HICPMメールマガジン第802号(2018.09.26)

みなさんこんにちは

 

今回は前回に引き続き、「TNDを実現するための都市計画法と建築基準法の文理解釈」(第3回)をお届けしする。

制定された都市計画法は、法律を適正に施行できる環境が整っていないまま施行された結果、その矛盾を各所に露呈させることになった。その代表的な問題は都市計画法の中で中心となっていた開発許可制度が、都市計画法第4条第12号で定義した「開発行為」を制御することができず、都市計画法に定義された「開発行為」に違反した「開発行為」の定義を「開発許可の手引き」で行なった。手引きは、東京都から公式文書として発行され、それを国土交通省が認め、違法な開発許可が行われることになった。なぜこのような事態が引き起こされたかという理由を政府も、行政関係者の説明もない。

 

私はその理由を1968年、住宅局建築指導課市街地建築指導室に在籍し、都市計画法立法時点の建設省内での都市局と住宅局の議論の渦中にいた経験と、その後の都市計画法をめぐる行政事件に関係して、以下のような経緯によって起きたと結論付けた。

  • 英国の都市農村計画法を日本に持ち込まないと日本の都市は将来的に手のつけられなくなるとの問題意識があり、英国の都市農村計画法の立法を日本で行うことで救われると政府が信じた背景があった。
  • 住宅局は、都市計画法が制定されれば、建築基準法の集団規定は都市計画法に吸収されると判断し、都市計画法の制定に反対した。政府は都市計画の既定路線を変更できなかった。
  • 英国の都市農村計画法は、「土地と建築物を一体の不動産」として扱うもので、その法律を簡単な手直しで日本の都市計画と建築行政に納得できる法律に修正できなかった。
  • そこで都市計画法と建築基準法とをつなぐものとして「予定建築物」と言う用語が登場したが、「予定建築物」の用語の定義自体未だに明確ではなく、いまだに曖昧である。
  • 都市計画法は、市街化区域において、都市施設の整備を前提にして開発行為を許可する法律構成になっていたが、市街化区域の都市施設の整備水準が都市計画法施行に対応できなかった。

 

現在の都市計画法

現行の都市計画法は、都市計画の立法の趣旨目的と基本的に違って、市街化区域と市街化調整区域の境界を事実上混乱させ、大規模開発は地価が抑えられている市街化調整区域中心に行なわれ、市街化区域では都市施設整備が進んでいないため、「開発許可不要」またか「開発行為不存在」とする都市施設整備に触れないようにしない限り開発はできず、その結果、「開発許可の手引き」がまとめられた。開発許可を行なわないで建築物を確認事務(「建築行為」で行う開発行為は、「開発行為」ではないと言う詭弁)だけで建築してきた。その結果、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域と2分して、秩序ある都市の整備という都市計画法の立法の趣旨は後退し、「開発許可制度」が都市画行政によって骨抜きにさせられてしまった。開発行為と言う都市計画法に登場した用語が、立法当初から蹂躙された。

 

都市計画法行政自体が、実現不可能な都市計画法に基づく行政であるため、都市計画行政担当者に都市計画法違反の行政事務を行なわせるわけにはいかないので、違法な「行政指導」と言う都市計画法に違反している「都市計画行政指導」を、「開発許可の手引き」をはじめ多くの行政指導で法律違反の行政実例を作り実施してきた。それはわが国の都市計画行政及び建築行政が、かねてから法律に違反したことを行政指導として実施してきた法令軽視の行政風土が、法律違反の行政指導を正当化してきた。法律をきれいごとでまとめ、政令、省令、告示、行政指導通達と法律を執行するための行政が、法律を歪めてきた行政になっているためである。しかも、わが国には、日米安全保障条約の関係で、司法は統治の安定のため、行政を追認し続けてきた。

 

「法治国」の実態

わが国では以前から、政治家や行政官という権力を行使する立場にある人が、「俺が法律だ」と言って横暴を極めた話は無数にある。国会議員の選挙で投票用紙を持たないで投票所に行った中曽根総理大臣が、投票所で「俺が中曽根首相だ」と言って投票をしようとした話が新聞に掲載されたことがある。法律に定められた法手続きを守ることが、法治国の大前提で、法律とは、法手続き法定しているものと言ってもよい。法律の趣旨目的に合っていても、法律で定めた手続きが踏まれていなければ、その行為は法律違反である。都市計画法や建築行政では、その逆のことが横行している。それは法律の趣旨・目的に違反していても、法律で定めた手続きだけが踏まれていれば、立法趣旨や立法目的に違反していても、その処分は適法と見なす扱いである。日本国憲法第9条のように、立法趣旨や立法目的に違反して、牽強付会な法律解釈で、軍備を保有することを容認する解釈が独り歩きする例がそれである。

 

