HICPMメールマガジン第800号(2018.09.19)

みなさんこんにちは

 

連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。今日は、前回に引き続き、「TNDを実現するための都市計画法と建築基準法の文理解釈」(第2回)を送信する。

 

予定建築物の審査(都市計画法と建築基準法)

今回はPUDによる田園調布における都市計画法上の手続き「開発許可」の続きを中心にお話しする。ここでお話しする内容は1968年都市計画法が制定されたとき、建設省が最も苦労した「予定建築物」の登場によって、土木行政と建築行政の反目対立を解決した解決のカギについてである。この苦労して造られた「予定建築物」は、関係者のだれからも尊重されず、その活用さえ、立法関係者が必死の思いで取り入れた「予定建築物」の立法趣旨通り行われていない。

 

ここで取り上げる都市計画法に初めて登場した「予定建築物」は、都市計画法の開発許可の対象とされるものではなく、開発行為を行なう目的として予定された建築物を言う。そのため、都市計画法において予定建築物自体を審査することはなく、都市計画法では予定建築物を前提にして開発行為として行うことになる内容を都市計画法による開発許可の対象としている。つまり都市計画行政では予定建築物は開発行為の条件、又は前提であるが、開発行為の内容ではないので、予定建築物は審査で来ない。

 

都市計画法では予定建築物を受け入れることのできる都市開発が行なわれたことを審査し、開発許可を行ない、それが完了したことを完了公告として行った後、建築基準法による確認申請事務が始まることになる。都市計画行政としては、予定建築物を行政指導する権限はなく、予定建築物を前提に、それを受け入れる開発行為をすることに対応する行政が行なわれる。しかし、開発許可権者は事実上開発行為の内容として予定建築物の計画を都市開発の地盤整備として審査することになる。

 

 

「TNDを実現するための都市計画法と建築基準法の文理解釈」(第2回)

 

田園調布におけるボウクスによるTNDのPUD開発と都市計画法及び建築基準法の適用

田園調布で現在計画中の開発計画は、米国で一般的に取り組まれているタウンハウスによるTND開発である。その計画は土地と建築物(タウンハウス)を一体不可分の建築不動産として建設することにより住宅環境を形成しようとするもので、その開発計画は「タウンハウス」(隣地境界線に接して計画された戸建て連続住宅)として計画された。日本の長屋「一つの建築物を複数の住宅に区分した住宅とは異質の建築物であるが、日本の建築行政では長屋と見なすこともある。

 

建築不動産が完成し都市施設として利用されているすべての過程で、都市計画法及び建築基準法(常態規定)に適合するため、以下の各段階で適法に作られるように計画することが開発許可(都市計画法)及び確認(建築基準法)の法律の許認可の手続きとして求められている。

 

(1)  開発許可の段階(開発許可申請及び完了公告段階)が適法であること

(2)  建築確認申請段階(確認申請及び孤児完了済み所交付段階)が適法であること

(3)  建築物の維持管理段階の建築物が適法であること

 

ボウクス社による田園調布の2×4タウンハウスの計画と開発許可と確認事務

この計画は全体で10戸未満のタウンハウス(予定建築物)を「1団地(ユニット)」に計画するもので、そのための土地整備を行なうための開発許可と、開発許可の完了公告後に予定建築物の建築計画を建築基準法による確認を申請することになる。そのために開発計画は、この地区の開発許可基準に合わせて、隣地境界線との関係する部分で構造安全を確保することが開発計画の重点となる。

 

都市整備と予定建築物

この計画ではユニット(一団地)の構造擁壁と予定建築物への自動車の導入及び駐車、並びの倉庫等のサービスを地下構造物として建設することが、予定建築物の支持構造となるため、その擁壁の建設がこのユニット(一団地)部分の「区画形質の変更(開発行為)」として行われる行為となる。

 

