利益を確保する建設業界として譲れない既得権益を形成していました。それは国家が公共事業予算の執行を適切に行うために、会計検査院が検査に使う単価自体が、公共事業主体の発注単価を用い、実際に直接工事費として支払い段階の単価を対象にしませんでした。

 

国家ぐるみの不正容認の行政

設計図書通りの工事を工事請負工事額でできなかった場合、施工業者が損失を被らないで不足する費用を捻出する方法と、それを犯罪にしない方法とが検討されました。工事請負契約書として確定した設計圖書でも設計内容を変更し材料費と労務費を削れば工事費は簡単に削減できます。しかし、それは工事品質を落とすことになりますから、「手抜き工事」になります。「手抜き工事」を「手抜き工事ではない」と欺罔することしか解決の途はありません。公共工事では、「欺罔が見破られても言い逃れできること」が求められ、できれば「欺罔してもよい」という「お墨付け」を与える検討がなされました。この検討は建設業法を所管している建設省で公共事業の施行を通して、護送船団として政治献金や官僚の天下り経費を捻出するための取り組みとして長年かけて検討されました。その結果、「手抜き工事」を建設業法上の正しい工事請負契約の履行であると正当化する欺罔の方法実施する方法が検討されました。事実上、不足する工事費を工事内容の引き下げて捻出するわけですから、「手抜き工事」を「手抜きのない工事」という理屈を付ける必要があります。「手抜き工事」をしても民法上および刑法上の背任にならないとするためには、「工事内容が請負契約通りであること」を建築主及び施工者のいずれの立場に立たない中立第三者に立場にある工事監理者に、「専ら技術的判断」として「同等品」と承認させれば、良いという理屈を構築したのです。わが国では工事監理者が、第三者監理が徹底されておらず、これまで設計・施工一貫の業務が広く継続し、「工事監理」(モニタリング)と「工事管理」(マネジメント)が明確に区分されていませんでした。それは日本の建設業の風土として、「モノづくりの施工にはお金を支出しても、設計や工事管理という技術業務にはお金を出し惜しむ」という風土があり、請負工事として支出した総額の一部を設計及び工事監理業務費として支出することが行われてきた長い歴史があります。設計及び工事監理業務を担当する建築士が、施工業者から建築士事務所の賛助会員や協力企業という口実で資金を受けていた現実との関係で不正追及の矢面に立たされて、下手すると「凌ぎきれない」と指摘されていました。そこで考えられた方法は、行政事務の流れをぶつ切りにして、その流れの中では適法であると判断できるようにし、工事監理は「独立した技術的行為」としたことです。

 

米国の対応:設計業務の定義

わが国の建築士法、建設業法のモデルとされた米国で、上記の日本で行われていると同様なことがどのように行われているかを調査しました。米国では材料と労務を確定する実施設計図書が作られ、基本的に「一層下請け」で、建設業者は、「材工分離」で材料と労務の数量を明らかにし、そしてそれぞれの材料の数量と労務の技能別数量と技能者の労務単価を乗じて直接工事費を見積もります。そこで見積もられた額は設計図書で決められた工事をするために必要で、それを重層下請けによる下請け粗利の累積によって痩せさせることはありません。建築家は実施設計をするとき、そこで「採用した材料と工法」とを「設計内容として特定すること」が欧米では「設計すること」とされています。建築家は自ら作成した設計図書に設計で定めた材料と工法に対応する設計単価を入れて設計見積を行います。設計見積に利用する工事単価は、材料と工事ごとに実情の単価実績を基にしたデータベースを提供している資料供給会社があり、そのデータで設計見積もりが行われます。建築家が建築主に納品する設計図書は、その設計図書に基づく工事費見積もり(設計見積)が、建築主の求めている工事費で建築できる設計である証明と見なされ、適正に設計された設計業務と見なされます。

 

