HICPMメールマガジン第759号(2018.02.19)

みなさんこんにちは

平昌オリンピックはメダルラッシュでTVに縛り付けられて睡眠不足気味です。

メダルを取った人も取れなかった人も私たち視聴者に、大きな感動を与えてくれました。4年も場合によっては10年も20年もかけて努力してきた結果がオリンピックで争われていると考えると人生そのものを凝縮してみる思いです。

私も先日78歳の誕生日を迎え、まだ大学を卒業して官僚になったときとほとんど変わらぬ人生として振り返って見て、「国民に住宅政策によって幸せな生活を送れるようにしようと希望して足を踏み込んだ住宅政策・住宅産業の途で、結果的に現在日本の住宅政策・住宅産業を見ると、私にとって達成感のない人生に思えます。

その人生を振り返り、もう一度社会人になったときの初心に帰って学ばないといけないと考えたところでした。半世紀以上取り組んできた欧米の住宅産業からの設計・施工・住宅地開発・住宅地経営の技術移転はまだ道半ばどころかスタートラインにも立てないでいます。

現在の段階でするべき取り組みは、健康管理をしっかり行なって、家族や仲間に迷惑をかけないようにすること、自分が実現しようとしたこと、それができなかったことをしっかり整理して、もう一度初心に帰って取り組める物は取り組むとともに、失敗を皆が繰り返さないように私の過去の失敗をしっかり総括し、同じ道を進もうとする人に役立てるようにすることと思っています。

 

『君たちはどう生きるか』

HICPMの会員で、昨年までHICPMビルダーズマガジンに寄稿されていた若本さんから、照会されていた吉野さんの祖父が、現代全国でベストセラーになっている『君たちはどう生きるか』の著者であることを知らせられ、早速その本を読み始め、半分ほど読んだところです。面白い本でみなさんにも購読をお勧めしたいと思っています。この本は、現在の私の生き方を振り返る一つの契機『君たちはどう生きるか』を与えています。

私はこれまでの半世紀の人生は、住宅・建築・都市との関係の人生で、欧米との比較で痛感してきたことは、欧米では国民が住宅を購入して、健全な不動産投資同様のキャピタルゲインが得られているのに、日本では国土交通省が公言している通り、住宅を取得した消費者は、例外なく、その購入価格の半額を50年以内に失うことになるという違いが説明されています。その理由を日・米・欧の住宅政策と住宅産業比較をし、『フローの住宅、ストックの住宅』として出版しましたが、その基本的な原因に迫り切れていないことに気付きました。積み残しのない生き方をしなければと思っています。

 

実施設計と建築工事費の見積もり

建築物を造るとき、造ろうとする建築物の基本的な設計図面と実際の工事用の実施設計図面がないと造る人は造るわけにはいきません。基本設計がなく、実施設計がなくても、代願設計(確認申請用の図書)があれば確認申請はでき確認済み証は交付され、建築工事を実施することはできます。しかし、代願設計では工事費見積もりを正確にはできず、建設工事の詳細は決まっていませんので、どの現場でも現場工事の納まりで大変苦労しています。このメールマガジンで連載している「注文住宅設計」は、実はその問題を皆さんに認識してもらいたいと連載しています。建築物に使用する材料と工法(技能)が建築物の最終的な品質を決定することになります。工事費見積もり(直接工事費)はその建築物の価値を具体的に確定するものです。その意味で実施設計は最も重視される作業で、その重要さは、建築物に使用される材料と工法(技能力)を確定するということになります。日本の建築教育では代願設計を建築設計と誤って教育し、欧米で教育している人文科学教育(ヒューマニティーズ)としての基本設計と建設工学教育(シビルエンジニアリング)としての実施設計教育を行なわず、その結果、正確な工事請負金額の正確な見積もりもできない設計により、住宅産業界に大きな混乱を与えてきました。

 

住宅の個性を表現するもの:住宅のデザイン

実はそれ以前に、住宅設計において「機能や性能」はその時代を反映して、誰が設計し・施工しても、産業界として需要と供給の関係が働き、時代と社会の要求に合った住宅を供給してくれますが、「住宅のデザイン」という住宅の外観の個性は、建築家に依る人文科学的な歴史認識に立脚した創作業務によるもので、設計者の学識経験がなければごまかすだけで、本物は造れません。