この地区の景観規制上重要な点は、隣地との接合都の景観調整で、連続的な景観となるようにユニット(一団地)の計画をすることで、ユニット(一団地)内部の土地の工程計画に関しては規制の対象ではない。このような土地整備計画をこのユニット(一団地)の開発行為(区画形質の変更)として行なう。

 

このユニット(一団地)の開発許可の工事の完了公告を受けてから、予定建築物の建築が建築基準法による確認事務として行われる。予定建築物は開発行為による土地整備で宅地造成と一体的に建築された地下工作物を支持基盤として、地下工作物上の建築物として建築されることになる。

 

土地整備事業としての地下工作物の建設

地下工作物として建設される地下工作物中に、建築物用途の建築空間を造る場合には、地下街の例に倣って、地下工作物中の建築物は、その建築物部分に対し、構造安全以外の技術内容に建築基準法を適用させることになる。そこに特殊建築物の建築空間を造る場合以外には確認事務は発生しない。

 

わが国の建築基準法および都市計画法は、上記の3段階ごとに分かれて適法であることを開発許可、建築基準法による確認、住宅地の健全な維持管理するため、以下の住宅建設の事務手続きを、各段階ごとに適法である計画を明らかにする資料を整備し、適法な事務を行なわなければならない。

 

開発許可と確認の行政手続きと適用する都市計画法と建築基準法の技術基準

まず、上記(1)の業務は、「予定建築物」を明らかにし、予定建築物を支持するための地盤の開発に対する開発許可申請書を作成し、それに対する開発許可を受け、完了公告を受けなければならない。開発許可は、開発許可権者が完了公告を交付することで終了する。

 

開発許可は、予定建築物を建築できる「土地の整備」までの業務を言い、開発許可は開発許可権者による完了公告により完成する。建築主事、又は、指定確認検査機関による建築基準法の確認事務は、開発許可を根拠に確認事務が開始される。開発許可の完了広告なしに確認事務を開始することはできない。

 

予定建築物の建築と確認申請

次に、上記(2)の業務は、開発許可に引き続いて、完了公告された地盤の上に建築する「予定建築物」を建築するための確認申請書を作成する。確認申請書には開発許可された「開発許可の完了公告書」を添付することで、確認申請の対象となる「予定建築物」が構造上安全に建設されたことの証明とされる。

 

開発許可で築造された「予定建築物の地盤上」に建築される建築物は、開発許可された地盤面での構造安全性は許可されているので、確認申請建築物が開発許可申請された「予定建築物」と同じ建築物であることを確認し、確認申請書に提出された建築計画の審査を行なう。確認審査は申請部分(予定建築物)に対して確認審査を行う。開発許可部分の地盤は開発許可の対象とされた都市施設で、都市計画行政の法律監督下にあり、建築基準法の法律領域にはないので、確認事務ではなく、確認審査は行えない。

 

2つの「シビルエンジニアリング」

わが国の大学の工学部、建築工学と都市工学、土木工学とは、いずれも欧米ではシビル・エンジニアリングである。わが国では都市工学、土木工学は、開発欧米のシビル・エンジニアリングと基本的には同じ技術であるが、建築工学ではその構造、材料の理論と実践が土木工学と異なるため、同じ鉄筋コンクリートを使用しても、土木工学と建築工学では、異質な材料・構造工法、材料と見なされ、同じ鉄筋コンクリートであっても、建築工学と土木工学は、それぞれ違った技術基準が適用されている。

 

そのため、建築行政は、開発許可を行なった行政の結果である都市計画行政領域にまで、建築行政が踏み込んで安全審査をしなければならないと考え、「開発許可にまで踏み込んで安全審査をしようとする」法域を越境した過去の誤った重複審査を行なおうとする事例が行政上の混乱を引き起こしてきた。

 

都市計画法の施行、建築基準法の施行

確認行政で予定建築物の地盤面の安全確認をすることは、都市計画法の開発許可行政の法律領域となるため、建築基準法の法律の施行領域としては認められない。その理由は、開発許可は都市計画法の法域の問題で、建築基準法は都市計画法で扱い開発許可の内容には適用できないからである。「建築物は、基礎を含んだ上部構造の全てで、建築基準法行政は建築物全体に及ぶ」という主張もされてきた。