設計の定義:設計内容を工事として特定すること

建築主はその設計図書で工事をする場合、「入札」、または、「見積もり合わせ」で建設業者を選ぶことになりますが、その際、建築主は設計図書と設計見積とを施工業者に渡し、それを基に、建設業者として実施できる工事費見積もりを行うことになります。工事業者は設計図書を基に施工計画を立て、建築工事を構成する下請業者(サブコントラクター)に実施させる詳細な工事に分解します。その後、自ら詳細工事ごとの見積もりを行うとともに、下請業者に見積もらせます。建設業者の工事責任者(スーパーインテンダンツ)は、過去にその建設業者が行った工事を基にしたデータベースを作っていますので、それを基に工事費見積もりを行うことになりますが、同時に、実際に下請業者が請負ってくれるかの確認をします。建設業者はその施工管理技術と下請業者の施工技術を生かして、設計見積額よりも安い価格で実施することができます。通常、建設工事業者による見積もり額は、材料や労務の仕入れ条件等建設業者の得意とする材料や工事方法により、設計見積額に比べ10~20%安くなります。工事業者は工事費見積もりを行なう際に、建築主に対し合理的な工事を行なえるよう、設計内容の説明を求めます。建築主は設計者の建築家を同席させて設計図書の内容を説明させ、工事業者の質問に回答させます。その説明内容が建設業者の工事費見積もりの前提とされるため、建築主が主催する説明会の設計者と施工者の設計内容の「質疑応答」や「説明資料」は、その後の請負契約書の正式資料になります。その中には工事期間の天候の条件、資材置き場の条件、その他すべて工事費に影響することが取り上げられます。設計圖書はできている訳ですから、設計者でなくても工事監理者が立ち会ってもよいことになっています。工事請負契約は建設業者の工事費見積もりを基に決められます。工事業者が作成した工事費の見積内訳は工事請負契約書の内容とされます。実際の工事に当たって設計図書と工事内訳明細書との間に矛盾があった場合には、工事内訳明細書が優先するとされています。設計業務とは目的とする建築物を確実に実現するために材料と工法とを特定することは、建築物の品質を材料と工法を特定することで、それは工事金額により工事実現を確実にすることです。米国のこの考え方はわが国の建設業法第20条にも反映されていますが、建設業法の施行は建設業法の規定に違反して行われています。

 

「不正」容認する官僚機構

政府は建設業法の施行に当たり、工事監理者に「同等品」と欺罔することを承認させることを明記した「特記仕様書」を正式の工事請負契約書の書類にしました。しかし、不正工事のより根源的な原因は、わが国では実施設計圖書が存在しないで、代願設計で工事請負契約を締結する建設業界の慣行です。わが国では(代願設計)を実施設計と称し、それに基づき「材工一式」の略算単価を使い、概算見積りを行い、そこで計算した概算工事費総額で精算すべき正確な工事請負契約額とし、その請負総額を確定したことです。曖昧な代願設計を基に概算工事額で収まるよう、工事請負契約書を変更しないで、材料と工事を操作し工事費をまとめる方法がわが国の建設業行政です。代願設計と概算見積額による工事請負契約額の矛盾解決には、正式工事請負契約書として特記仕様書が必要であるという論理です。

工事請負契約書の内容とされる設計図書を工事請負契約額で確定する工事内訳明細書(工事見積書)を、日本では工事契約書の正式書類から外し、参考資料扱いにしました。これは実施設計において材料と工事を特定する原則を放棄するものです。請負工事費を変更しないで、施工業者に損失を与えないで、設計図書で定めた材料で工事を行おうとしても、工事請負契約書で締結した契約総額で実施できない場合には、建設業者の利益確保が優先されます。そして、工事請負契約額で施工可能となる範囲の材料と工事に工事内容を変更する安易な不正(手抜き)に向かい、それを工事監理者に「同等品」の工事と承認で操作させる正当化させる欺罔の方法が、合理的とされてきました。その背後には、請負工事費の決定が、不確かな実施設計図書に基づいて作成された工事見積額の不確かさで契約が行われたことと、その責任を工事請負業者に押し付けきれないという公共事業における政・産・官癒着の親方日の丸の(国家予算にたかる)建設業者本位の判断があったからです。

 