建築家は歴史文化と人々の生活を学び、そこから優れたデザインを創作するためには、豊かな建築用語(アーキテクチュラルボキャブラリーを学ばないと、その建築のデザインとして文化を発信することはできません。日本の建築士教育と欧米ではアーキテクト教育とが基本的に違っていることに大きな問題があります。その日本と欧米の建築士とアーキテクトの違いを関係者が理解できるような単行本『日本の建築士、欧米のアーキテクト』を出版すべく、目下現行の最終的構成段階に入っています。

この本は日本の「建築士」と欧米の「アーキテクト」とは 基本的に学んでいることとその能力とにおいて基本的に違っていることを私の過去半世紀の経験で理解したことを明らかにすることにしました。平たい言葉で言えば、「建築士」と「アーキテクト」とは比較することはできないほど、違っています。

その結果、わが国の国民が資産価値のない住宅をもたされていることを具体的に説明することにしました。その中で、欧米で最も重要視されているデザインが、日本で最も粗末にされている理由も説明しました。現在のところ、この本は、私の半世紀の研究成果で、新年度に入ってから出版される状況です。

 

 

連載中の「注文住宅」を以下に続けます

 

住宅政策とは、産業・経済本位であるべきか、消費者本位であるべきか。

政府の住宅政策は産業中心の経済政策として住宅産業と住宅金融機関は繫栄しているため、わが国では住宅産業政策が順調であると説明されてきました。しかし、わが国は「フローの住宅」政策で住宅産業本位であるための現象で、消費者の立場から見たときの住宅産業は決して納得できるものではありません。日本以外の国の「ストックの住宅」政策では、住宅に居住している人にとって住宅は居住者の生活を豊かにするものではならないと考えられています。「フローの住宅」政策は、住宅産業の利益を中心に見ているのに対し、「ストックの住宅」は住宅所有者(消費者)を中心に行っています。つまり、日本の住宅政策では、消費者問題は政策から捨象され、政府の政策責任ではなくなっています。

 

日本の住宅産業本位の住宅政策

日本のように、住宅ローンが返済できなくてその住宅を売却しようとしたら、住宅を手放してもローン債務だけが残り、住宅をローンと清算すれば負債しか残らない国は、世界中に日本以外に見当たりません。政府は、「住宅を所有することで資産を失った人は、住宅ローンの融資条件を読んで納得してローンを組んだ人で、日本には文盲はいないので、消費者は、納得の上、資産を失ったわけですから、すべて住宅購入者の自己責任である。」と言って憚りません。少なくとも、これまでの住宅政策は、住宅を所有している国民の未来の生活を見通した住宅政策ではなかったことは明確です。そのような住宅を持つことで国民を貧困に追いやる政府の政策を、日本ではそれを「住宅政策」と呼んでいるが、世界の住宅政策とは違っています。それは住宅産業が利益を上げ、国家が経済成長をするための、「フローの住宅」政策です。日本以外の欧米先進国の住宅を購入した人が、その住宅によって個人の資産形成をする「ストックの住宅」政策とは「似て非なる政策」です。

 

国民(消費者)を豊かにするとは限らない経済成長

既に日本の住宅政策で説明してきたとおり、日本の住宅政策は住宅を所有し、そこで生活する国民を中心に置いた政策は行われていません。住宅産業のために需要を保障し、住宅産業が供給した住宅を国民に購入させる住宅政策が、「建て替え政策」や「住宅ローン緩和政策」によって国民の購買力を拡大する政策が実施されてきました。そのような住宅政策に対して、政府の住宅政策に政策提言をする立場にある住宅政策審議会は、政府が実施してきた「フローの住宅」政策を科学的に研究分析する目を持たず、その言いなりの政策追認を繰り返してきました。さらに、その経済成長本位の政策を煽り、住宅政策は「経済成長に寄与する」と説明してきました。経済成長政策の手段として国民に価値の低い住宅を高い価格で購入させる住宅政策の結果、住宅産業と住宅金融機関は法外な利益を挙げる一方で、国民の住宅資産は減少し、貧困化が進んでいいます。

 

国民(消費者)の立場に立たない住宅政策決定に関係する学識経験者

その事実を住宅関係の学者・研究者、メディアは、政府の準備した政策を客観的な立場で批判せず、または、大学や産業界から政府が選考した学識経験者たちは、住宅対策審議会で政府の用意したこれからの住宅政策として現状追認の答申を、恥ずかしげもなく、国民の求める住宅政策として提案してきました。そして大学での住宅・建築・都市関連の教育も政府の住宅政策を追認して行われてきました。また、住宅の調査研究に携わってきた学者・研究者の多くは、政府の住宅政策を説明することを学問教育や調査研究と勘違いし、その批判をしようとしませんでした。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)

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