HICPMメールマガジン第801号(2018.09.28)

みなさんこんにちは、

 

(MM送付間違いのお詫びと修正)2018.9.26.MM第802号をお送りしましたが、その前にお送りする予定の第801号を、安倍三選の自民党総裁選挙に心を奪われ、送付し忘れていましたので、本日、MM第801号をお送りいたします。MM第799.800.801の3号で、「PUD開発を日本で行う場合」の都市計画法と建築基準法の取り扱いを紹介しました。現在の日本の都市計画法の法施行は、開発許可を行なわないで建築を容認する都市計画法第37条違反が行われています。

 

安倍晋三自民党総裁選挙で露見した日本の民主政治

9月20日、自由民主党総裁選挙があり安倍晋三が選出されたが、安倍首相の森友学園と加計学園問題で、官僚機構が政治家の移行に合わせた行政判断に従わされたことで自民党の中にもモラルハザードが拡大し、政治の横暴に対する無力感が拡大し、長い目で見て民主国家の危機を多くの人たちが感じることになった。そのため、安倍政治とはどんな政治で、その未来がどうなっていくかをお話ししようと先週はその原稿を書いていて、メールマガジンを送りできませんでした。私は戦前のドイツのワイマール憲法下に台頭したヒットラー政権や、山本権兵衛内閣のシーメンス事件を重ね合わせて考えていました。

今回は前回に引き続きの解説です。

 

「TNDを実現するための都市計画法と建築基準法の文理解釈」(第3回)をお届けします。前回「予定建築物を登場させることで、開発許可と建築物の確認を行政事務として連続的に実施する新しいシステムをご説明しました。都市計画行政と建築行政を、連続的に時系列を追って行なうために、「予定建築物」の登場は、まさに、都市計画行政著建築行政の矛盾を解決するためのハイライトと言ってよい立法事件であった。「1968都市年に計画法が無事誕生できた主役」として「予定建築物の登場」であった。予定建築物は、建設省事務官がその無いお知恵を絞って生み出した都市計画法の抱える矛盾を解決した法律用語であったが、土木、建築のいずれの行政からも尊重されなかった。

 

都市計画の問題を考えるとき、その背後には大きな歴史文化があり、それはわが国固有の問題であるが、わが国が取り入れる欧米の法令の場合、その問題には、欧米の歴史文化が法令の後ろに張り付いている。その歴史文化を解明することなしには、法令をわが国に導入した後においても、法令の本質を正しく理解することも運用することもできない。その理解のずれが法令施行上の紛争の原因になる。

 

「TNDを実現するための都市計画法と建築基準法の文理解釈」(第3回)

その1:1968年制定された「都市計画法」の関係法令の立法経緯と条文の解説

 

都市計画法(土木)と建築基準法(建築)の行政領域

1968年に作製された都市計画法案は、英国の都市農村計画法を下敷きにしたもので、英国の都市農村計画法の「計画許可」制度を「開発許可」の書き換え、土地と建築物は不可分一体の扱いをする制度となっていた。その都市計画法案には、建築基準法の集団規定部分が都市計画法に吸収されるため、住宅局はその行政利権を奪われる。そこで住宅局は都市計画法立法に反対した。しかし、都市計画法の立法は政治的な既定方針であったため、官房文書課が両局の行政利権の妥協案により立法させた。

 

都市計画法と建築基準法とは欧米では一体不可分とされる建築不動産を、わが国では、民法第87条を根拠に建築不動産と土地不動産に分けるため、都市計画法で扱う「土地」と建築基準法で扱う「建築物」の境界を線引きせざるを得なくなり、新たに登場した概念が「予定建築物」であった。「予定建築物」の法律上の定義は、建築目的を実現する建築物であると都市計画法で定められ、予定建築物とそれを構造耐力的に支持する地盤工作物は建築計画ごとに特殊で、都市計画法上の開発許可の対象とする部分と、建築確認対象とする部分とは個別の定めることになる。全体として構造上安全であることは、開発許可を確認することを建築物の確認事務として義務付けることで担保している。