法律解釈の相違と正しい法律施行:適法な建築物と適法な建築行政

建築主が都市計画法及び建築基準法に照らして適法な建築物を計画することは国民の義務であり、計画された建築物が建築関係法令に適合するように建築させるべく適法な確認を建築主事や指定確認検査機関が行ない、特定行政庁が建築基準関係法令に適合するように建築行政を行うことはその義務である。

建築計画が適法である判断が建築主、建築主事、特定行政庁により相違することはいくらでも発生する。建築主事の確認や特性行政庁の建築行政により、法律上の判断は法律上の効力を発行するが、効力を持ったからその法律処分の判断が法律上正しいわけではない。わが国の建築関係法規は全て成文法であり、その法律上の判断は法律の合理的な解釈(文理解釈)に基づいて行われなければならない。

 

そこで適法な法律解釈を巡って文理解釈を戦わせることになる。処分庁は文理解釈で建築主を説得できなくても行政処分が強行されている。その場合、処分庁の行政判断に納得行かぬときには、行政不服審査法に基づき、行政庁の上部機関である建築審査会に対し「行政不服審査請求」を行うことになる。建築審査会は行政機関の体系に含まれる機関であるので、行政庁に偏った審査となる恐れがあるので、その場合の救済方法として、建築主は行政処分の不当を司法の場に訴えて、司法判断を行政事件訴訟として司法に提訴する。行政事件訴訟は三審制度であるため、判決に納得できないときは控訴できる。

 

法律の「有権解釈」

訴訟をしなくて、法律専門家や国に対し法律の解釈を求めることが行なわれている。法律を施行している行政担当者や法律の専門家が、「有権解釈」と称して法律の解釈を示すことがある。そこで言われている「法解釈」や「有権解釈」と言われるものは、正式な権力の裏付けのされた法解釈ではない。法解釈を、国家権力を背景に行うものを「有権解釈」と言っているが、それは内閣法制局長官が法律の施行をめぐって行政機関の長の質問に答えてに示すものである。しかし、行政機関の長「大臣」から公文書委で内閣法制局に適正な法施行のために問い合わされる場合以外に行われない。一般国民からの質問や行政処分と無関係な質問に対し、内閣法制局長官が、「法律の有権解釈」の回答をすることはない。

 

各省大臣や局長級の法解釈は、行政機関の担当機関の法解釈は、権限行使としては有効な「狭義の有権解釈」であるが、正式な国家としての法律の正式な「有権解釈」ではない。法解釈の正誤は法律の文理解釈を通して合理的に明らかにされなければならず、行政機関の関係者はもとより、弁護士、行政書士、法学者や一般の市民も文理解釈を行うことはできる。その正当性は法律の合理的解釈によって明らかにされ、地位や権力(職権)によって決められるものではない。その例外は司法上の判断(判決)である。

 

都市計画法に規定された開発許可と建築基準法に規定された確認は、すでに多くの関係者が行政法解説で説明しているが、いずれも「私的な解説」に過ぎず、関係各省監修として民間の出版社から発行されている法律の解説書は解説者の個人的な解説である。現実には行政機関の処分を巡って原告と処分庁の間で始められる行政事件訴訟を通して審理され、その判決は国家としての有権解釈(司法判断)とされる。建築主事や特定行政庁という処分庁が行政上行なう法律判断は、「処分庁の法律解釈」である。

 

確信をもった行動を

開発許可をめぐる行政事件訴訟では、処分権者の適法性から処分手続きの適法性を含む開発許可処分の内容に関し、これまで多数行政事件訴訟で争われてきたが、都市再生緊急措置法を基にした都市計画法及び建築基準法に関する行政処分においては、行政処分が一方的に正しいとされ、住民の訴えは退かされてきた。それは都市再生緊急措置法が、国家の緊急事態にあって憲法の審査を受けないで「行政行為論」という超法規理論に影響されているためである。

 

国民の住宅・建築・都市は、欧米ではいったん建設したものは、基本的に未来永劫まで修繕と維持管理を適正に行うことで個人財産であっても、社会国家の住環境を構成するものとして大切に守られている。そのため、住宅・建築・都心全てに関し、その計画段階で社会的に計画内容を吟味地、その計画を何円も社会的にたなざらしにすることが都市計画法の手続きとして定められている。そしていったん都市計画決定した計画は社会全体で尊重することが行われている。その出来上がった住宅、建築、都市に対してすべての国民が意見を言い、社会的な検討対象にされる。

 

そのような社会であるためには、国民が自ら納得して法律を理解し、法律の文理解釈を駆使してその主張を行なうことになる。行政官依存ではなく法律を使って国民がその住宅・建築・都市に対する主張を行なっている。法治国は国民が主体性をもって立法、行政、司法をリードすることでなければならない。今回3回に分けて連載した「都市計画法と建築基準法の問題」は、法律解釈を行政の言いなりにするのではなく、主権在民の立場で理解し施工するようにすることを説明したものである。

「NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世」

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