 

都市計画法で開発許可を行なった開発で、建築基準法の審査対象は「予定建築物」である。予定建築物は開発許可で土地整備された工作物に建築されるもので、土地整備された地盤又は工作物であるから、その上に基礎を「屋上屋」として設ける必要はない。建築物には、「高架工作物上の建築物」、「地下工作物上の建築物」上での建築物があり、建築物の基礎が建築物の定義上、不可欠と言う事実はない。

 

地盤面の開発の法域と需盤面上での予定建築物の法域

都市計画法は予定建築物の地盤面の開発を法域として施行しており、地盤面が予定建築物を安全に支持することで足りる。そのため、その場合は、建築物は開発許可で築造された地盤上に造られるので基礎は不要である。そのため、高架工作物上の建築物や、地下工作物上の建築物同様、開発許可された地盤面上の建てられる建築物には基礎をつくる必要はない。

 

一方、地下街は、地下工作物内に建築空間を造る工作物で、建築基準法の適用は地下工作物内につくられる建築物に限定され、地下街を収納している地下工作物の構造安全性に適用が及ぶものではない。逆に、開発許可で築造した地下工作物に関しても、その空間を建築空間として利用するときには、地下工作物内の建築物部分に関し、構造耐力に関する規定以外の建築基準法が適用される。

 

わが国で行われている法律違反の都市計画行政

都市再生事業で行われた「ラ・トゥアー・代官山」(東京都渋谷区鶯谷)の事例は、PUD開発を都市計画法により開発許可と建築基準法による確認で行なった事例である。そのときの開発許可権者は渋谷区長(都市計画法上:東京都知事)で、開発許可による完了公告の存在しない(都市計画法違反)状態で確認申請と工事完了公告が行なわれ、その後この建築物の1階(地下と表示)されたメイン廊下が無届で違反増築工事により建設された。この開発行為では予定建築物は登場せず、地盤を8メートル近く切り下げながら、開発許可前の地盤が開発後の地盤とすることで、建築物の高さ制限を騙した。

 

住友不動産が事業主で、日建設計が設計者として開発・建設された「ラ・トゥアー・代官山」は、第2種低層住居専用地域(高さ制限12m)の土地の8階建て高さ24mのマンションで、いずれも法定建蔽率及び法定容積率違反のマンションを建設した。このマンション建設は開発許可(都市計画法違反)及び建築確認(建築基準法違反)で行政事件訴訟が争われ、裁判所は3審とも処分庁の主張を認めた。その後完成したマンション自体が建築基準法の実体規定に法定容積率、建築物高さが2倍近く違反している理由で「取り壊し」訴訟が行なわれたが、司法は東京都知事の主張を全面的に追認した。

 

都市再生緊急措置法による都市計画法及び建築基準法の改正が、都市・住宅環境を破壊しているという訴えが全国で多数提起された。HICPMは住民を守るためこれらの行政事件訴訟に関係したが、悉く敗訴した。この種の都市計画法及び建築基準法違反の行政処分が行政事件訴訟として行なわれたが、都市再生緊急措置法自体が憲法違反の立法として企業の利益を拡大することを推進するものであったため、司法は行政処分を追認し、住民の訴えは悉く却下された。その基本が「聖域なき構造改革」による都市再生緊急措置法による憲法違反に規制緩和政策で出会ったためである。

 

現在の都市計画行政で行われている開発許可では、都市計画法の規定を悉く蹂躙し、行政により法律の解釈を法律の文理解釈と逆な解釈として行うことが日常茶飯事として行われており、それを是正する「建築審査会や開発審査会」に訴える途や、行政審査会の不正と司法に訴える司法の場に持ち出した「行政事件訴訟」で争う途も、事実上閉ざされている。政治が憲法蹂躙をして政治目的を行政が「統治行為」として強行する政治が行なわれているためである。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)

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