 

「予定建築物」の登場と土地整備

土地と建築物とは、「一体不可分」なもので、わが国のように「土地と建築物とが独立した不動産」とする扱いはわが国だけの特殊扱いである。その特殊扱いをわが国の新都市計画法で妥協調和させるために登場させた「予定建築物」である。都市計画法では予定建築物の地盤の形成までを土地整備として扱う。都市計画法における開発許可の完了公告は、予定建築物の土地整備の完了である。開発許可による都市計画行政は都市計画法第29条の行政事務で都市計画法による手続きは完了することになる。

 

一方、建築行為は、開発許可行政が終了した開発許可の完了公告がなされた以降に始まる。建築確認は開発許可において予定建築物の土地の地盤整備が完了したことを前提に建築確認申請が行われ、開発許可が完了公告をすることで完了する。つまり、確認申請は予定建築物が開発許可を受けた地盤に建設されていることの確認から始まる。開発許可で築造された地盤は、予定建築物を支持するに足りる構造としてつくられたことを「開発許可」で構造安全審査を行ない、確認するだけである。

 

地下工作物の建築利用

開発許可の結果、予定建築物の地盤と一体的に開発される開発上必要と考えられるその土地利用に関係する道路、駐車場、調節地、倉庫などの土木工作物を地下工作物として計画することは開発地の土地整備の問題として都市計画法で扱われる。土木工作物として建設された地下工作物のうち、土地利用が確定していない地下工作物を建築利用する場合には、その部分に関しては、その利用目的が確定する都度、その部分には建築基準法が適用され、建築基準法上の確認対象とされる。

 

地下工作物の構造安全性は都市計画法で審査済みであるので、建築基準法による審査では構造耐力以外の防耐火、遮音、気密・断熱等の部分について行われる。しかし、地下工作物自体は都市計画法による地下工作物であって建築物ではない。高架工作物としてつくられた鉄道や道路敷下部の工作物(ガード)内に造られる建築物や「地下街の建築物の各部分」の例である。

 

その3:都市計画法と都市計画法立法と矛盾した行政運用

 

都市計画制度の秩序ある市街地形成:線引き制度(29条)

わが国は高度経済成長により都市施設整備の伴わない都市のスプロールが急激に進み、それを放置すれば国家の将来に禍根を残すとされた。当時わが国の住宅・都市関係者の間ではわが国の理想のモデルと考えられていた英国の住宅・都市政策に倣う方針で、日本の都市計画法を廃止し、英国の農村都市計画法をそのまま日本の都市計画法とすることが政治的にも方針決定された。

新規立法された都市計画法は、英国の都市農村計画法をモデルにし、さらに、ロンドンのグリーンベルト政策に倣い、都市を計画的に整備するために2分し、既成市街地と今後開発を行なう「市街化区域」と、農地及び開発を押さえて農地保存をする「市街化調整区域」とに「線引き」し、都市施設計画に合った開発とし、全ての開発行為は都市計画法による開発許可によって行うこととされた。

 

わが国の道路、公園、下水道などの都市施設が遅れており、秩序ある都市開発を行うための線引き制度は、都市施設整備計画の立てられない地域は市街化調整区域とし都市開発を押さえ、都市施設の効率的利用を図るような都市施設計画を都市開発に先行させる政策が採られた。ただし、都市施設が未整備な市街化区域にあって開発を行なうときは、開発事業者が関連都市施設整備を開発許可の一部に取り入れて行なうことを条件に開発許可が実施された。しかし、開発許可と一体に行なうことが義務付けられると、その都市施設の整備の負担が大き過ぎた。その結果、関連都市施設整備を免除する要請が産業界や経団連などの経済団体から繰り返し提起されたが、それは都市計画法上、譲歩されなかった。

 