米国と日本との対応の違い

工事請負制度の設計・施工の主要な違いを米国と日本の比較で簡単にまとめると以下のとおりです。

(1)・米国では設計業務として施工詳細まで明確にした実施設計図書が設計業務として作成される。

・日本では確認申請書に添付する「代願設計」が正式な設計図書と見なされている。

(2)・米国では、建築詳細まで明確にした実施設計を基に材料と労務の数量と単価それぞれについて明らかにして工事費を見積もる。

・日本では代願設計を使って、「材工一式」の概算単価で概算工事費を見積もり、それを正式な工事請負契約額にする

(3)・米国では、正確な実施設計図書の存在が前提になり、建設業者は建設業経営管理技術(CM)が駆使され、工事請負契約額を尊重し工事管理(マネジメント)が行われる。設計図書どおりの工事が工事監理業務(モニタリング)と並行して、工事生産性を高めて実施されている。

・日本では、工事監理者に「同等品」承認をさせることで、不足する工事費と利益を不正に捻出し、建設工事業者は原則として、責任を被らない。

本来は工事請負契約書の基本とする実施設計図書を正確に作成するところに戻らなければなりません。しかし、わが国の建築設計業務が、正確な実施設計を作成できる技術者教育がされていないことと、合理的な工事費見積ができないため、生産性向上という合理的な手段で利益を追求するのではなく、工事監理者による「同等品」の承認で、利益を捻出しています。正確な実施設計を可能にするためには、学校教育として実施設計図書作成教育を正しく行うことです。併せて、国家として、工事の標準化、規格化、単純化、共通化を進め、米国で見られるように工事共通仕様書の全国統一を行ない、下請け工事として行なう工事詳細設計の標準化とその技能訓練が全国的に統一し、共通化を進めます。そして、それに併せて、建設業経営管理技術を施工技術の基本として、業界全体で履修し、工事の生産性を高めます。

建設業の体質改善方法

住宅産業の請負工事において公共事業の建設業法違反を打ち切り、欧米に倣うことが必要です。米国の建設業者は学校教育でCM(コンストラクションマネジメント)を学び、工事生産性を高めることで工事費を引き下げてきました。しかし、わが国では建設業を製造業と認識せず、生産性向上が必要な建設業経営技術とされず、学校教育、建設業業務としても取り組まれていません。日本では、工事監理者による「同等品」承認として建設業行政が公然と容認している「手抜き工事」の不正は、行政行為として行われ、修正は不可能になっています。しかし、建設業経営の実態は刑法上の背任行為であると国土交通省が認識し、建設業界が建設業の利益のために消費者を欺罔してはならないと自覚すれば、改革できる問題です。その方法は、まず、建築士法の立法時の趣旨に立ち戻り、建築学に対する設計教育の内容を、欧米のような人文科学としての設計建築教育に改正し、正しい基本設計と実施設計を作成する設計者及び工事監理者を建築士として育てることです。そのためには建築教育改革は避けられません。そのうえで、建築士に行わせる設計・工事監理業務を欧米の建築家や建築技術者の行なっている設計・工事監理業務に変更することです。

しかし、わが国では、建築士法の立法趣旨どおりの法律施行が行われていると間違っていることを承知で、違法状態を建築士法上、適法と見なしてきました。建築士法の立法趣旨と条文に違反した既存の建築士制度による建築士の既得権益が守られているため、誤った設計・工事監理業務の不正を欺罔する法律解釈の矛盾が現れています。また、建築士法で定める建築士資格要件となっている建築教育および実務経験が行われておらず、建築教育を実施している大学から、批判意見が全く出されていません。大学の建築教育の再検討を求める意見が大学当局から出されていないことは、大学教育自体の危機だと思います。それは単に建築士のための建築教育だけの問題だけではなく、わが国の建築教育に疑問を投げかけるものです。建築技術者教育が間違っていることにより、国民に甚大な被害が及んでいるのです。政府はこの事実を知る立場にあり、その弊害を認識しているにもかかわらず、政府も大学も社会もそれを放置してきました。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です