その結果、開発許可の重い負担から免除する都市行政上の運用(脱法)が業界と東京都を窓口にした都市計画行政の間で繰り返し行なわれ、現行の都市計画法違反の「開発許可の手引き」に纏められた。事実上、「開発許可を不要とする」都市計画法違反の行政運用が行われるようになった。市街化区域の地価は高騰しており、市街化区域での都市施設計画の整備を伴う都市開発は経済的に不可能と考えられた。そこで大きな都市開発の開発圧力は地価が農業地下に拘束されていた農地や山林原野に向かった。

 

土地費用不要の住宅政策による市街化調整区域の法律違反の活用

ベトナム戦争が終わり米軍の軍需産業を支援して米軍の兵站基地の役割和解除された1976年、住宅建設計画法が制定され、1950年住宅金融公庫を創設して以来、米軍の軍需産業とその下請け労働者向け低賃金労働者向け住宅の供給が論理的に不必要になった。しかし、国民の住宅事情は基本的に悪く、国民の住宅要求は強く、その上、それまでの軍需産業向け住宅産業はわが国経済に大きな比重を占めていたため、わが国経済活動のためにも住宅産業を維持することが政治的に必要になった。

 

政府は軍需産業に代わって国民が住宅需要者となって住宅産業を維持させる政策を住宅建設計画法によって実施した。そのときわが国は高度経済成長期に入っており、地価は急騰し始めていた。その高地価を財政負担して住宅政策を進めることは、当時の財政状態では不可能と考えられた。そこで採用された住宅政策は、以下の通りの土地費用負担ゼロの住宅政策であった。

 

土地費用「ゼロ」の2つの住宅政策

(1)  木造既存市街地の「地上げ・建て替え」による土地費用を不要とする土地の密度利用と、住宅金融公庫が全面的に融資を行なうハウスメーカーによるプレハブ住宅販売政策

(2)  市街化調整区域を利用した公共事業主体による都市施設整備を、高い都市施設整備水準を確保し、公共事業による財政負担によって裏付けた日本住宅公団を中心とした都市開発政策

 

このうち(2)により、日本住宅公団、地方住宅供給公社、宅地開発公団、地域整備公団等鋼的開発機関による宅地開発事業が実施された。その開発住宅地区は市街化調整区域が市街化区域の地価と比較すれば、「ただ同然の地価」で取得できるため、その都市開発事業者は公的機関の都市開発対象とされた。これらの公的都市開発は、都市計画法は当初の説明と違って、市街化調整区域で行われたため、市街化調整区域での開発が市街化区域の開発を遥かに上回り、市街化区域での都市施設整備は放置され、市街化区域での開発を都市計画法で考えた都市施設水準で実施することはできなかった。

 

都市計画法の立法趣旨と矛盾する「開発行為(29条)と建築行為」:(37条)

開発行為は、基本的に都市施設整備の行われた地区で行なうことを原則とし、都市施設整備の行われていない地区での開発行為は、開発業者が関連する都市施設整備を一体的に行なうこととした。わが国では都市施設整備が遅れているため、多くの開発事業者は、「都市施設整備を同時に行なうことが過大な負担である」と言い、開発許可を免除して欲しいと考えていた。都市計画行政は開発業者の要求を受け入れて、「開発許可の定義を都市計画法に違反した定義を作成し」、開発許可を不要と都市計画行政上の判断をした後、建築行為の中で開発行為を容認する違法な開発が建築行為として行われた。

 

開発許可(29条)と建築確認(建基法第6条)

都市計画法上の開発許可(第29条)は、建築基準法の確認(第6条)と一対の行政事務として、都市計画法で最も重要な行政行為である。開発行為による許可行為が完了し、完了公告が行われるまでは建築行為を行なうことを禁止(第37条)している。ただし、開発許可関連で必要な工事に関係する付帯施設の建築行為は、例外として容認する(第37条1項但し書き)と定められている。現行の都市計画行政では、都市計画法で定めた「開発行為」の用語の定義を行政指導指針(「開発許可の手引き」)で違法に書き換え、都市施設の未整備な地域では「開発許可」不要とし、建築行為は開発行為には含めない違法な行政運用により、開発行為を「建築行為の例外規定を違法に制度化して、「予定建築物」の建築を例外規定として行なう違法を、「建築禁止の例外措置」として違法に容認してきた。

さらに、都市計画法第37条一項但し書きでは、開発許可の目的とする予定建築物は開発許可完了時まで禁止している。その建築物に関し、都市計画行政では、第37条の例外許可ができると違法な解釈を持ち込み、都市計画法が立法趣旨目的として基本的に禁止している予定建築物を、第37条1項但し書きの法律解釈を逆転させ、法文の文理解釈に違反した解釈で、違法行政処分を正当化してきた。

 

開発事業者の「開発許可制度」見直し要求

開発行為は、開発許可の基準に適合することが許可条件とされてきたが、市街化区域はもとより、市街化調整区域において都市施設の整備は進んでいなかったが、農地、山林、雑種地の市街化調整区域で「土地代実質ゼロ」負担で開発をする際、大規模な都市開発を行なうことが可能にできた。多摩ニュータウン、港北ニュウータウンをはじめ大規模都市開発事業では素地としての内を山林原野同様の安い価格で購入したため、開発基準に合った開発は可能になったが、既に地価が高騰していた市街化区域では開発に必要とされる関連都市施設の整備を開発と一体的に行なうことは不可能であった。その結果、既成の市街化区域における開発許可は、関係する都市施設整備を行なう経済的費用負担ができないため、行き詰まり、その結果、市街化区域での開発行為は、不可能を意味していた。

 

都市計画行政は開発許可で都市開発を制御させることができず、違法な「開発許可」をすることにならざるを得なくなっていた。しかし、都市画法の立法当時の立法の背景から、開発許可の後退をするわけには行かなかった。結果的に開発許可を市街化調整区域で官民双方の開発で認めることと、市街化区域における開発許可申請には、東京都による「開発許可の手引き」を使った脱法行為の容認であった。

 

都市計画行政の蹂躙

国土交通省は産業界の要求を東京都の都市計画行政を支援する形で、無原則的に都市計画法の違反を容認し、開発許可行政を切り崩していった。都市計画法違反を正当化する説明に忙しく、都市計画法制定時に新しく創設された「予定建築物」の扱いを、基本的に骨抜きにし、「予定建築物」の適正な扱いをしないで、「予定建築物」も「建築物」という限り、基礎を有する建築物でなければならない」と言った言いがかりに使い、それを都市計画法及び建築基準法の歪んだ解釈にすりかえてきた。

 

第1は、都市計画法違反の「開発許可の手引き」により、「開発許可不要」を行ない、開発許可を行なわないで開発を、都市計画法違反の第37条の例外許可で、建築確認だけで容認してきた。

 

第2は、開発行為を建築工事と一体に行なえば、それは「建築行為」であり、「開発行為」として許可対象で無くなると見なし、都市計画法違反を、建築基準法の問題にすり替えてきた。

 

第3は、都市計画で登場させた「予定建築物」の規定を事実上使わず、開発行為が行われている開発を「建築行為だけで開発を可能にする」扱いと、第37条の建築禁止の例外許可を濫用した。

 

第4は、法律に違反した建築許可を行ない、開発許可どおりの開発行為が行われていない状態で、開発許可に定められた完了公告を違法に行ない、都市計画法を蹂躙した建築行為を容認した。

 

第5は、都市計画法に定められた開発許可条件(「開発許可の基準」に定められた都市計画施設)に違反した開発(道路、公園、下水道施設の未整備の地域で)を一般的に行うことを容認した。

 

第6は、都市計画法と建築基準法との関係を立法時に建設省で整理した際、新しくつくられた「予定建築物」の活用が、立法の経緯に違反した行政によって、全く行われていない。

 

現在の都市計画法はわが国の民法との関係を尊重して成文化された法律化され、国内法としての整合性は図られている。そのため、都市計画法に定められた手続き通りを行なうことで問題はない。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)

 

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